決着2
ハリスとミランダをそれぞれ縄で縛り、王宮へと連行する手配と、その配下のケガを負った私兵たちの手当と処分の算段をつけ、改めてこの惨状をぐるっと見渡した王太子は
「よほど魔女を怒らせたようだな」
と呆れた声でつぶやいて苦笑した。
フィリスの傍らに戻ると、
「ここまで案内してもらったことに感謝する」
と言った後、ランドールにしては珍しく、少し言いにくそうに目を伏せて
「一旦、牢屋に入ってもらうことになる」
と告げた。
しかしフィリスは、いつものようにアゴをツンと上げ、思わず誰もが見惚れてしまうような晴れやかな笑顔で
「覚悟の上ですわ」
と言い切ったのだった。
フィリスの後ろに控えていた騎士によって、およそ咎人とは思えない丁重さでフィリスが連行される様子を見送った後、アリサが入っていったという荷馬車に目を向けた。
王宮からこちらへ向かう直前に、早駆けの伝令によりもたらされた「エリアス殿下が鉱山の崩落事故に巻き込まれ安否不明」という悪い知らせを、アリサにどう伝えるべきか…と考えたそのとき、その荷台から青白い光が漏れた。
魔法を使っているのか?と不審に思い、その荷馬車へ駆け寄って中をのぞいた王太子の目が驚愕で見開かれる。
そこには、返り血かそれとも己の血か、血染めの服をまとう生気のない青白い顔をして倒れている弟と、そのぐったりと動かない弟の名を何度も呼びながら必死に魔法で治療を施す魔女がいたのだった――。
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「過保護ねえ。あの子たちのためにわざわざ魔法陣を出してあげるだなんて。いよいよ耄碌したのかしら?」
グラスを傾けながら、小麦色の肌を惜しげもなく露出多めにさらす美しい豊穣の女神を一瞥したのは海神。
「美味い酒が飲めなくなって困るのは、お前さんのほうじゃろ?」
「―――!あら、大変。もったいぶってないで、もっとじゃんじゃん助けなさいな!」
『美味い酒』と聞くや否や態度を急変させた女神に苦笑しつつ、海神は、かつて「生まれ変わったら今度こそこの国をいい方向へと導きたい。次こそは彼女を幸せにしたい」と語った男と、その傍らに寄り添う女の顔を思い出していた。
同情からではなく、単純におもしろそうだと思って気まぐれに手助けをして、ここまで見守ってきた。
「あの二人との約束が果たせるといいのう。もうひと踏ん張りじゃが、あとは王子にどこまでの執念があるかにかかっておるかの」
「あら、それなら大丈夫よ。あの子、いつもかっこつけてるけど本当は相当執念深いし嫉妬深いわよ」
豊穣の女神と海神の饗宴は、今日もこの世界のどこかで行われているにちがいない―。
短めですが、切りのいいところで今日はここまでにしておきます。
いつも読んでくださってありがとうございます。




