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3-3 三通目の謎解きメール

 真矢に激励され、進むべき道を模索しつつ缶コーヒーを飲んでいるとなにやら不審な気配を感じた。


「こそ、こそこそっ」


 最初は権蔵さんの部下かと思ったが違う。車の影に懸命に隠れるその追跡者はまるで小動物の様に愛らしかったからだ。


「何やってるんですか、敬川さん」

「みゃー!?」


 そこにいたのは星鳥のティンクルティンクルで出会った義足のパラアスリートの敬川さんだった。彼女は俺が声をかけるとひどく驚きカエルの様に飛び上がってしまう。


「どうして敬川さんがここに? はるばる星鳥から稲子まで俺たち、というか真矢を追いかけてきたんですか?」

「そ、その通りですよ! 今日という今日はアレを返してもらいますからね!」


 彼女と真矢を結び付けるもの、それは真矢が盗んだ何かだ。俺はそれが何なのかまだ分からないがそれは苦労してでも取り返したいとても大事なものらしい。


「えー。どうしても返さないとだめ?」


 けれど真矢はこの期に及んでまだごねてしまう。普通に犯罪だし大事になる前に大人しく返却したほうが身のためだと思うけどな。


「というか普通に警察に行けばいいんじゃないんですかね」

「アレはかなり重要なものでして盗まれたと知られたら信用問題になってしまうんです! だから私は密命を帯びてこっそり取り返そうとしたんです!」

「はあ、なるほど。ほら、よくわからんがとっとと返してやれ、真矢」

「うーん。もう返してもいいんだけど普通に返すのもつまらないしなあ」

「あのなー」


 ブブブブブ。


 しかしなおも理不尽な文句を言う真矢と押し問答をしていると俺のスマホが鳴動した。会話中に見るのはマナー違反だが俺はその中身が非常に気になり見てしまう。


「おや、もしかして」

「ああ、三通目の謎解きメールだ」


 それは待ち望んでいた真相に辿り着くための手掛かりとなる謎解きメールだった。相変わらず本筋とは全く関係がない問題が記されているがここは大人しく問題を解くしかないだろう。


「ちょうどいいや、敬川君。この謎が解けたらアレを返してもいいよ」

「え、本当ですか!?」

「いや普通に返せよ。敬川さんも言いなりにならなくていいんですよ。悪いのは百パーセントこいつですから」

「ええ、わかってますとも。けど真矢さんには何を言っても無駄なのでここは確実にミッションをこなすため大人しく指示に従います!」

「はは、なんかすんません」


 俺は理不尽な仕打ちに対しても前向きに立ち向かう敬川さんの姿に胸を撃たれてしまった。流石は体育会系というか。ともかく早速詳しくメールを読んでみよう。


『ボンジュ~ル。待ってた? 待ってたよね? そんな顔するなよ、しょげないでよベイビ~』

「いらっ」


 メールはやはり俺を苛立たせるものだったがいちいちそれについて反応しては身が持たない。さっさと謎を解くか。


『じゃあいくよ~? カモンッ!

 そこは山奥にある村で街灯などは一切無く夜になると真っ暗になってしまいます。

 その村のとある家には電気スタンドがあり、部屋の照明器具はそれだけです。

 ある時その家に強盗が押し入って住民を殺害、もみ合いになって照明器具は壊れ部屋の明かりは消えました。

 強盗はその後金を奪って逃走しますが、犯行の証拠を隠滅したので捕まえる事が出来ませんでした。もちろんその際懐中電灯や暗視スコープといった道具は一切使っていません。

 さて、強盗は明かりが消えた部屋でどうやって証拠を隠滅したのでしょう?』


 三通目のメールにはそんな謎解きが書かれていた。これも大方ひねくれた答えなんだろうな。


「で、真矢はわかったか?」

「うん、すぐにわかったよ」


 俺はまず真矢に話を聞いてみると彼女はあっさり答えに辿り着いたらしくニコニコしながらそう告げる。別に勝ち負けを競っているわけじゃないけどやっぱりなんか悔しいな。


「むむむ、どういう事でしょう。真っ暗な部屋の中でどうやって……盲目の強盗だったんですかね」


 一方挑戦状を叩きつけられた敬川さんは問題が解けずに苦戦している様だ。使命を果たすためわざわざこんなところまでやって来てくれた彼女のためにも謎を解かないとな。


「ふふ、ヒントを出そうか?」

「いいです! 敵の情けは受けません!」


 真矢はからかう様にそう提案するも彼女は頑なに拒否をした。素直にヒントを貰ってもいいとは思うけどなあ。


「あ」


 しかし俺はしばらく考えて答えがわかってしまった。ああなるほど、やはり今回もひねくれた答えだったな。


 けれどここで俺が答えてしまえば敬川さんの目的は達成出来ない。なのでここは俺のほうからそれとなくヒントを出すとしよう。


「もしかして懐中電灯や暗視スコープを使わなかったというより、そもそも使う必要がなかったんじゃないかな?」

「使う必要がなかった? それって……あ、そっか!」


 そして敬川さんはようやく答えに辿り着いた様だ。うん、それじゃあ答え合わせをやってみよう。


「事件が起きた時は昼間だった! これで合ってます?」

「ああ、じゃあそれで送信してみるよ……お、返信が来た。正解だってさ!」

「わあ! どうです、やりましたよ!」

「うーん、ちょっとズルした気もするけどまあ大目に見てあげようか。約束は約束だからね」


 敬川さんは正解を導き出して真矢に対して勝ち誇った笑みを見せる。真矢は少し納得がいっていない様子だったけどしぶしぶカバンからとあるものを取り出したんだ。

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