名前で呼んでくれないか
村の市場にやってきた。
野菜やハーブを取り扱うお店やお肉屋さんに、こんな山の中に魚屋さんもある!
よく見ると干物にあと湖で取れる魚だろうか あまりみたことの無い魚が店先に並んでいた
「ルナティア、あれ見て」とアリシアが少し興奮ぎみに私をよんだ
「あれ、あの小さな貝みて」
「あ!もしかしてしじみ?」
「しじみのお味噌汁飲みたい……」とふたりで声をそろえた
「でも、お味噌がないものね」と話していると魚屋の奥さんが
「お味噌なら売ってるよ
この筋の一番端にあるお店に」
「ありがとうございます」
アリシアとふたりで慌ててお店まで走った
お店の前にいくとお味噌の他になんとお米まで売っていた
お店には、着物を着たふくよかな年配の優しそうな女性がいた
「あら、珍しいこの店にこんなに若い可愛い女の子がくるなんて……」とお店の奥さんが話しているとユリアスとステファンが走ってふたりを追いかけてきた
「ふたりとも、急に走っていなくなったら駄目だろう」とユリアスに叱られた
「ごめんなさい、先輩 あの・・・このお味噌とお米を買いたいのですが……」
「え?これを買うの?」と、こんなもの食べられるのと怪訝な顔をするステファン
キラキラとした瞳でルナティアとアリシアは見つめてくる
「う・・・ ふたりがそんなに言うならでもちゃんと予算内でね」
と、ステファンが仕方ないなという表情で許可を出した
「ありがとうございます」と二人はお店に入る
「お味噌とお米だけじゃない!お醤油もお海苔もある」
「大変!ルナティア梅干しや煮干しやわかめもある」
え?このお店一体まさかお店ごと異世界転移?とおもっていたら
「私はね、チャウナ公国の南側にあるイブー島という小さな島国の者なの
私の旦那様ドワーフのサリテが各国を旅している時に私の島にやってきたときに出会って結婚してこの村にやってきたの」
「そうなんですね イブー島聞いたことなかったです」
「ああ、 小さな島で独特な食文化があると聞いたことがある」ステファンが店に並べている商品を見ながら呟いた
「島から特産品を送ってもらってこうしてお店にも並べたりお味噌やお米はここでも少し作っているのよ」
「ご主人 お名前をお聞かせください ぜひわが領でも取引していただきたいわ
私アリシア・グランティスと申します」
「まあ、もしかしてグランティス公爵家の? ではぜひ島の島首が私の兄ですの 早速連絡を取りご紹介させていただきますわ」
アリシアはあっという間にこの店の主人ロリアと連絡先を交換していた
そのあと干物やお肉野菜そしてしじみも購入してロッジへと帰った
帰るとロッジはすっかり過ごしやすいようにジェシア達が整えてくれていた
シーツを取り込みに行くと知らない間にユリアスがついてきてくれてシーツのはいった籠をひょいと持ってくれた
「あ・・・」
「こんなに沢山重いだろう 無理しないで・・・」
「ありがとうございます」
そのあと、すこし沈黙が流れたので思い切って聞いてみた
「あの、最近先輩私になにか怒っていませんか? 私なにか知らない間に先輩を不愉快にするようなことしましたか?」とそっと聞いてみた
わー!言ってしまった ちょっと返事が怖いけど・・このままもやもやするのも嫌だ
すると、ユリアスの顔が真っ赤になった・・
「ち・・・ちがうんだ その・・君は何も悪くない・・・
えっと・・・その・・・俺も君の事を名前で呼びたい・・・」
「へっ?」あまりの小声でなんていったかわからない
「ルナティア!君の事を名前で呼びたいし君にはユリアスと呼んでほしいんだ~!!」
と、今度はあまりに大きな声で湖中に声が反響してエコーがかかり村中に聞こえるように響いている
村の人も違うロッジの学生もユリアスの声に驚いている
ルナティアは、驚きながらも恥ずかしくて籠のシーツに顔をうずめているユリアスの服の袖をツンとつまみ
「ユリアス様とお呼びしていいんですか?」
「ユリアスでいい・・呼び捨てでいい・・・ ティアって呼んでいいか・・・」
とシーツにうずめた顔を少しだけルナティアにむけてユリアスはぽそっと言った
「はい」とルナティアは少し頬を赤くして答えた
ロッジに戻るとジェシアやみんながニコニコしているがあえてさっきのことには触れなかった
私とアリシアが夕食の支度をしている間に他のみんなでベッドメーキングしてくれていた
「みなさーん ごはんができました」
夕焼けで湖がオレンジ色に染まっている 風が心地よいので
外のテーブルに食事の用意をした
魚がフォークでは食べにくいので骨をとって提供し、鳥のからあげはみんな好きなはずと山盛り用意し
サラダとシジミのお味噌汁 そしてお米は食べやすいようにおにぎりにした
「おお!見たことのない食事だな」とルーカスが驚いている
「この泥水のようなものも飲めるのか」とクリスが不安そうにお味噌を見つめている
「ミソスープというの だまされたと思って食べてみて」
恐る恐るみんなはコクリとシジミのお味噌を飲んだ
「うわ!なに美味しい 他のは?」とみんなガツガツと食べだした
私とアリシアはやったねとばかり小さくガッツポーズをした
「と・・特にこの唐揚げがおいし~いわ あなたたち天才!」とジェシアがほめてくれる横で
ステファンが無言でから揚げをほおばりながらうなずいている
「あれ?コーレリア先輩・・泣いてる・・」とルーカスが驚いている
「え?」と一番驚いているのは、ユリアス本人だった
「うわ・・・本当だ・・俺どうしたんだろう 初めて食べるのに懐かしい味がすると思ったら自然と涙が出ていた・・・」と腕で涙をぬぐった
「今日は 先輩らしくないデスね 本当にどうしたんですか」
ルーカスの言葉にバツが悪そうに
「・・・とにかく食べよう」そういってまた食べだした
先輩の耳が赤くなってる たしかに最近変かな・・とおもいつつ
「デザートにプリンもありますよ!」と空気をかえると
「プリン・・・なにそれめっちゃくちゃ楽しみ~」とクリスが場を盛り上げた
空が段々光が柔らかく赤みや金色に輝き、風景が魔法のように美しく見えてきた
「マジックアワー・・・」
「マジックアワー?」
「この空が作った風景のことです 日の出前や日没後のほんの少しの時間魔法がかかったように幻想的になる現象のことです」
「本当ね・・・綺麗だわ」ジェシアもうっとりと見つめていた
ロッジの外灯にも明かりが灯り村にもぽつりぽつりと灯した灯りが広がっていく
「この景色みられただけでも良かった・・・」
「そうだな、ティア」
「はい、ユリアス」と微笑みあった
その様子をみてふっとジェシアが優しく笑って
「さあ、片づけてプリンをいただきましょう」と言って みんなで食事の後片付けをした
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