第三部 螺旋の紡いだ未来 プロローグ 瑠那(ルナ)と琉(リュウ)
プロローグにしては長いです。でもどうしても削れなかった。
ep.57 琉と瑠那の対となるお話し
瑠那と琉 瑠那視点です
私の名前は、五十嵐瑠那 桜川学院 二年生 図書委員をしている
放課後は、学校近くのバス停前の本屋さんでバイトを、している
バイトから帰ると家には誰もいないことが多いので、
家事と宿題や明日の準備もあるので自分の時間というものが取れない。
ただ、図書館司書でもある佐久間先生が
「五十嵐さん、放課後の図書委員。
放課後に時間がとれなかったら、
朝授業前に本の整理してもらえたら助かるわ。
勉強や読書をしても大丈夫よ。
ちゃんと学園長にも許可いただいているから 」
先生は私の事情を分かって色々と考えていてくださっていた。
早朝の図書館通いが始まった。
朝、静かな学校で、図書館の扉を開ける音だけが響く。
鳥の鳴き声が、聞こえ空気を入れるため開けた窓から入る風が心地よい。
本の整理を終えると始業時間まで自分の時間だ。
本の香りとページをめくる音… この時間が一番落ち着く。
ところが、ある日 いつものように過ごしていると扉が開く音がした。
「図書館、朝も開いていたんだ 」
窓から入る光が埃までもキラキラしている中入ってきたのは
三年生の生徒会長折原先輩だった。
「ねえ、君 図書委員? 俺も図書館使っても大丈夫? 」
そう、私に近づきながら声をかけてきた。
「大丈夫です 」
そう言うと
「そう、よかった 」と私の隣に座った。
折原先輩は何も言わず勉強をしたり本を読んだりしていた。
始業のベルが鳴ると
「あー!もうそんな時間か…明日も来てもいい? 」
と私に尋ねた。
「はい 」というと
「ありがとう 」それだけ言って立ち去った。
それから、折原先輩は毎日図書館に通うようになった。
そして、毎日私の隣に座っていた。
1週間ほどたつと初めて名前を聞かれた
「ねえ、今更でわるいけど、俺は折原琉 君の名前もよかったら教えてくれる?」
「五十嵐瑠那です」
「五十嵐 瑠那さんか、素敵な名前だね 」
と言われただけで嬉しくなってしまった。
その日から、どんどん会話が増えていった
私は友達がいなかったので折原先輩との会話が楽しく
朝も折原先輩が来るのが待ち遠しくなっていた。
そんなある日、放課後図書委員をしている時折原先輩が友人と図書館にやってきた
私は、図書館の高窓を閉めようと背伸びをして手を伸ばしていても届かないでいた。
すると折原先輩が後ろから手を伸ばし、代わりに窓を閉めてくれた。
「ありがとうございます 先輩」と恥ずかしくてお礼をいうのが精一杯だった。
そのあとも折原先輩は「残りの高窓も俺が閉めるよ」と言ってくれた
嬉しいのと恥ずかしさで
「本当にありがとうございます。お言葉に甘えます」
と、言うのが必死でうまく笑えなかった。
「いてっ!」と声が聞こえた。
私は、折原先輩の友人に話しかけられていたのだが折原先輩に駆け寄っていった。
「おい、大丈夫か?琉・・」と折原先輩の友人が尋ねると
「ああ、大丈夫だ とげが刺さったかもしれない」
「私、図書準備室にある救急箱取ってきます」
私は図書準備室の扉を開けようとするが
ガタガタと音がして中々開かない…
「あれ・・立て付けが悪くって」と焦ってしまった
すると折原先輩が
「大丈夫焦らないでこんな時は・・ ひらけー ゴマ!」
折原先輩は扉を少しもちあげるようにして、ぐっとひっぱった。
ガタンと音を立てて扉が開いた。
思わず「折原先輩凄いです!魔法みたいです!」とつい言ってしまった。
でも、本当に折原先輩は魔法使いのようだ。
突然私の前に現れて、魔法にかかったように優しい気持ちにしてくれる。
救急箱を取ってきて手当をさせてもらった。
折原先輩の大きな手の細長い指に触れる度に心臓の鼓動が跳ねる。
このドキドキが折原先輩にばれませんように…
そう思いながら手当をした
次の朝もいつものように折原先輩が来た
「いつも早い時間に来てるんだな」
「この時間しかゆっくり本が読めなくって・・
司書の先生が本の整理を理由に内緒で早く開けてくれているんです」
