↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/9

8 大脱走

「シュンさん!もうこんな馬鹿げた所には用はないわ!脱出しましょう!」

 リサは急に元気なった。そして、ユミを先ほどのメンテケースに寝かせて

「ユミ?しばらくスタンバイモードでここに寝ていなさい?基地に着いたら起こすから?いいわね?」

 そう言ってメンテナンスケースを閉じた時だった。拍手と男の声がした。シュンとリサが振り返ると

「いやぁ?シュン?その娘の起動に成功したようだね?素晴らしい!これで商品価値が出てきた」

 トモノリ社長だった。どうやら、監視モニターと集音マイクで2人を監視していたようだった。

「これで、君たちを監禁する必要はなくなった。早速、殺してやる!」

 その挑発的な言葉にシュンが反応した。

「俺を殺せば、他のダブルマークがここに総攻撃をかけるぞ?」

「もう、そんなフラグは通用しないね?今、ダブル・シャークとフォックスのスケジュールを調べたよ?2チーム共、今はこのドルモアにはいない!」

 シュンは「ち!もうバレたか?」と思いながらも、後ろに回した右手で、手指通話をリサに送った。通信機の壊れた際の宇宙空間での非常時に曲げる指・曲げる回数での通話手段だ。この女が本当に軍人のなら必ず判る!

「脱出する!すぐに機体に乗り込め!」

 リサは読み取っていた。シュンの会話の陰でゆっくりと機体に近寄り、F-108の前部操縦席の下のパイロットシートの開放ボタンを押した。前座と後座のパイロットシートがゆっくりと降り始めた途端、シュンは走った。トモノリ社長はこの行動を理解できずに側近の部下に指示を出している間に、2人はF-108乗り込んだ。

「エンジン始動!バーニア接続!」

 シュンは左側前方のバーニアと右側後方のバーニアを吹かして、機体をシャッターで閉まった窓の方向に向けた。

「リサ!こいつの最大武装はなんだ?」

 条件反射のようにリサが答えた!

「両翼の上にオプションでついている65mmのスーパーブラスターが主砲よ!起動スイッチはコンソール右上の赤いボタン!」

「了解!」

 コンソール右上の赤いボタン押すと、機体の装甲の一部が反転して、とてつもない兵器が飛び出てきた。そして、正面のターゲットスコープに様々な情報が表示された。その中のエンジンの情報はエンジンの推力は十分に上がっている事を示していた。

 この頃になってトモノリ社長とその側近は耐爆室に毒ガスを入れてきたが、もう遅い、F-108は宇宙空間での戦闘を想定された機体だ。機密は万全、その上、8時間程度の独立酸素回路も持っている。リサは「これが?本当の戦闘?」と、心が高鳴った。

「正面の窓を破る!主砲発射と同時にエンジン全開!飛び出すぞ!」

 シュンはカウントダウンに入った。

「リサ!行くぞ?3・2・1」

 凄まじい閃光と爆音。そして衝撃、リサが再び目を開けた時は雲一つない蒼い空が広がっていた。

「ねぇ?シュン?脱出に成功したの?」

 半信半疑だった?間違えない?脱出に成功したんだ!リサは前部席に座るシュンに抱き着きたかった。

 その時である。後部警戒レーダーに反応があった。「何なの?これ?」その声は前部席のシュンにも届いていた。

「来やがったか?手早い追手だ?でもまだ距離はある?」

「シュン?これってどういう事?」

 シュンはゆっくりと答えた。

「奴らが欲しいものはF-108やYUMI-90なんかじゃない…欲しいのは“実績と信用”さ?軍の施設から最新の装備や技術を盗み出した。それだけで裏社会では十分過ぎる実績と信用になる」

 追跡して来る機体との距離が縮まり、機体の種別が表示された。それを見たリサは驚いたF-107が6機も追尾してきたのである。

 民間用にはスポーツプレーンとしてかなりの高額で販売されているが、この形状は明らかに戦闘用。トモノリの商品開発力は一体どうなっているの?

