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異世界召喚された直後に求婚されました  作者: 時継
第二部

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大豆畑

翌日は、エリオットと一緒に大豆畑の視察に行くことになった。


王太子殿下が募っているご意見箱の中に「肥料を使っても土地がどんどん痩せてきて大豆の収穫量が落ちてきている。どうにかならないか」という要望書があり、近いうちに視察に行くつもりだったらしい。


そこへわたしが、若い大豆(枝豆)を分けてもらうことはできないかという話をしたから、じゃあ一緒に行こうということになり、エリオットが朝イチでランドールに話をつけに行ってくれたのだ。


「早蒔きの大豆はもう実をつけている頃合いらしいから、今日その場でエダマメをもらえるかもしれないよ」

「うん。それを期待して麻袋持ってきたから」


うふふと笑うと、目じりが少しヒリリとした。

昨日、泣きすぎたせいだ。


魔女の森から帰宅するころには涙は止まっていたものの、わたしの顔は泣きはらしたことがはっきりわかる状態で、出迎えたレイラが一瞬にして怒りの形相にかわったのを、エリオットと二人で「違うから!」と弁明して誤解を解いた。

夜、わたしたちがひとつのベッドで一緒に就寝したのを確認して、レイラも安心したらしい。


いや、それはそれで、別の意味で絶対に勘違いされていそうだけれど。

わたしはエリオットの抱き枕になっているだけだから!

まだ清いままです!

と、わざわざ言うのもどうかと思うし…。


視線を感じて馬車の正面に座るエリオットに目を移すと、エリオットが笑いをこらえていた。

「アリィは表情がコロコロかわって飽きないなぁ」

エリオットの笑顔に、こっちが溶かされそうになる。


ほんとはわたしだって、あなたの綺麗な顔を穴が開くほどじーっと見つめていたいのよ。

だけどね、ほら、見つめ返されるともう心臓がヤバイの。

顔が火照るのを感じながらうつむくと

「すぐ照れるところもかわいい」

と言われて、余計に心拍数が上がってしまうわたしだった。


現地に到着して馬車を降りた。

目の前には広い大豆畑が広がっていて、この領地を所有しているヨナハン伯爵に出迎えられた。

「エリアス殿下、救世主様、本日はご足労いただき恐縮です」

挨拶をすませ、この大豆畑を管理している夫婦も紹介された。

エリオットと伯爵は、さっそくその場で資料を見ながら現状を確認していく。


お仕事をしているエリオットを見るのはこれが初めてかも。

いつものデレた甘々な表情ではなく、キリリと引き締まったエリオットの横顔を見ると、かっこよすぎて思わずにやけそうになる。


いかんいかん。

枝豆の生育状況を確認させてもらおう。


畑の一番端の畝の横にしゃがんで、青いさやを指ですくって持ち上げる。

見た目は、わたしの知ってる枝豆と同じように見える。

痩せているさやもあるけど、枝豆として食べるにはまあこれぐらい成長していれば合格かな?

と考えながら、その隣の株のさやを見たり、隣の畝を見たりと夢中になっているところでエリオットに呼ばれた。


立ち上がって隣に戻ると

「アリィ、エダマメはどんなかんじ?」と聞かれたから

「はい、もう食べられそうです」とワクワクしながら答えると

エリオットが顔を伏せて、明らかに笑いをこらえている。


食い気全開のわたしがおかしくてエリオットが思わず笑いそうになったのだということにはまったく気づかず、あれ?お仕事モードだから、タメ口を使わずに話したんだけど、何かヘンだった?とピンと来なかったわたしだった。


「あの…食べるとは?」

戸惑い気味のヨナハン伯爵にエリオットがエダマメについて説明してくれている。

その間にわたしは馬車に戻り、麻袋を持ってきた。

持って帰る気満々よ。


ヨナハン伯爵の指示で、夫婦も戸惑いながらわたしが触っていた周囲の5株を抜いて土を落とし、麻袋に入れてくれた。

「3日後にもう一度来ます。そのときに、この1畝分を買い取らせていただくことになるかもしれません」

エリオットがヨナハン伯爵と金額の交渉をしている。


1畝分!

そんなに買い取ってどうするんだ。枝豆パーティーでも開催する気?

楽しそうだ。


金額に折り合いがつき、エリオットが改めて畑を見渡す。

そして、わたしの横にやって来た。

「アリィ、どう思う?肥料を使っても土壌改良剤を使っても、どうも芳しくないらしい」

「わたしは農業のことはよくわからないけど、早い話が土に元気がないってことなんでしょう?」

「そうだね」


この国は身勝手な魔女弾圧の制裁で神様たちから見放されてしまったのだ。

だったらもう一度神頼みをして祝福をもらうしかないよね。

そのために、わたしを連れてきたんでしょう?と思いながら無言でエリオットを見上げると「ご明察」と言いたげな微笑みを返された。


わたしは祝福の石(アクアマリン)を握りしめて

「大地の精霊と豊穣の女神様のご加護がありますように」と祈った。

ついでに

「海神様は豊穣の女神さまと飲み友達なんでしょう?もう許してあげてってお願いしてくださいね」

と心の中で祈っておいた。


祈り終えて目を開けても、効果があったのかどうかイマイチわからない。

海を鎮めたときは、わかりやすかったんだけどなー。


「豊穣の女神さまはお酒が大好きなので、これからはちょっと上等なお酒をお供えしたり、種まき前に畑にお酒をまくといいですよ」

と言い添えておいた。



帰りの馬車の中で

「アリィは、豊穣の女神様とも知り合いなのかい?お酒が好きだって言ってたけど」

とエリオットに聞かれた。


「んーと、海神様がね、豊穣の女神様は酒豪だって言ってたから」


300年前、王宮に突如として姿を現した海神様が予言をのこした際に、その圧倒的な威圧感を前にして国王をはじめ誰一人としてまともに立つことも話すこともできなかったと言い伝えられていなかったか。

エリオットはそれを思い出し、アリサがずいぶんと気さくに海神様と会話をかわしたように話すのを驚くやら呆れるやら、もう笑うしかなかった。


枝豆の入った麻袋を抱えてウキウキしているわたしは、そんなエリオットの胸中を知らず、帰ったらさっそく枝豆を塩ゆでして食べることしか考えていなかった。



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