希望への活路
「ユースケ!」
「え ッ」
突如、背中に走る激動。
画面が反転し、床に倒れる。視界の隅で、ニコルの、恐らくニコルの父親が、テニスラケットを手に携えているのが見えた。
とにかく、今は首元が、熱い。
「…なんだお前。居なくなってどこほっつき歩いてんのかと思ったら、こんな男んとこに逃げ込んでたってのか、え?
仕事もしないで、自分は男と遊んでたってか」
「! 違う! やめて」
「っ、」
倒れ込んだままの伊野の上に、男が仁王立ちをしラケットを構える。
やばい、そう頭では思うものの、体が言うことを聞いてくれない。
「よくも人の娘たぶらかしてくれたなこのドブ鼠が!!」
「!」
「やめて!」
糸が切れたようにニコルが発狂し、男の腕にかぶり付く。
みし、と嫌な音と、男の獣のような奇声が部屋に響き渡る。
直に犬を払うように男がニコルを振り払い、ラケットを降り下ろすも、そこに伊野の姿はない。
「鬼さんこちら」
声に振り向いたところで、男の視界が真っ白になった。猛烈な香水の臭いと噴射に、目をやられる。
伊野が、部屋に置いてあった制汗剤をとっさに掴んで男の目に噴き付けたのだ。
「行くぞニコル」
倒れ込むニコルを抱え上ゲ、猛獣が唸っている間に階段を駆け降りる。最中も首の付け根はじんじんと痛んだが、正直それどころではなかった。
「逃げたって無駄だぞ!」
二階から、目を押さえたままの男が大声を上げる。
「必ずお前ら二人とも探し出して、警察に突き出してやる。ミサ。お前に関しては特にただじゃおかない。絶対連れ戻して、また馬車馬のように働いてもらうからな!覚えてろ。お前に逃げ場はない。どこまで行ったって俺の子供だ。逃がしはしない。逃げられると思うな!
あははは!ははははははは!!!」
思いきり扉を閉めて、外に飛び出した。