 シュンは続けた。

「俺たちは、その信用と実績をぶち壊して、自力で取り返したんだ。怒り狂っているだろうな?」

 追跡機が3キロまで接近した時、シュンたちの機体の横をビームが通過した。

「ちっ?我慢が出来ないない連中だ?リサ!酔うなよ!」

 シュンは操縦桿を引き急上昇して、太陽の中に隠れた。その直後、今度は急降下してスコープはF-107の先頭の機体をとらえた。

「まずは1機」

 脱出にも使った主砲65mmスーパーブラスターのトリガーを引いた。しかし、何も起こらなかった。それを見たリサが叫んだ。

「あぁ!エネルギーブレット!テスト分しか入れてない!」

 絶好のタイミングで撃ってこない?シュン達の機体の異変を察した追跡機たちは「こいつは弾切れか?」と判断したのだろう?ビームやらバルカンをバカスカ撃ってきた。シュンは回避行動で精一杯だった。

 その頃リサは後部座席で対応を考えていて、その数秒で対応策を導き出した。

 ユミは今、スタンバイモードで格納スペースで眠っているが、今、起こせばユミで戦える!そう思って、後部のキャリアゲートを開いた。

 そして、メンテナンスケースと一緒にユミも落ちていった。

「おい?何してんだ?落ちていったぞ?」

 シュンにはリサの行動が理解できなかった。

「ユミを使うわ!大丈夫!起動まであと3秒!」

 ユミが落ちていった先で蒼い円形状の光があった。これは、流動子の波をマルスプレートが捉えてジャンプした時に起こる現象だった。そして、通信に罵声が届いた。

「リサァ!なんて起動の仕方すんの?地表まで300なかったわよ?あたしを壊す気?」

 それでもリサは冷静だった。

「ユミ!ちゃんと起動したみたいね?それより仕事よ!私の機体に取り付いているF-107を全部叩き落して頂戴!方法は、任せるわ!」

 数秒の沈黙の後

「了解!あたしの初仕事!YUMI-90・バトラックス・イン」

 灰色のスクラブで飛び回る姿は“天使”を彷彿とさせた。

 そして最初はシュンがさっき狙っていた先頭の機体の下に張り付き、緊急用のエジェクトレバーを引いた。多分、パイロットは「そこは触るな!」と叫んでいたに違いない。パイロットは無理矢理に緊急脱出されてしまった。そしてパイロットを失ったF-107は落ちていった。

「おい?あの娘?大丈夫か?同じ手は使えないぞ?」

 ユミは2機目の後部の方向舵に取り着き、黒い左手で方向舵をぶち壊し、その機体も落ちていった

「すげぇな?こんな落とし方があるのか?」

 シュンは感心していた。

「シュン、あなたも知ってのとおり?飛行機ってね?結構、微妙なバランスで飛んでいるのよ?だから、落とそうと思ったら、そのバランスを崩してやればいい!簡単な事よ!それに、あの娘には決定的な武器は何一つ与えていない。バトラックスモードと右手に仕込んだ200を超えるツールと倍速装置、そしてあの娘の憶えさせた現行兵器の全ての構造式が武器よ!」

 3機目に取り着いた時にユミの身体に変化がでてきた。セピア色のセミロングが紅いロングヘアに変わったのだ。

「なんだありゃ?燃えるような紅い髪だぞ」

 それを見たリサの唇が震えた。

「計算通り!あれはあの娘が最高性能に達している証なの!行きなさい!ユミ!この程度で潰れるあんたじゃないわ!」

 リサの興奮は絶好調だった。

「申し訳ないんだが?説明してくれないか?」

 今はユミ頼みのシュンは傍観者でしかなかった

「あの髪は放熱ユニット。ユミの内部で発生している熱を外に逃がしているのよ。あの娘は今、流動子の風を受けて、流動子の波に乗り、それで、流動子からエネルギーを貰っている!」

