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寡黙なニコルと人間失格  作者: 或田いち
インサイド
39/65

ヒーローは遅れてやってくる


 

「お前が能無しだ」


「―――――」



声にならない奇声がした。そう思ったら、思いきり顔面を踏みつけられた。

相手の動きを目で追うと、傍に置いてあったテニスのラケットを手に取る。

―――まずい。


直感的に感じる。危機的状況。身の危険。

これまでに感じたことのない、殺意。



「――俺が能無し?はは、笑わせんな

 じゃあ教えてやるよ。本物の能無しが…何たるかってな!!」


「―――っ!」


もうダメだ。思わず。

降り下ろされるラケットを見て、目を閉じ。顔を反らした。


その瞬間。





「――――ニコル!」


男が、バランスを崩して部屋の壁に体を叩きつけられた。

それを目で見てから、起き上がり、声の根源に振り向く。


痛みで滲んでいた瞳から、違う意味で涙が溢れおちそうになった。なぜ。昨日、一昨日まで傍にいたのに。少し離れただけで、こんなにも懐かしい。

家族、くらい、大切な。



「ユースケ」


口に出したら、気持ちが弾けてしまった。



---



何が起こっているんだか、訳はわからない。

とりあえず、良くない方向に事が進んでいる。それくらいは、伊野にも理解出来た。


「ユースケ」


ニコルを踏みつけていた男を思わず突き飛ばして、彼女を見たら、泣き腫らした顔で思いきり抱きつかれた。苦しい、と同時に、華奢な体が懐かしい。とか思ったりする。


「だ…大丈夫。大丈夫。痛かった、な」


よしよし。ありふれた言葉であやしてやりながら、背中を擦ってやる。

しかし、さっきまで殴られていたのか、僅かに顔をあげたニコルの口の端に、赤い血が滲んでいた。

痛々しさに、顔を歪ませる。


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