表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百ニャン一首 ―まこと継ぎし猫たち―  作者: くろのぼっち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/31

第二章 第二話:めいあとまいあ

彩音家からの帰宅途中、流れゆく街並みを眺めながら、

みことは一人泣いていた。


――悔し涙であった。


(わたくしとしたことが……あのばあやの凍てつくような気迫に、

ひるんでしまいました。

そして何も言い返せないとは……。

わたくしの、リンに対する気持ちはその程度ですの?

お父様に、放った啖呵は嘘だったんですの?

……自分のふがいなさに、辟易いたしますわ……)


繰り返し押し寄せる“自己嫌悪”に、

今は耐え忍ぶことしかできない、みことであった。

葵生家に到着したみことは、未だ涙を滲ませ目を赤くしている。

正面玄関より邸宅に入ろうとしたその時――。


「みーちゃん!!!」どさッ……。

「みこーーー!!!」どさッ……。


涙を拭っていたため視界がままならず、

いきなり抱き着かれたが、“いつもの”匂いと感触で理解した。


「姉さま……」


姉二人の腕に包まれた瞬間、なじみのあるかぐわしさに、

張りつめていたものが崩れそうになり、ふたたび視界がにじみ出す。

――あの冷たい気配が、まだ体のどこかに残っていた。

咽びそうになるのを必死に堪えるみことの姿を前に、

黙っていられるような姉たちではない。


「大丈夫よ!みーちゃん!めいちゃんが仇を取ってきてあげるから!

まいちゃん!葵生家の誇りにかけて、叩き潰しに参りますわよッ!」


「了解よ!めい!“わたくしの”可愛いみこに、

こんな仕打ちをするなんて!絶対に許せませんわ!」


「おのれーー!彩音家ッ!!!」めいあ

「おのれーー!彩音家ッ!!!」まいあ


――葵生家三姉妹の長女“葵生めいあ”と、次女の“葵生まいあ”二人は双子である。

さすが、息がぴったりあう。


「えッ?え?……ちょ、ちょっと!何か誤解を……」


みことは正気に戻り、姉二人を抑制しようとするが……。


「いいのよ……みーちゃん、こんなに憔悴して……辛かったね……」


そう言うと、めいあは何度もみことを抱きしめた。


「めい!めいだけずるいですわ!わたくしも、みこを抱きしめさせて!」


そう言うと、まいあは何度もみことを抱きしめた。 

みことは姉二人にされるがまま揺さぶられ、放心状態に……。


「さあ!まいちゃん!敵地へ乗り込みますわよ!

爺や!爺や~!出陣いたしますわ!」


「ふふふ……滾りますわね!めい!

久々に本気を出させてもらいます。

二人合わせての“必殺・合体薙刀術!”ぶちかまして差し上げますわ!

みこ!心配しないで部屋で休んでなさい!」


「いざッ!!!参らん!!!」めいあ

「いざッ!!!参らん!!!」まいあ


二人の絶唱に、冷静さを取り戻したみことは、姉二人の姿を見返すと、

二人とも袴道着にたすき掛け、頭には“天誅”と書かれた白ハチマキを巻いており、

本気中の本気の決戦支度に、みことは震え上がる。


「すとーーッぷ!!!!」


姉二人の前に走り込み、二人を行かせまいと、

両腕を激しく振り、全身で止めにかかるみこと。


「ぜぇぜぇ……で・す・か・らー!!!違いますってばーッ!!!

これはわたくしが勝手にやったことです!

彩音家は何も悪くありませんからー!!!」


姉二人はお互い見つめ合い、首を傾げた。


「ねぇ……めい?あなた仰いましたわよねぇ?

みこが学園で彩音家に虐げられていると……」


まいあの顔が段々と引きつり始め、不穏な雰囲気に変わっていく。

めいあの顔が段々と引きつり始め、焦ったように目が泳ぐ。


「えッ?……ま、待って~落ち着いて~まいちゃん……深呼吸、深呼吸よ!」


「……落ち着くのは、めいの方ではないかしら?」キッ!


