3-10 ティアラの異変
だが一通り三隅先生から検死に関わる話を聞いてもう少し細かい確認をしようとした時、彼の机の上にあった電話が鳴った。
「……わかった。すまない、急患だ。悪いが今日の話はここまでだ」
「いえ、お忙しい中ありがとうございました」
もう少し詳しく聞きたかったけどそういう事なら仕方がない。俺たちは三隅先生と一緒に部屋の外に出て話は強制終了してしまう。
「さて、どうする?」
「どうにもこうにも、もう話が聞けないならここにいても意味がないだろ。拠点のホテルに戻るか」
「そうしようか」
目的を達成した俺たちは暗い廊下を移動してその場を立ち去る。しかし夜の病院ってかなり雰囲気があるよなあ……様々な犯罪者と対峙してきた俺でもやっぱりこういうのは怖いよ。
しばらく歩いていると何人もの人が走る音が聞こえてきた。きっと先ほど急患絡みだろう。邪魔をしちゃ悪いし移動の妨げにならない様に廊下の端を歩こうか。
「急いでください!」
「は、はい!」
「え? まさか」
しかしその走っていた医療スタッフの中に白鳥さんがいた事に気が付いた。そのただならぬ面持ちに良からぬ事を察した俺は無意識に彼女の後を追いかけてしまう。
「サンチョ君?」
真矢もよくわからなさそうだったが俺の後を追う。行って何が出来るわけでもないけどこの悪い予感が本当かどうか確認しないと。
そして悪い予感は的中した。白鳥さんたちが向かった場所はやはりティアラちゃんの病室で病室の中から慌てふためく声や怒声が聞こえてしまう。
「ティアラちゃん、しっかりして! 死んじゃダメ! あなたは皆を助けるお医者さんになるんでしょう!?」
白鳥さんはドラマの様に感動的な悲痛な叫びをして懸命に死に抗おうとしている。それは何人たりとも邪魔者を寄せ付けない程鬼気迫るものだった。
「急患はティアラちゃんだったのか」
「みたいだね……ふむ。でも僕たちには何も出来ないし帰ろうか」
「あ、ああ」
真矢は少し悩んだが身を翻して帰る事を選択した。実際医療の知識がない俺達には何も出来ないし心配だけどここは大人しく帰るとしよう。
「急げ! オラ邪魔だ!」
「は、はい~!」
「ん? おっと」
だが医療スタッフ以外にも慌てて走る人間がいた。テレビ局のクルーだ。彼らは俺たちに罵声を浴びせて押しのけ最高の絵を撮影するためハイエナの様に病に侵されている哀れな少女に群がった。
それが仕事とはいえこうなるのを待ち望んでいたみたいでいい気分はしないな。でもティアラちゃん、昼間はあんなに元気だったのに。無事だといいんだけど。




