3-4 密命を達成した敬川さん
けれど、真矢がカバンから出したものは俺が全く予想だにしていないものだった。
「ほら、君の所から借りたスーパーエロゲメーカーだよ」
「はい、ありがとうございます!」
「はい?」
俺はその聞き捨てならない単語にそれを二度見してしまった。一見するとそれはポータブルDVDプレーヤーの形をしていたが名前から察するにそういう事のためだけに作られたガジェットなのだろう。
「ええと、敬川さん? これが真矢に盗まれたものなんですか? あなたのとこってこういうの作ってるんですか?」
「いえ、これは厳密には希典さんが暇潰しで作った奴です。まあ確かにアレな発明品ですが発明品には違いないので。シナリオを入力すればムービーからグラフィックまで全部作ってくれる結構すごい奴らしいですよ。純愛系からグロテスクなアングラ系まで作れて、絵のパターンも黎明期のゲームっぽいやつからリアル系の奴も作れるそうですし。でも回収しに来た私が言うのもなんですけど才能の無駄遣いですよねー」
「あらそう……」
「とにかくありがとうございましたー!」
敬川さんは何故か加害者の真矢に対して感謝してタッタッタ、と嬉しそうにかけて去っていく。しかし流石はアスリート、とても綺麗なフォームをしているよ。
「……つーか真矢もなんでこんなものを盗んだんだ」
「盗んだんじゃない、借りただけだよ~」
俺が脱力して呆れると真矢は口笛を吹いて目を逸らした。そして彼女は更にカバンから一枚のディスクが入ったケースを取り出して俺に見せつける。
「ちなみにこれがお遊びで作った奴なんだけど組長先生がヒ〇シからみ〇えを鬼畜調教して寝取るって奴。やってみる?」
「どこに需要があるんだよ!? っていうか怒られるぞ!?」
「そうかな? 時々某同人サイトでみ〇えは見かけるよ。たまにし〇かちゃんも」
「マジか、性癖の業が深すぎるな……俺は生まれてこの方あいつらをそんな目で見た事はないぞ」
「ワクワク」
しかし俺がドン引きしているとどこからともなく権田原さんが現れる。シナリオの都合とか時系列の矛盾を一切考えずに。
「何ですか」
「なんか寝取りって単語が聞こえたから飛んできた。ちなみに俺はサ〇エさんをノ〇スケが寝取る同人誌を持っているぞ」
「性癖は奥が深いんだな。つーか俺の周りには変態しかいないのか。」
「人間は誰しも性癖の一つや二つ持っているよ。っていうか探偵さんとは何気にこれが初対面か?」
「あ、どうもです。一応渡しときますね。お近付きのしるしに他にもお試しで作ったサンプルをいろいろプレゼントします。こっちは八十年代、こっちはリアル系ですね」
「おお! 君とは仲良く出来そうだな!」
そして真矢は寝取られマイスターの権田原さんに作成したゲームを渡し彼はホクホクとした笑顔でどこかへ去っていった。
……このイベントは何だったんだ。どっと疲れてしまったが敬川さんの困り事はこれで解決したみたいだし良しとするかな。
散々場を無駄なイベントで引っ掻き回した真矢は本題に戻るため謎解きメールについて質問をした。
「それでメールにはなんて書いているんだい?」
「ああ。えーと……『ぱんぱらぷっぷぷー、おめでとう! それじゃあ早速鰈浜市民病院に行ってごらん! そこで二人の被害女児の検死を担当した三隅耕作に会うといいよ!』」
メールの文面にはそう書かれていた。相変わらず舐めまくった態度だが内容は非常に俺たちにとって有益な情報だ。今回もおふざけに付き合って良かったよ。
「三隅耕作か。検死を担当した彼に話を聞けたならこの上なく有益な情報が手に入るだろうね」
「だろうな。けど鰈浜か。鰈浜って島根の西のほうだよな。結構距離があるけどどうやって行く?」
俺は軽く頭の中で電車やバスなどで移動した場合のシミュレーションをした。島根、というか山陰は横に長いため移動がかなり苦労し、おまけに田舎のため交通の便も悪いのでまずは移動手段を考える事から始めなければなるまい。
「よし、今回はレンタカーを使うか。サンチョ君は免許を持っているかい?」
「持ってるけど。そう提案するって事は真矢も持っているんだよな?」
しかし俺がそう尋ねると、
「『一応』持っているよ」
彼女はゾッとしてしまうやたら悪そうな笑顔でそう答えたのだ。
「お前って戸籍とか死亡届も偽造出来るんだよな。もしかしてその免許って……」
「大丈夫大丈夫、免許自体はちゃんと教習所で貰った奴だから運転スキルに問題はないよ。まあ取得するにあたって用意したそれ以外のものがいろいろアレだけど」
「ならセーフなのか? いやアウトだけど」
真矢のせいで倫理観がゆがめられた俺はそれを聞いて何故か一瞬ホッとしてしまった。まあそういう事なら交代しながら運転すればいいか。それじゃあのんびりとドライブを楽しむとするかな。




