王宮からの呼び出し
鳥の囀りと柔らかな陽の光に包まれて目が覚めた。
気がつくと、涙が頬を伝っていた。
昨夜の夢のせいかな…
前世の夢… やはりあの時、私を庇ってくれたのは折原先輩だったんだ。
また、心が締め付けられるような感情になった。
「琉… 」
前世で、呼べなかった彼の名前が自然と零れた。
ドワーフの森から帰って間もなく、ウインターホリデーに入った。
私達は森の家からそれぞれの王都にあるタウンハウスへと帰っていった。
私も今ライズ家のタウンハウスにいる。
お母様とジュリアスもタウンハウスに滞在していてとても賑やかな時間を過ごしている。
ステファンの件で、ステファン、ユリアス、コーレリア公爵が国王に謁見に王宮へ本日行く予定だそうだ。
コンコンと扉をノックする音が聞こえた
「どうぞ 」と答えるとお母様と侍女たちが何人か入ってきた。
「おはよう、ルナティア 急に王宮に行くこととなったから早く準備をしてもらえる。もちろん朝食もしっかり食べてからね 」
「王宮に? 」
「私も一緒に行くし、エドガー達もいるから安心して 」
とお母様はニコニコ笑っている。
食事を終えて支度をして、王宮へ向かうために馬車に乗り込んだ。
今回は、呼び出しされて向かっていることもあり、なぜか緊張している。
それにしても、どうして私まで呼ばれたのかしら…
不思議に思いながらも馬車の座席に腰かけた。
馬車の中で、昨夜の夢を思い出しているうちに、
以前から気になっていたことが頭をよぎった。
満月に出会う「リュウ」がユリアスと同じ香りがすること
背丈や顔が似ていること
そして、ある日から突然ユリアスが私を「ルナ」と呼ぶようになったこと。
もしかして、「リュウ」と「ユリアス」は同一人物?
でも、あのユリアスが秘密にして他人になりすますなんてことが彼にできるはずがない。
そんなことを考えていると
「どうしたの、ルナティア 凄く険しい顔をして… 」
私の向かい側に座るお母様に尋ねられた。
「あ!ごめんなさい 少し緊張して…… 」
つい、誤魔化してしまった。
「なんでも、一人で抱え込まないでね。
私はあなたのことなら全て受け止められる自信があるから
なんでも話してちょうだいね 」
お母様には何もかも見透かされているようだ。
そして、いつも私達家族を優しく包んでくれる…
お母様の言葉に胸が熱くなった。
お母様に、前世のことも… リュウのこと…ユリアスのこと
相談しても… 幻滅されたりしないかな…
どうやら…わたしはこんなに過保護にされているのにも関わらず
前世の経験からか、家族に対して少し臆病になっているかもしれない…
そんなことを考えている間に、王宮に着いた。
私とお母様は会議室へと通された。
中に入ると、ステファン、ユリアスがいた。
年配の淡いブルーの髪に琥珀色の瞳の男性が座っている。
…ユリアスと同じ色…コーレリア公爵様かしら?
そして、チャールズとユーリア公爵もすでに席についていた。
「ああ、ルナティアも到着したか 」
後ろを振り返ると、お父様とふたりのお兄様もいた
「さあ、ルナティアも座って 」
とフェドリックお兄様に手を取られエドガーお兄様とフェドリックお兄様
の間に座らされた。
丁度私の真正面にユリアスが座っている。
目があって、思わず微笑んでしまう。
彼が微笑みを返してきてくれるだけで嬉しくなってしまう。
「ティア! 陛下がお見えになるぞ
だらしない顔をするな、ちゃんとしろ! 」
とエドガーお兄様が耳打ちをする。
むぅ… 早速エドガーお兄様ったら…
でも…そんなにだらしない顔だったかしら
気をつけよう…
ガチャっという扉を開ける音がするとともに
その場にいた全員が立ち上がり、空気が一変した。
国王陛下が、入室した。




