かつて大魔導士だった高校生
「なあ、もし俺が、何度も人生やり直してるって言ったらどう思う?」
駅前のファーストフード店でクラスメートと一緒にハンバーガーのセットをそれぞれ食べながら、たまに会話をかわし、スマホをいじる。
定期テスト2日目を終えたところの金曜日、仲の良い友人とファーストフード店で息抜きをして帰宅したら、また月曜日のテストに備えて勉強が待っている。
よくある高校生の日常のひとコマだったはずなのだが、サトシの突然の、彼らしからぬ奇妙な問いかけにショウタはスマホをいじる手を止めて一瞬眉をひそめる。
「なんだ?現実逃避か?まあ、月曜日の世界史のテストは憂鬱だよなー、試験範囲広すぎだっつの」
目の前に座る友人の奇妙な発言の真意を測りかねて、ショウタはおどけて言ってみた。
「時系列だけはまっすぐかと思っていたら、それすらぐちゃぐちゃだってことに気づいたよ」
サトシはおかまいなしに話を続ける。
「最初は大魔導士だったんだ。自分で『大』とか付けると自信満々かって笑っちゃうけど、ホントすげー魔導士だったんだ。今風に言うと、かなりチャラい奴だったんだけどね。最終的に、その世界を創った神様に盾突いて時間と空間をさまよい続けながら転生を繰り返してるんだ」
「なんかそれ、ライトノベルみたいだな」
サトシは、うんうんと頷く。
「だろ?さっきさ、注文カウンターのところで俺が思わず声かけた子、ほかの世界で会ったことがあるんだ」
「えぇっ!?」
ややこしくなってきたぞ、と思いながらショウタはとりあえず驚いてみた。
「いきなりお前が見知らぬ女子高生をナンパしてんのかと思って驚いたよ。え?異世界の知り合い?どゆこと?」
「あの子、たぶん来年あたりかな、異世界召喚されるんだよ。俺はその世界ではまだ5歳で、魔法の使い方を知らないあの子に、かつて魔導士だった頃の記憶を思い出しながら教えてあげるんだ。遊んでいるフリをしてね」
「ふーん、それで?」
「僕はとある国の第二王子なんだけど、馬鹿な母親のせいでその国を追われて母親の故郷に帰されて、その1年後には事故を装って馬車が崖から転落してね、母と一緒に殺されてしまうんだ。たった6年の短い人生だったなぁ」
ショウタはイスの背もたれに背中を預け、後頭部で手を組んでしばらく考えていたが、姿勢を戻すと笑顔で言った。
「それを信じる、信じないとかじゃなく、おまえ今日早く寝たほうがよくね?」
サトシは、ふふっと笑った。
「そうだね、会えてうれしかった。あのとき言えないままお別れになっちゃったからね。興奮してなかなか寝付けないかも」
「ねー、ありさ、さっきいきなり声かけてきたあの男の子知り合い?」
「ううん、知らない人だと思う」
「なんかヘンなこと言ってたけど、新手のナンパか!?」
―――どうぞ、お幸せに。
そう囁かれた気がする。
「何だったんだろうねー?」
鈴木ありさは首をかしげながら笑った。
fin.
いつも読んでいただいてありがとうございます。
新連載を開始しました!
「未来視の巫女と双子の王子」
https://ncode.syosetu.com/n8234gi/
更新はゆっくりになるかと思います。今回は異世界召喚・異世界転生ものではなく、普通の?ファンタジーです。
どうぞよろしくお願いします。




