無邪気な後輩と無自覚な先輩
ドワーフの村・・・ユーリア公爵家領地内北側のザルツカンマ地方の最奥部にある山と緑そして、大きな湖がある湖畔の静かで美しい村だ
昔々ドワーフや異種民族は、奴隷のような扱いを受けていたがユーリア公爵家の先々代領主の考え方は「人は宝である ドワーフは友人であり同じ領地に住む家人であるという」考え方でドワーフ族の人権や生活を尊重しそして守ってきた
その想いに、こたえるようにドワーフたちも自分たちの持つ技術を向上し、ユーリア公爵家はものづくりの領地として国内外に名をはせ領地を発展させてきたのである
と・・ドワーフの村の紹介文が書かれた本を歩きながら読みながらルナティアはドワーフの村の寄宿舎へとむかっていた
「ライズ嬢、危ないから続きは寄宿舎に着いてから見ようか」
とコーレリア先輩に後ろからひょいと本を取り上げられた
確かに危ないよね・・・
「はい、ありがとうございます」と本を返してもらおうとしたのにコーレリア先輩は本を自分も鞄にそのまま入れてしまった
ぼ・・没収ですか・・・
また、読もうとしていると思われている?
とコーレリア先輩の方を振り向くといつものようにニコニコしている
無表情といわれている先輩なのに、私は彼の笑顔しかみていない気がする
レンガが敷き詰められた道 カラフルで可愛い街並み どの家も小さく可愛い
家の隣に工房がありドワーフたちが家と工房を行ったり来たりしている
「わ・・・思っていたイメージで違う・・・」
「どんなイメージを持っていたのかな?」とコーレリア先輩が顔を近づけて聞いてくる
え・・・近い・・・ この人絶対に、私を8歳の妹と同じように思っているのか知れないけどやたら距離が近い時があってこっちはドキドキするからやめてほしい
「え・・・・思ったよりすごく綺麗だな・・・ってものづくりの村だからこう・・ゴツゴツした感じかなって勝手に思い込んでいました。
「なるほど・・ね 」とニコリと笑う
しばらく歩き街並みを抜けると視界がぱあっと広がった
大きな湖に湖畔に沢山のコテージが山の斜面に建てられている2棟ずつコテージが20区域ごとに建てられ
ている
湖は光は反射してキラキラと光っている
湖の桟橋にはいくつかボートも停められている
「ボートもある!」
というと2年のルーカス・トロンが
「ボートに乗りたい? 一緒に乗ろうか?」
と声をかけてきた
「ルーカス僕も乗りたい!」と1年のクリスがルーカスの袖を引っ張る
「おい、クリス 一応他の人いる前ではルーカス先輩な」
「あ、そっか」
「そっかじゃないよ、しょーがないな
後で、みんなでボートに乗りに行こう」
「トロン先輩とリバート君は仲がいいんですね」
「ああ、俺たちの母親が姉妹なんだ
いとこなんだよ」
「そうなんですね 今回同じグループで良かったね
リバート君」
「まあね、それよりクリスでいいよ
僕もルナティアって呼んでもいい? アリシアむ」
とクリスがくったくのない笑顔でいうと
ユリアスとステファンの顔がピクっとひきつった
「クリス、ずるいな 先に俺が言おうと思ってたのに
おれもルーカスってよんで ルナティア、アリシア」
とルーカスがルナティアとクリスの間に入ってルナティアの肩に手をおいた
また、ユリアスの顔がピクリとするとジェシアが、並んで歩くユリアスとステファンの間に割って入り
「素直で可愛いわね、無自覚もほどほどにしないと無邪気な後輩たちに持っていかれるわよ」と
いたずらっぽく笑いながら囁いた
「意味がわからない・・」とユリアスとステファンはムッとした表情でソッポを向いた
「コーレリアス先輩!先輩たちもボートに乗りますよね」とルナティアが笑顔で振り向くと
「ああ・・・」と少しきまずそうに返事した
あれ?先輩 何か怒ってる・・? 何か気に触ることをしてしまったのかなとルナティアは感じた
「もう、本当にそう言うところよ!」とユリアスは思い切りジュシアに背中を叩かれた
「うるさい」とユリアスは耳を赤くした
坂道を登りコテージに到着した コテージの庭には外でみんなで食事するのに十分なテーブルや椅子も置いてあり
湖が一望できる
ドワーフたちの住む家や作業所のあちらこちらからは煙が登り、鋼を打つ音が湖の向こう側の遠くから聞こえてくる
村や湖の反対側には大きな山々が険しく連なっているがとりわけ大きな山に目が止まった
ジェシアが「あれが火の山よ
火の山の中はずっとマグマが燃え盛っているといわれているわ」
「聞いているだけで熱くなりそう」
「まあ、そのおかげでこの辺りは温泉が沸いているんだけどね」
「温泉!」とルナティアとアリシアは声を揃えていった
「また、楽しみができたわね」
本当だ 「出発前に遊びにいくんじゃないぞ 勉強に行くんだからな」とエドガーお兄さまが何度も私に釘を刺した理由がわかったわ とルナティアは納得したのである。