「そうか、じゃあ俺は君の恩恵にあずかっているわけだ」
と折原先輩が笑う
「そんなこと・・」と思わず笑ってしまった
「『星の名前』か。星・・興味あるの?」
私の読んでいる本が天体関連の本だった
「星や月が好きで・・見ていたら気持ちが落ち着くんです
本当は天文学部に入りたかったけどアルバイトがあるから」
いままで、誰にもいわなかった気持ちをつい言ってしまった。
すると、折原先輩は嬉しい提案をしてくれた。
「俺天文学部なんだけどアルバイト早く上がれる日に望遠鏡で星を見に来ないか?夜間観測日の時に君も参加できるよう部員のみんなや先生にも頼んでみるから」
「本当にいいんですか?」
「体験で・・って頼んだらみんないいやつばかりだからきっといい返事くれると思う
ああ、そうだ・・よかったら連絡先教えてくれたら・・」
私は思わず言葉が詰まった。
「すみません、私携帯電話持っていなくて・・
でもいつもアルバイト終わるのが7時30分なんです」
「わかった、なにか連絡ある時は7時30分頃にバス停に行くよ」
「はい・・あ・・それとこれよかったら食べてください」
お礼のつもりで作った
薄いブルーの巾着袋の中におにぎりとおかずの入ったお弁当箱をいれて渡した。
「え?」
「こんなもので申し訳ないのですが昨日のお礼です・・
よかったら食べてください・・」
本当にこんなものしかできなくて恥ずかしくてうつむいてしまった。
「ありがとう・・・めちゃくちゃうれしい・・」
折原先輩は、すごく喜んでくれた
そうこうしていたら始業前の予鈴がなった
「やばい・・じゃあ 約束な 」
「はい」
と二人であわてて荷物をまとめて教室へ向かった
その日から、前よりも折原先輩と距離が近くなった。
毎朝、図書館で一緒に勉強したり 読書したり
そんなある朝のことだった
いつものように隣同士に座って図書館で勉強していたら
ある事に気がついた。
「あ・・先輩のりゅうって名前【琉】って書くんですね」
「そうなんだ、よく【龍】って書くのかと思ったって言われる」
「知ってました? 先輩の『琉』と、私の『瑠』って、
どちらも宝石に関係する漢字なんですよ」
私はメモ帳に『琉』と『瑠』を書き並べた。
「普通は『瑠璃』って書くんですけど、『琉璃』って書くこともあるそうですよ。なんだか、先輩と私の名前が並んでいるみたいですね」
それだけの事なのにすごく嬉しくなった
折原先輩は隣でニコニコしながら私の話を聞いてくれている
「瑠璃って、青く美しい宝石の名前なんですって。素敵ですよね」
そう言ったあと、少しだけ寂しい気持ちになった
「私も……いつか誰かの宝物になれるのかしら……」
ふとそう思ってしまった。
私は折原先輩のメモに書いてしまったことに気がついて
「あ、ごめんなさい・・つい折原先輩のメモに書いてしまった」
慌ててシャーペンを手放して消しゴムを取ろうとすると
「いやいいよそのままで・・それより・・・瑠那って呼んでいいかな
君にも琉って呼んでほしい」
と折原先輩が私を見つめて言った。
え?すごく嬉しいでも、私が折原先輩を琉って呼ぶなんて…恥ずかしくて無理
「瑠那ってよんでもらうのは嬉しいですけど先輩を琉と呼ぶのは恥ずかしいです・・・」
「今はいいから・・・待ってるから・・瑠那」
優しい笑顔で折原先輩が私を見つめている
「はい」と返事をするだけでドキドキしてしまう
授業中ペンケースを見るといつものシャーペンが見当たらない
もしかすると、
朝図書館で先輩のペンケースに、間違えて入れたかもしれない
明日、折原先輩に聞いてみよう。
シャーペンのことを折原先輩に聞こうと思うだけで嬉しくなってしまう
その日の放課後、アルバイトを終えバスを待っていた。
その時突然トラックがバス停に飛び込んできた。
その瞬間「瑠那 危ない!」という声が響き、
誰かが覆いかぶさってきた
最期に目に映ったのは同じ高校の制服である濃紺のブレザー。
そしてあの低くて優しい声は…。
折原琉先輩
どうして…。
この大切な人の名前を
忘れてしまっていたのだろう・・・
目覚めると涙が頬を伝っていた。