 小さな体で縦横無尽に飛び回り、急な方向転換でビームもバルカンも当たらない。レーダーでの自動照準も追いつかない、間に合わない。今、あの娘がこのバトルフィールドを完全に支配している。

 すでに5機を落としていた。多少の安心感があったのだろう。

「あと、1機ね。シュン?最後の奴が落ちたら、さっさと帰りましょう?」

 シュンは沈黙していた。

「どうしたの?シュン?」

「物事が上手く行きすぎる?」

「いいじゃない?上手く事が運べば?」

 物事が優位で順調に進んでリサの中の緊張感が薄れてきていた。

「これは俺の勘…なんだがね?こういった場面では…いるんだよ?どこかで出番を待っている卑しい野郎がな?」

 まさか?そんな事が?

「いるとすれば?上か?」

 そう思って、シュンが上を見上げた時、太陽を背に1機の戦闘機がビームを打ち込みながら突っ込んできた。わずかに数メートルの至近弾だったが、かろうじて避けることができた。

「やっぱり?いやがった!」

 しかし、その機体をみてリサは大声を上げた。

「F-110?なんで飛んでいるの?まだ?動力テスト中よ?」

「新型機の開発速度が民間の方が早かっただけだ!」

 F-110下方で旋回し、シュンたちの機体の後ろに着いた。撃ってくるのかと思っていたがその気配はない。

 その時、オープン回線で映像付きの通信が入った。

「この!イーグル野郎!あんただけは私が直接、殺してやる!」

 そのモニターに映った顔はゴールドの長髪。大きなブルーの瞳、まっすぐな鼻筋、白い肌、ピンクのルージュをひく「美人」で、女の名前はケイコ・タカモリ、あのトモノリの娘の悪態女だった。

 その直後、ビームやらマイクロミサイルやらを乱射してきた。

「こいつ?ドッグファイトは素人だ?」

 狙いも射程距離も武器の選択も滅茶苦茶?シュンはそう思ったが、こっちの弾薬は素寒貧、物量作戦を使われたらこっちの方が分が悪い?回避運動にも限界がある?さて?どうする?

 同じく、リサは対応方法を考えていた。ユミはあのF-110の事は知らない。その時、ユミから最後のF-110を落とした直後に通信が入った。

「リィサァ~!こいつ何なの?あたし、こいつ知らないわよ?」

 ユミも未知の機体に対応方法がわからずに、リサに助けと指示を求めていた

 リサの頭の中では、軍の研究室に緊急連絡、して、キミコに大至急でF-110の構造式データを送ってもらい、それを再度、ユミに転送して対応させる。しかし、それだと30分以上かかってしまう?しかも、あのF-110が今、軍が開発している機体と、全く同じと言う保証はどこにもない?

 その間にも悪態女が笑いながら攻撃を続けていた。

「ほれほれ?この馬鹿鷲~!さっさと落ちなさい~!」

 モニターの中では美人が悪辣女の顔になっていた。

 その時、リサの頭の中に一つの策が浮かんだ。このF-108にはスーパーブラスターの装備はあるけど、エネルギーがない?でも、あの娘のバイオショットには弾はないけど、バイオショットのエネルギーは十分に持っている?ならば?

「ユミ!この機体後部の右側に着機しなさい!指示は着機後に指示します!」

 それを聞いたシュンは大声をあげた!

「この馬鹿!着機のタイミングをオープン回線で教える馬鹿がどこにいる?着機の瞬間、狙い撃ちされるぞ!」

 りさは「あ?そうだった!」と思ったがもう遅かった。ユミは着機態勢に入っていた。悪態女でも、そのチャンスを逃さなかった。ユミが着機した瞬間にビームを打ち込んできた。

