〈9〉
本日二回目の投稿です。
「…どうしてこうなった」
目の前の赤髪の男は大剣をこちらにかざし、様子をうかがっている。
いつの間にか周囲にはギャラリーが湧いており、僕には逃げることが許されないようだ。
「どうしたよさとし!!!俺は逃げも隠れもしない!かかって来い!!!!」
声量を考えることはできないのだろうか。煩い。菩薩を目指す穏やかな僕だが、流石に耐え切れない。
しかし、武器…あまつさえ戦う能力すらない僕には何も出来ない。誰か助けて。
数分前まで、僕はトマに学園を案内されていて、その中で見つけた庭園の青々とした芝生に横になり、静かな時を過ごしていた。
そこに現れたのが彼。ヤスリと名載った彼は、俺と戦え!!!と一方的に告げた後、猫の首でもを掴むような動作で僕を門の外に放り出した。
もちろんトマは必死に止めてくれたのだが、彼女のその小さな体では何もできず、僕も、彼の馬鹿力の前では流れに身を任せるしかできなかった。
「神殺しに見初められたなんて、お前強いんだろ?俺、お前と熱い戦いがしたいんだよ!!早く来い!」
嗚呼煩い。何だこの戦闘民族は。僕を巻き込むな。
「来ないんならこっちから行くぞ!!!!」
僕に一直線に向かってくる彼は力任せにその大剣を振り下ろす。
咄嗟に僕は両腕でガードの構えをとったが、あれ、これ腕落とされるんじゃね?
そう思った瞬間、僕の指から外れない、あの指輪が光を放った。
「うわっ!!!!なんだ!!」
慌てて離れるヤスリ。そして僕の手には、見覚えのある竹刀が握られていた。
「……は?」
雨の日も風の日も欠かさず毎日振るった竹刀。その感触は間違いなく僕のものだと主張していて、不思議と安心した。
いや、何故向こうのものが手元にあるのか、疑問を持つべきだろうか…?
「なんだそれは!!お前の獲物!?熱いな!!」
僕は断じて熱くない。暑苦しいのはお前だけだ。そんな呑気なことを考えられるのは一瞬。直ぐに頭を切り替え、向かい来る相手の攻撃を紙一重で受け流す。
勢いのついた大剣に触れたのにも関わらず、僕の竹刀はピンピンしている。強い子…っ!
続く攻撃を払い続けたが防戦一方ではつまらない。やり返したい気持ちはあるが、実戦経験のない僕が不用意に飛び出しても、無駄に怪我を負うだけだ。
周囲に目を配りすがれそうな相手を探す。その時、
ドッシャァァアアアアン!!!!
目の前の相手が吹っ飛んだ。
彼がいた場所には長身のその人、和佐様が不機嫌そうに佇んでいらっしゃいました。
「あ…、」
手につけていた黒いグローブを外しながら、彼は、近づいてくる。
「怪我はねえかよ?」
「かすり傷です…」
怯えたように答える僕に中に戻るように言うと、彼は、ギャラリーに散るように命じた。
僕の手の中にあった竹刀は、いつの間にか消えていた。
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カフェテリア内で和佐さんと向かい合う。威圧感がすごかったが、隣で自分の体よりも大きいケーキに目を輝かせているトマで緩和された。
「お前はやべえ奴に目えかけられてっからな、あんな奴はごろごろ湧いてくんだろ」
緑茶を啜りながら言う和佐さん。
返事をしようとした僕の代わりに、腹からは情けない音が響いた。
「あ、すいません。昼食べてなくて…」
「はあ!?………なんか好きなもん買ってこい」
黒い財布を無造作に投げた彼は、肘をつき、小さく息を吐いた。
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和洋中となんでも揃っていそうなメニュー表を前に僕が悩んでいると、肩の上に気配を感じた。
「いっぱいあって迷っちゃうよね!」
「うん。釜玉うどんととろろそばで迷ってる」
「私釜玉派〜!」
トマの言葉に乗っかり、釜玉うどんを注文した僕は、受け取りスペースへと向かう。
「あのね、さとしくんって指輪が武器なんだよね?ちょっと見せてほしいの!」
そう言うトマに手を差し出すと、手の甲に降り立ちしげしげと眺めはじめた。
「…見たことないなあ。一見ただの指輪だものね。竹刀が出てくるなんてありえないよ〜」
「そうなの?真野の剣だって、形が自在に変わるよね?」
トマは、こちらを見ると、目をぱちくりと瞬かせた。
「あれは特別だよ〜?カミサマで出来てるんだもん」
当然だ、とでも言うようなその物言いに、僕は眩暈がした。
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