「だ、だって~、み、み~ちゃんが昨日の夜、

あんな時間にお父様の書斎を訪ねて……」


「で?」


まいあは、腕組みをしながらめいあを睨みつける。

その視線に耐え切れず、めいあは完全に挙動不審に陥る。


「ん~何を話してたかは、聞き取れませんでしたけど……

み~ちゃんがあまりに思い詰めたお顔をしてたし~、

今日は彩音家に寄るって爺やが言ってたから……

……めいちゃん、勘違いしちゃった!……てへっ♡」


満面の笑みで舌を出して胡麻化そうとするめいあ。

冷徹な笑みで仁王立ちし、威圧しているまいあ。


「つまりこれは……みこが彩音家に虐げられているのではと、

単にめいが勘違いをした。

そして……あろうことか大騒ぎして、“わ・た・く・し”まで巻き込んだ……

ということでよろしいですわね……天誅ッーー!!!」ばこッ!


まいあの垂直チョップが、めいあの頭を直撃した……。


「ぎゃ~!み、み~ちゃ~ん!まいちゃんが痛いことした~。

めいちゃん、お姉ちゃんですのに~」


発狂するめいあは、みことに抱き着き癒しを求める。

――だが、いつもであれば二人を軽くあしらうみことなのだが、

今は自己嫌悪に陥っており、自分の責任であると思い込んでいるので、

めいあをやさしく受け止める。


「みこ……」

「み~ちゃん?」


定番の返しがないことで、

姉二人はみことが“本気”で何かに悩んでいることを察知し、

二人とも表情が変わる。


「みこ……お話しなさい。葵生家の娘たるもの、

そのような様子を見て黙ってはいられません」


「そうよ~み~ちゃん。めいちゃんがちゃんと聞いてあげるからね!」


みことは、二人の姉が親身になって心配してくれている様を見て、

幼き頃より、常にかばってくれている温もりを思い出していた。


(あぁ……いつもそうやって、わたくしの身を案じてくれている。

何かあればすぐに駆け付けて来てくれて、やさしく励ましてくださる。

――幼い頃から、二人はいつもこうだった。)


葵生めいあ 19才 大学一年生

葵生家長女で、幼い言動とは裏腹に、

学校の成績に関しては、天才という評価を受け続けてきた。

しかし、天才ゆえの“ぶっ飛んだ”性格で、いつも妹二人にたしなめられている。


葵生まいあ 19才 大学一年生

葵生家次女で、自他ともに認めるTHEお嬢様。

常に誇り高くあらんとする姿勢。

己の立場に驕らず、公平公正を心掛けている。

めいあとは違い努力家の秀才。


姉二人のみことへの感情(愛情)は、

度が過ぎている傾向が「多々」あり、

……つまり拗らせているのだ。

特に長女のめいあが溺愛しており、

将来はみことと一緒に暮らすと、宣言までしている始末。


「み~ちゃんは、めいちゃんが養ってあげるんだからね♪」が口癖。


次女のまいあは、あまり表には出さないツンデレである。


「葵生家たるもの、誇り高くありなさい」が口癖だが、

実のところ、「み、みこはわたくしが傍に付いててあげませんと……」


と言って、しょっちゅうみことのプライベートに入り込んでくる、

隠れ寂しがり屋さん。


姉二人の拗らせ具合のベクトルは真逆であるゆえ、

みことの預かり知らぬところで、しょっちゅう衝突を繰り返しており、

毎度、あの手この手でみことの気を引こうと計画している、

ウザい……否、面倒見の良いお姉さまたちなのであった。


みことは、そんな姉二人に見守られ育ってきた。

二人が“双子”ということもあり、自分が一人孤立していると、

過去には卑屈になる感情を抱いた時もあった。

しかし、あらゆる場面で息の合った行動や言動は、

羨ましく、微笑ましく思っており、

常に気にかけ、助け、導いてくれる二人がいたからこそ、

真っすぐに成長できたことを自負し感謝している。


(頼ってばかりで本当に不甲斐ないですが……

隠すことなど、できるはずありません……)


「姉さま……わかりました。お話しいたしますわ……」


みことがそう言うと、三人で話せる場所に移動した――

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


二人の姉に、包み隠さず打ち明けるみこと。

溺愛する妹の吐露に、姉のとった行動とは……。


次回――「静かなる胎動」


毎週火曜日:19時に投稿中。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