「ヤバい!当たる!」

 さすがのシュンも目を閉じた。しかし、被弾した衝撃はなかった。目を開けるとユミが馬鹿でかい連合宇宙軍のロゴが付いたシールドが機体全体を覆っていた。

「バイオシールド?あの娘は張れるのか?」

 リサは唇を震えさせながら

「あの娘には決定的な武器は何一つ与えていない、でも自分を守る装備は十分以上にあたえているの!」

「それにしても馬鹿でかいシールドだ?600mはあるぞ?エネルギーの無駄使いだな?」

 それを聞いたリサは頭を抱えた。

「シールドのフォーカスのあて方…教えるの…忘れてた…」

 ユミからの通信が入った。

「リサ?着機したわよ?これからどうすればいいの?」

「まず、あなたの足についている固定ロックで機体に固定しなさい!次はこの機体の右後部にスーパーブラスターがあるから、そこの最後部に口径変換用のユニットがある。そこにあなたの右腕を突っ込みなさい!あとは機械がやってくれるわ!」

 ユミが指示通りにスーパーブラスターに右腕を突っ込んだ途端、操縦席の正面のターゲットスコープにはスーパーブラスター用のゲージには今までエンプティのアラートが出ていたが、アラートは消え、微量ではある発射が可能になった。

「おい?これって撃てるって事か?」

「撃てるわよ!シュン!でも、打てるのは右側の1発だけ!あとはあんたに任せるわ!」

 シュンは親指を立てて

「誰に言っている?俺の腕ならば1発あれば十分だ!」

 そして、再度のドックファイトが始まった。性悪女は後方から何も考えずに、ありったけの武装で攻撃してきていた。

「リサ!神業見せてやる!酔うなよ!」

 一瞬でシュンは前方の上方バーニアと後方の下方バーニアを数秒吹かした。機体は急激な前回り状態になった。

 さすがのリサも目を閉じてしまった。目を開けた時、その頭上には地面が広がっていた。頭を下にした逆宙返り?いや?こんなに早く逆宙返りが出来る訳がない?え?まさか?フロント・クリップ・ターン?急激で正確なバーニア操作が必要とされる高等技術だ。うちの隊でもできる人間はほとんどいない?そして、シュンは機体をトルネードターンして、上下を正位置に戻した。あの性悪女の乗る機体は、目標を消失してシュン達を探していた。

「決めるぜ!」

 ターゲットスコープが自動追尾とロックオン態勢にはいった。それは後席のリサにも同様の映像が映っていた。トリガーを引く瞬間、シュンは若干、左に機体を操作した。それを見たリサは「え?なんで?撃たないの?これじゃ当たらない?」ターゲットスコープからはアラートの表示が出たが、シュンは躊躇わずトリガーを引いた。右側だけの主砲の発射は反動で射線が右側にずれたが、左側への操作によって見事にF-110の動力系のシステムコンピュータに命中した。

 すごい人「シュン?あなたって人は?ここまで計算していたの?」リサはそんな事を考えていた。

 一方、それでも墜落しながら、あの悪態女がモニターの中で騒いでいた

「この馬鹿イーグル!覚えていなさいよ!次は絶対に殺してやる!」

 リサはこの映像が途切れると“くすっ”と笑った。テレビアニメの最後の悪党の捨て台詞に似ていたからだ。「こんな事?言う人って本当にいるんだ?初めて見た?」悪態女の方は素直に落ちていった。たぶん?高度300位で自動軟着陸機能が働き、不時着するだろう?最後の最後まで悪態の言動は直ることはなかった。

 その直後、ユミから怒りのクレームが入った。

「リサァ~!あたしの右腕!吹っ飛んじゃったよぉ!ちゃんと直してよね!」

「ユミ、お疲れ様!よくやったわ!それと、右腕への給電をカットしなさい。右腕は研究室に予備があるからちゃんと新品を付けてあげるわよ?それと、悪いけど?さすがに私もシュンも疲れたわ?あんた、操縦して頂戴してくれる?」

「了解ぃ~!」

 正面の液晶のタッチパネルには“YUMI-AUTO”が表示されて、操縦桿とフットバーは透明人間が操縦しているように勝手に動いていた。

 そして、F-108は夕暮れが迫る中、帰投のコースに入った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。