桜の日記に残る記憶 中編 誕生
ステファンの母ポーラ編 長くなっておりますがよろしくお願いいたします
「 緑の愛し子、ポーラ 」
美しい女性は、ゆっくりと私に語りかける。
「私が緑の愛し子なのですか? 」
と、私が聞き返すと彼女はキョトンとした顔で
「そなた、妖精の姿がみえるじゃろう 」
「はい… でもみんな… 」と話す途中で
「あれは、誰も見えるものではない
特におぬしの魂は居心地が良いのか
いつも、妖精たちがくっついておるな 」
そう言いながら彼女は手のひらに妖精を乗せて指でなでていた。
「あなたは、どなたなのでしょうか? 」
「おお、伝えるのを忘れておったわ
我は、精霊王と呼ばれておるわ 」
「精霊王様! 大変失礼しました 」
なんとなく凄い人なんだろうと思っていたけれど
まさか精霊王とは!
わたしは慌ててカーテシーをした。
「よいよい、窮屈なことは嫌いじゃ
精霊王と言っても我は自然界には影響力があっても
人同士の争いやあ奴らに理を説くまではできぬ。
ただ、おぬしに注意を伝えることはできる
ましてや、おぬしのような美しい魂の妖精の愛し子の苦しむ様は悪魔たちにとっては大好物となり力となる。
!!!!
私が苦しむことで、悪魔が力を得るなんて!!
「そして、悪魔はおぬしと膨大な魔力を秘めているファウトとの間に宿った子を狙っておる
復活の『器』として・・
どうやら、そなたのおなかの子は黒龍の契約者の運命も持って居るようじゃ
正にうってつけじゃ 」
おなかの子???私はおなかにファウトの子供を既に身籠っている事に気がついていなかった
思わず、まだ何も変わっていないおなかに手を添えた。
ここにファウト様と私の子供がいる。
そう思うだけで、胸がいっぱいになった。
不安よりも喜びの気持ちの方が強かった
「私は、この子をどのように守ればいいのでしょう? 」
ただ、このことはちゃんと精霊王に聞いておかなければと
私は精霊王に質問した。
「我が、そなたに伝えられるのは『桜花の奇跡』『氷華の奇跡』二つの薬の作り方じゃ
『桜花の奇跡』は、人の身に降りかかったあらゆる呪いや異常を浄化し本来の姿に導く薬じゃ
ただしこの薬は桜の花の採集をしたものが愛するものにしか効果がない
『氷華の奇跡』は、龍や精霊の浄化・再生の為の薬じゃ
この二つの薬はきっとおぬしらの子の役に立つだろう
そういって精霊王は二つの薬の作り方を、私の意識へと伝えてくれた。
「ポーラ、くれぐれも油断をするな…
おぬしを守ってやれない私を許してくれ 」
精霊王が私を悲しげな瞳で見つめる
「そんな、許すなんて…このような薬を託してくださるなんて
感謝しかございません 」
そう伝えると 精霊王は少し微笑みながら消えた。
それから、私はまずファウト様に彼の子供を身籠った話をした
朝、起きてきた彼が
「おはよう、キャサリン(ポーラの偽名) 」と台所にたつ私の頬にキスをした。
「おはよう、ジム(ファウトの偽名) 早速なんだけど…私あなたの赤ちゃんを身籠ったの 」
「え? 今? なんて 」
「あなたの赤ちゃんができたの 」
「うわあああ!!なんて素晴らしいんだ!! 」
彼は、ぎゅっと私を抱きしめながら叫んだ
普段冷静な彼がすごく取り乱している
それから、彼は魔道具士としての仕事を一生懸命にこなしていた。
私はあの満月の夜に咲いた桜の花を一輪ずつ大切に摘み取った。
『桜花の奇跡』『氷華の奇跡』の調合に力を注ぎながら幸せな毎日を過ごした。
つわりがひどいときには家事を彼がすべてこなしてくれた。
何もしたことのない王子様の彼が…。
おなかの中でどんどん私達の子供が成長していく時間をふたりで感じていた
おなかが動いた!おなかを蹴った!そういう出来事も私達にとっては大きな出来事になった。
彼も私もおなかの子に話しかけ、歌をうたったりもした。
出産が近くなったある日
「子供の名前はステファンにしないか? 」
「素敵な名前ね。でも男の子の名前だけ? 」
「なんとなく男の子のような気がする 女の子だったら顔を見たら名前が浮かぶ気がする」
とファウト様が笑う
「もう、浮かぶだなんて 」そう笑いながら彼の提案を受け入れた。
「あなたの名前はステファン お父様が名付けてくれたのよ 」
とおなかをふたりでさすりながら子供に語り掛けた
そんな、幸せな毎日を送っていたある日、『桜花の奇跡』が完成した
薬は4つしかできなかった。
おなかの子供、ファウト様 いつも危険と隣り合わせな王太子妃であるステラお姉様、アリオト王太子にもしもなにかあった時に使ってもらえたら…
そう願いながら完成させた。
ただ、『氷華の奇跡』は材料がなくまだ完成されていない
私の実家でもあるコーレリア公爵家領地の神霊山脈ペテルギウス山脈にあるという『ラピスラズリ』この石と ドワーフの森に咲く『ステアーズドロップ』
が、手元にはない。採集者は『桜花の奇跡』と違って限定されるものではない。
私は『氷華の奇跡』の完成は材料を入手するまで保留にし、この二つのレシピを書き留めて魔法をかけた。
悪意のある人の手に渡らないように・・・
そして、とうとう出産のときが来た。
夕食を食べているとおなかが急に痛み出した
「う・・・」
「キャサリン!大丈夫か?」
慌てるファウト様に
「生まれそうかも・…サリさんとロリアを呼んできて 」
ファウトは、すぐ二人を呼んできてくれた
「キャサリン、いよいよだね 頑張るんだよ 」
サリさんのその声で気持ちが落ち着いた
「そうよ、私達もずっと会えるのを愉しみにしていたのだから 」
「う・・・ん 」
みんな子供ができたことを報告したときも凄く喜んでくれた。
真っ暗な道をさまよっていた私達に灯りをともし道を作ってくれた人たち
感謝で涙が流れる
いままで味わった事のない痛みの中夜明けの日の光が差してきた
明け方男の赤ちゃんの元気な声が金色と藍のグラデーションの空に響きわたった。
「母子ともに健康よ!」
サリーさんに、そう告げられたファウト様か泣きながら
私に
「ポーラ、ありがとう 」と本当の名前をよんで声をかけキスをした。
彼は、恐る恐る銀色の髪のファウトそっくりな赤ちゃんをだいて
「お前の名前は、ステファンだ。 強くやさしい男になるんだぞ 」
と言葉をかけた。




