第四章 第五話:Enemy Invasion!
1:30――東雲建設、近隣の空き地。
「めいあ様、まいあ様、到着いたしました」
黒の1BOX車のスライドドアを開け、目的地に着いたと告げる爺。
「……ここは?いったいどこですの?」
まいあは車から降りて周りを見回すも、辺りはただの空き地で何もなく不安がる。
めいあも車から降りるが、何やらニヤついていた。
「ふふっ……爺やん。“例”の物は準備できてる?」
「はい、つつがなく。……こちらへどうぞ」
爺は、1BOX車の後ろに同行してきた箱付きトラックへと二人を案内する。
荷台の中へ入ると、そこには見慣れぬ機材が二つ置いてあった。
「これは?いったい何ですの?」
訝しげにしているまいあをよそに、めいあは興奮を抑えきれずにいた。
「こ、これよ……このシチュエーションに打ってつけの!空中移動型ドローン!
はぁ、はぁ……まいちゃん!これに乗って!空から侵入しちゃうんだからね!」
「なッ!何ですって~ッ!めいあ!?
あ、あなたそんなものをいつの間に準備していたんですの?」
「ふっふ~ん。お姉ちゃんの予見はよく当たるのです」
……と、ドヤ顔&ドヤポーズを決める。
「ま、それは冗談として~。
解析班に侵入経路の予測をしてもらったら、
地上からの侵入はほぼ不可能って判定が出て…。
何か~やたらとあの施設、セキュリティレベルが高いのよねぇ。
で、唯一、上空から屋上へのルートが“ガラ空き”だったの。
ま、あたりまえっちゃ、あたりまえなんですけどねぇ~」
そして、思い出したかのように、
めいあは身に着けていたポーチから何かを取り出す。
「あッ!そうそう、大事な物を忘れてた。怪盗と言えば――これでしょ!」
「……な、何ですのその不気味な物体は?」
めいあは手にした物を、自らの目に当てた。
「猫の目を模したアイマスク♡金はめいちゃんので、銀はまいちゃんの!
これをつけてこそ“怪盗にゃのめ”なのです!」
再びドヤ顔&ドヤポーズ&ピースサインで、興奮しているめいあ。
――ドン引きするまいあ。
そして顔を真っ赤にしながら叫ぶ。
「もう!めいぃぃぃ!!!
こんな恥ずかしい格好までさせておいて、こんなものまで!」
「まあ、まあ、ごねないごねない。
まいちゃん!め~ちゃッ!似合ってるんだからね♡
ほらほら、一緒に写真撮りますわよ~」
めいあはそう言うと、自身の携帯アクセを取り出し、
恥ずかしさで悶絶しているまいあの写真を、パシャパシャと撮り始め、
しばらくの間、撮影大会が続いた。
上から下から……
恥ずかしがるまいあの“あられもない姿”を、容赦なく激写していくめいあ。
――ようやく満足したのか、めいあが爺に指示を出す。
「ふうッ!めいちゃん満足満足!それじゃあ!爺や準備してちょうだい!」
一方、まいあはうなだれ、顔も引きつり、既に意気消沈していた。
「……悪夢。ですわ」
結局、めいあのごり押しに勝てず、
準備された衣装と小道具を受け入れるしかなかった。
爺はめいあの指示に従い、離陸準備を始めると、
トラックの荷台は自動で開き、その場から夜空が見え始める。
――爺が説明を開始する。
「それでは少々ご説明いたします。
ドローンは自動制御されておりますので、離陸後は操作の必要はございません。
東雲建設の社員寮屋上に、着陸地点をセットしております。
到着しましたらドローンは待機状態になりますので、
そのまま作戦を開始して頂き、みこと様を救出した後、
再びドローンにて脱出して頂けたらと存じます」
二人は、それぞれのドローンに乗り込んだ。
「めいあ様、まいあ様、……ご武運を」
「それじゃぁ!行きますわよ!テイクオ~フっ!!!」
めいあの絶叫とともに、二機のドローンは荷台から飛び立つ。
相変わらず、冴えない顔をしているまいあ。
「ああ……どうしてこんなことに。
でも!みこを救出するためですわ!切り替えて参りますわよ!」
一方、めいあは興奮を抑えきれず、夜空に向かって何やら叫んでいた。
「ヒャッホーー!!!最高ッ!!
さあ!み~ちゃんの救出作戦!状況開始ですわー!」
そんな二人を乗せた二機のドローンは、夜の暗闇に消えていく……。
2:00――東雲建設、専務室
「……以上が、現状で明らかになっていることね。
まさか、紫呉閣下から直々に手紙をもらうとは思わなかったわ。
手紙の内容はお見せできなくて申し訳ないんだけど。
……ただ、これは私の勘なんだけど、
閣下の思惑は、大佐が心配していることではない気がするの。
少なくとも、ケジメや落とし前といった、
私怨の類で動いている印象ではないと思うわ。
漠然としていて申し訳ないんだけど」
京花の机の前で姿勢よく、直立して話を聞いている男性がいた。
南条大佐とのパイプ役として抜擢された、白井壮馬大尉だ。
「とんでもありません。わざわざ深夜にもかかわらず、
こちらの時間に合わせていただき、重要な情報を教えていただいたこと。
感謝に堪えません」
「いいえ、こちらこそ海外視察からの帰還直後に来てもらって、
疲れているところ、申し訳なかったわね。
まぁ、諜機の動きも気になるから、通信系の連絡は控えたいし、
しばらくは、こうやって地道に動いていくしかないわね」
「御意。……少佐、一つ質問してもよろしいでしょうか」
「……ふふ。私はもう少佐ではないわよ。何かしら?」
「失礼いたしました。……例の、彩音――」
白井大尉が言わんとしたその時だった。
京花の机の隅に置いてある赤いランプが音もなく点滅し始める。
「ッ!?……少佐、こ、これはいったい?」
京花は慌てる素振りもなく、極めて冷静な対応で機器を操作し、
点滅するランプを解除すると、不穏な笑みを浮かべ始める。
「ふふ……どうやらネズミが網に引っかかったみたいね。
白井大尉、面白いものが見れそうだけど、少し付き合っていかない?」
――東雲建設、社員寮屋上
「無事到着!あ~めっちゃ快適だった!
さて!ここからが本番。まいちゃん!気合入れて参りますわよ~!」
意気揚々としているめいあに対して、
まいあはみことのためとはいえ、テンションが上がり切らずにいた。
高所恐怖症とまでは行かないものの、高い所が若干苦手であることに加え、
彼女にとっては恥辱ともいうべき格好をさせられていたからである。
「ふぅ……まったくめいときたら、どうしてそんなに生き生きとしてますの?
でもまぁ、ここからが勝負所ですわね。気を引き締めて参りますわ!」
めいあは何やらドローンに仕込んでいた物を持ち出して、準備を始めた。
「めい?そういえば、ここからどうやってみこの部屋を特定し、侵入しますの?」
その質問を待ってましたと言わんばかりの表情と態度で、
まいあにドヤるめいあ。
「ふッふ~ん!すべてめいちゃんにお任せなのです!
まず、み~ちゃんがいる部屋は、
ここに降りるまでに、み~ちゃんのアクセを受信して場所を特定済み。
西側から三つ隣の5階の部屋にいますわね。
侵入方法は、ここからアンカーを引っ掛けて、
ワイヤーで降りていって窓から侵入しちゃうって算段なのです!」
「さすがめい。“こういうこと”に関しては抜け目がありませんわね。
ですが……こ、ここは10階の屋上。
ま、また……高いところからになりますのね……」
気が乗らない素振りをみせるまいあに、
めいあはお構いなしに行動を開始する。
「さあ!まいちゃん!準備万端!み~ちゃんの部屋までレッツゴー!」
「あ~もう!わかりましたわよ!ここまで来たら何とでもしてやりますわ!」
二人は屋上からワイヤーにて、みことがいる5階まで降下し、
めいあがガラスカッターを使用して鍵周りを切り抜き、
難なく部屋の中へ侵入した。
――すでにみことは就寝しており、部屋は静寂に包まれていた。
みことが宿泊している部屋には、リンとろあんも一緒に泊まっており、
リンもろあんも昼間の疲労のため熟睡している。
「潜入成功~!ん?ベッドが二つある?どっちがみ~ちゃんかな?」
めいあに続いてまいあも部屋に潜入してきた。
「こ……これは?相部屋かしら?ま!まさか!殿方ではありませんわよね!」
めいあが先に片方のベッドに近寄って寝顔を確認すると、
そこにはアニメの世界から飛び出てきたかのような、
超絶美少女の寝顔があった。
あまりの衝撃に、めいあは時が止まったように固まってしまう。
「ッ!!!……な、な……なんで?なんで!天使がここにいるの!」
ささやき声で驚くも、めいあの驚きにまいあも反応してしまう。
「めい!声が大きいですわよ!何をそんなに驚いて……
ま、まさか殿方では……」
まいあは動揺するも、近づいて顔を確認すると、
めいあ同様に一瞬、時が止まる感覚を覚えた。
「ッ!!!……な、な……なぜ?なぜ天使がここにいらっしゃるの!」
まいあの声も若干大きくなってしまう。
「しーッ!!!まいちゃんも声が大きいよ!
……で、でもでも、……ッ!もしかして、
この子が前にみ~ちゃんが言ってた子なんじゃないの!?」
「あ、ありえますわね。……彩音リンといったかしら。
そ、それにしても……なんて可愛らしいのかしら。
みこが気にかけてしまうのもわかりますわね」
「う~めいちゃん、このままこの子も一緒に連れ去りたいですわ~」
リンの寝顔に夢中になり、離れようとしないめいあ。
「めい!それ以上はおよしなさい。早くみこを確認しますわよ」
「も……もうちょっとだけ!拝ませて~」
呆れるまいあは、もう一つのベッドを確認しに行く。
「まったく、めいは肝心なことをすぐに忘れるんですから。
……で?こちらがみこかしら?」
まいあはみことが寝ていると思われるベッドに近づき、顔を確認した。
「……あぁ、みこ。間違いありません。わたくしの可愛いみこですわね。
“お父様の策略”で、こんなところに放り込まれるなんて……。
大丈夫。今、わたくしが救って差し上げますわ」
めいあはリンの寝顔に夢中になっており、
まいあはみことの寝顔に夢中になってしまっていた。
――その時だった!
部屋のドアがいきなり開き、一人の女性が部屋の中に入って来るや、
冷静に状況を確認し始めた。
めいあとまいあは、呆気に取られ、初動が遅れてしまう。
圧倒的な威圧感を醸し出し、にらみを利かせたその眼は、
間違いなく“狩る側”のそれであった。
「誘いこまれたことも気づかずに、内輪話とは恐れ入る。
……ん?何だ、ただの素人のガキか。
――東雲建設のセキュリティをなめるな」
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次回――「狩りの流儀」
毎週火曜日19時更新。




