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捏造探偵~ドン・キホーテの大罪~その探偵は真実を葬り偽りの罪を作り出す【完結】  作者: 高山路麒


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3-14 暴かれた白衣の死神の正体

 そしてその翌日、白鳥が急遽夜勤をする事になった。


 なんでも本来当直をするはずの人間が体調を崩し彼女がその代役を申し出たそうだ。その善意に周囲からの信頼度はより上がったのだろうけど俺はその都合の良すぎる展開にとてつもない良からぬものを感じてしまった。


 無論そう思ったのは真矢も同じでその体調を崩した人物がお茶を飲む時に使用したコップはちゃっかり保存して警察に渡した。残念ながら本番までには間に合わなかったけど何かが検出される事を期待したい。


 カツ、カツ、カツ。


 暗闇の静寂の中誰かの足音が聞こえる。それはさながら死神の足音の様で、近付くたびにベッドの下に隠れていた俺は心臓が破裂しそうなほどに鼓動してしまう。


 俺はふとベッドの下に潜り込む前に出された指示を思い出した。


 実はこのミッションをする前、真矢から面会時間が終わる直前にクマのぬいぐるみの視界に入らない様にさりげなく後ろに振り向かせてしばらくしてからベッドの下に潜り込めと指示を出されたがあれはどういう意味だったのだろうか。


 いや、それについて考えるのは後だ。落ち着け、失敗しては元も子もない。なんとしてでも現行犯であいつを捕まえるんだ。


 ガラガラ。カツ、カツ。


 ドアが開いた。目の前に白鳥の白い靴が見える。チャンスは今しかない!


「動くな」

「ッ!」


 だが俺が動くよりも先に部屋の外から真矢が現れ白鳥を取り押さえた。美味しいところは持って行かれて少し残念だったけど捕まる事が出来たな。


「ええと、これは何の遊びですか~? 面会時間は過ぎてますけど」


 白鳥は右手に注射器を持っていたというのにニコニコ笑っていた。そこにはまったく焦りの表情は無く、俺はその異様さに寒気がしてしまった。


「君が同僚に毒を仕込んだコップは警察に渡しておいたよ」

「あらあら、それは残念です」


 ちなみに結果はまだ出ていないが毒が検出されたとは言っていないのでこれは厳密には嘘ではない。だが真矢がそう言うと白鳥はすぐに観念してしまった。


「むにゃー」


 ティアラちゃんは騒ぎにも気付かずぐっすりと眠っている。もし目覚めてしまえば知りたくもなかった残酷な真実を知ってしまうだろう。


「ここでこれ以上白鳥の罪を暴くのはよしておこう。場所を変えないか?」

「別にここでも構いませんけどね。注射を打っても起きない程度にはぐっすり眠ってもらいましたから」

「……………」


 けれど俺がそう進言すると白鳥は笑いながらそう言った。多分だが犯行の際は事前に睡眠薬か何かを仕込んでいたんだろう。あくどいにも程があるな。



 とにかく俺たちは場所を移してナースステーションで白鳥を詰問する。そこにはティアラちゃんの両親と、夜勤の病院スタッフが集まっていて皆一様に困惑した表情を浮かべていたのだ。


「あ、あの、さっき簡単に説明されまして、半信半疑なんですけど……何かの間違い、ですよね……?」


 白鳥を聖人と思い込んでいた母親は信じられないといった様子で彼女に尋ねた。だがその答えは彼女の歪な笑みと机に置かれた注射器が証明していた。


「私、二十四時間やってるテレビとか、医療系のドラマとか映画が大好きで小さい頃からよく見てたんです」

「は?」


 そして彼女は唐突に関係ない事を言ったので彼は怪訝そうな顔をしてしまったが、白鳥は穏やかな笑みを崩さず話を続けた。


「子供たちが病気に負けず困難に立ち向かう姿。純粋な穢れなき瞳。感動的なヒューマンドラマ、そしてそれを全力で支えるお医者さん。私はそんなお医者さんになりたかったんです」


 しかし嬉々としてそう語っていた彼女はそこまで言ってはあ、と落胆のため息をついてしまう。


「でも現実は違います。国民的アニメのガキ大将みたいな面倒くさい子供に性格のねじ曲がった子、全然協力してくれないご家族、適当に千羽鶴だけ折ってお見舞いに来ない同級生……なんか違ってたんです。まあそんな子でも苦しみながら死んでくれたらそれなりに絵にはなりましたけどね」

「ッ!?」

「この前死んだ子はよかったです。最後には皆わんわんと泣いて、気持ち的には低予算で作った三流の役者ばかり出る映画で当たりを引いた気分ですね!」


 彼女は最後にクスリと笑みを浮かべそんな理解の出来ない事を言ったので全員がようやくこの悪魔の正体に気付いてしまった。


「だけど結局は一流の子役が一番です! ティアラちゃんは最高の役者でした! 見た目、性格、背景、この上ないくらいにどれもこれも素晴らしかったです!」


 恐るべきはこの期に及んでもまだ変わらずに天使の様に曇りのない笑顔を浮かべている事だろう。そこから悪意は微塵も感じられず、それゆえにどんな悪鬼悪霊よりも恐ろしかったんだ。


「はぁ~。最高の物語が出来るはずだったのに残念です。しょぼーん。どんな映画でもクライマックスがないといけないのに興ざめですよ」


 理解不能で身勝手な主張を繰り返した白鳥は最後にそう言って落胆してしまう。まるで楽しみにしていたドラマが諸般の事情で打ち切りになってしまったかの様に、彼女は一切の悪気なくそう言ったのだ。


 そして全ての真実を知った父親は愕然としていたが、


「ふ……ふざけるなああァァアア!!」


 当然烈火の如く激怒し白鳥に掴みかかった。気持ちはものすごくわかるし俺も一発殴りたいが一応ここは止めなければならないだろう。


「駄目です、ここは抑えてください!」

「何で、何で……! ティアラ、ごめんなさいっ!」

「どおどお」


 わかっていたがやはり修羅場になってしまった。泣き崩れるお母さんは真矢に任せるとして俺はどうにかしてお父さんが手を出すのを止めないと。

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