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異世界召喚された直後に求婚されました  作者: 時継
第二部

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エビ料理

「いいお天気でよかったね」

わたしは馬車に揺られてご機嫌だ。

横に座るエリオットが、そうだねと言って微笑む。


エリオットとレイラの言いつけを守って昨日一日どこにも出かけずに家で過ごしたおかげで、今日はめでたく砂浜へのお出かけとなった。


今日のお弁当は、エビカツサンド。

レイラに頼んで昨日のうちに市場でエビを買ってきてもらった。

最初「エビ」と言っても通じなくて、絵に描いて「こんなやつ」と説明したら、レイラが

「まさか、あの虫みたいな気味の悪いやつですか!?」

と引いているのがわかった。


遠洋漁業の網にかかるから一応持ち帰って来るものの、この国の人は甲殻類を食べる習慣がないらしく、市場で売られていても誰も見向きもしないんだとか。

誰も食べないということはまさか、近海にエビやカニがわんさか生息しているんじゃないだろうか!?

簡単な罠を仕掛けておけば、いっぱい捕れるかもしれない。


もしも売られていたらエビを買い占めてきて!とお願いしたところ、レイラが桶いっぱいのたくさんのエビを、顔を背けながら持ち帰ってくれた。

魚市場の隅っこに置かれていたエビを見つけて「ほしい」と言うと、店主が

「どうせ売れずに肥料になるだけだから」

と言って、タダ同然で譲ってくれたらしい。

レイラ、グッジョブ。


さっそくそのエビをニコラスと二人で水洗いして、

「頭をね、もぎ取って、次に殻をむいて、大きなエビはしっぽを取らずに残しておいて。今夜のエビフライ用ね。あと、背わたを…」

ニコラスに説明しながらわたしが素手でガシガシとエビの下処理をしている様子を少し離れた位置で見ていたレイラだったが、ついに耐えきれなくなったのかその場から立ち去る足音が聞こえた。


エリオットが入れ違いにやってきて

「レイラが青ざめた顔で走っていったけど何が……うわっ、それは何の作業だ?」

と、エリオットにまで引かれてしまった。


エリオットにエビのむき身を見せて

「火を通すと丸まって、この身がオレンジと白のしましまになるのよ」

と説明すると、エリオットがあごに手を当てて記憶をたどるような仕草を見せて

「そういえば留学先で食べたことがある気がするなあ。サラダと一緒に。あれはもともと、こんな姿だったのか。久しぶりにあれを食べられるんだね」

と興味津々で、腕まくりをして下処理を手伝ってくれた。

さすがエリオットは諸外国を回って異文化にたくさん触れているだけあって、柔軟な人だ。


「王子様が厨房でお料理のお手伝いなんてしていいの?」

エリオットとニコラスを交互に見ながら聞くと、いつも歯切れのいいニコラスがもにょもにょし始めて、ああダメなんだなと悟ったけれど、当のエリオットが

「このことはセバスチャンには内緒だよ」と言いいながら涼しい顔で作業を続けるから、そのまま最後まで手伝ってもらった。


ニコラスにエビフライの説明をしたら、そこからは手慣れた作業だから大丈夫ということで、エビフライ作りはニコラスに任せることにした。

わたしは取り除いた頭、足、殻で出汁をとるために、水・白葡萄酒と一緒に鍋に入れて火にかける。

アクをとりながら煮詰めて、布で漉したらエビ出汁の完成。


出汁の半分はスープとして、後からハーブや塩を入れてニコラスに味の調整をしてもらう。

残り半分は、エビピラフ用のご飯を炊く時の水に混ぜる予定。



こうして昨晩はみんなでエビフライとエビのスープを食べた。

昨日多めに作っておいたエビフライとタルタルソース、千切りにしたキャベツをパンにはさんでエビカツサンドを作り、今日のお弁当にした。


みんなの評価も上々で、あれだけエビを気味悪がっていたレイラも

「身がプリプリしていて淡白で、とても美味しいです」

と言ってくれてホッとした。


大量のエビがあっという間にわたしたちの胃袋に消えていく。

今夜は念願のエビピラフの予定。

楽しみ過ぎる。



エビと砂浜で上機嫌なわたしの膝の上には、木桶が乗っている。

いまは空っぽだが、帰り道はこの中に海藻がいっぱい入っている予定だ。

それも楽しみで、桶を抱えて馬車に揺られながらすでにわたしのテンションはマックスだった。



*****


馬車が到着して、厨房にいたアリサに「行くよ」と声をかけると、アリサは昼食を入れたカゴとともになぜか桶を持っていた。


砂浜に打ち上げられたカイソウを持って帰りたいのだという。

「カイソウ」ってなんだ?


馬車に乗って海へ向かっている最中もアリサは終始ご機嫌で、本人は気づいていないようだが時折「ワッカッメ~ コッンッブ~」という意味不明な歌詞の、おそらく即興の歌?まで出る始末。


僕はそんなアリサの隣に座り、彼女が大事そうに抱えている、いまはまだ空の桶に視線を落とした。

その桶になりたい、とか言ったら変態だと思われるだろうか。


興奮しすぎてまた倒れるんじゃないかとヒヤヒヤしているこちらの心配をよそに

「いいお天気でよかったね」

とこちらを振り返る表情は、とびきりの笑顔だ。


ああ、この笑顔は初デートのヤキイモのときと同じだな。

『あの嬢ちゃんは色気より食い気』

ニコラスの言葉とともに、あのときの記憶がよみがえる。


僕はイモに続いて、カイソウとやらにも負けるのだな。

どんどん順位が下がっていくじゃないか!


いたたまれなくなって、思わずアリサを抱き寄せた。

するとアリサはふふっと笑って

「エリオットってほんと、甘えん坊さんね」

と言いながらその頭を僕の肩に預けたのだった。





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