滾る血と抗い
俯いていると、再び扉を蹴る音にびくりと反応する。
「お前はどうなんだよ」
「…」
「この人がクソ忙しい時に…父親が警察に捕まってる時に!
どこほっつき歩いてやがったかっつってんだよ!」
「!」
相手が踏み入ってくるのを察知し、いち早く逃げようとしたとたん、髪を鷲掴まれて床に叩きつけられた。
痛い。頭皮がちぎれるような痛みに顔を歪ませ、じわりと滲む瞳で、真上の男を睨み付けてみる。
「…んだよその目は」
男の目は、ニコルの剥き出しの敵意より、冷徹な目をしていた。
「…っ」
「てめーは。養ってもらってる分際なんだからよ。言われた通り働いてりゃいーんだよ。ったく…ただでさえお前の母親が倒れて入院だ何だで金が飛ぶっつーのに!てめえが働かねーとどんだけ生活狂うかわかってんのか!」
突如走る戦慄に、身を強張らせる。腹部が痛い。蹴られたらしい。続けて背中、頭と、急所を狙って連続で容赦ない蹴りが続く。
「この…能無しが!!
何が気に食わないんだ、ぁあ!?言ってみろ、俺はお前らのためにどれだけ…っ」
うそつけ。お前は何もしていない。
何もできない能無しは、お前のことだ。自分が取るに足らない、何の力もない、ダメな人間で使えないことを、私や母に置き換えて、自己嫌悪に陥っているだけじゃないか。
じゃなければ、お前はなぜ何もしようとしないんだ。
「何とか言ったらどうだ…!?
それとも痛くて声も出ねーのかよ!謝れ。お父さんごめんなさいって言ってみろ。謝れよ…謝れよォラ」
「 お前なんか 」
ニコルは、声を振り絞っていた。
鉄の味が滲む口から、はっきりと。数ある語群から選りすぐり、こいつを
こいつを痛め付ける言葉を
「父親だなんて思ったこと、ない」




