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陶芸部の日常  作者: もち
三大義務
19/33

〈3〉



画面の中の真野は、いつの間にか双剣を手にし、俊敏にピエロを狩っていた。地中から飛び出したピエロの頭に飛び乗り、両サイドの敵に剣を振るう。すぐさま下のピエロにも攻撃を加える。その動きには全く無駄がないのが、素人目に見ても分かった。


不思議なことに鼻を削がれたピエロは、バラバラと砂のように崩れ落ちていく。

これにはなにか意味があるのだろうか。


僕が見ているこの中継では、チャンネルを変える毎に違う場所での戦いが映しだされるようになっていて、待機中の人達はこの映像を見て、自分が呼ばれた時のために備えるのだという。



『グォオォオオオオオオ!!!!!』



無意識のうちに、また彼の映るチャンネルをまわしていたようだ。

その男は体中に赤黒い火傷が見られるが、咆哮をあげ、止めようとする周りの声にも耳を傾けず、ただ取り囲むピエロに向かって炎を纏った拳を振るっていた。



なにが彼を突き動かすのだろうか。まるでアニメか何かの遠い出来事のように、僕はぼーっとそれを眺める。



『おっさぁぁぁん!!!!』



不意に真野が画面に現れ、向かい来る敵を倒しながら、その男に向かう。


二人の距離はだんだんと縮まり、間にはわずか3ピエロとなった。


互いに目の前のピエロを倒し、最後のピエロに同時に手をかける。



ズドオオオオオン!!!!



すさまじい衝撃音の後、画面の中にはピエロは一体もいなくなった。



『おっさん、私来たから…。無理しないで休んで。』



ゆらり。緊張の糸が解けたのか、男の体は崩れ落ちる。それを真野は静かに受け止める。


『……わ、りいな。おまえら…の、……休日……』



そう呟くと、彼の意識は途切れたようだ。



『救護班!!!!!急いで!おっさんをお願いします!』



真野は叫ぶと、再び残りの敵の元に急いだ。


そんな中、リビングの扉がゆっくりと開いた。


「ジャージさん?」


今日も変わらず不穏な空気をまとった彼は、僕の目の前の椅子に、テレビを遮るように座った。



「あ、あの…見えな…」


「単刀直入に聞く。真野は多分、いつまでたっても聞かないだろうからな。」


彼の伸びきった髪の隙間から、真剣な瞳が見えたような気がした。


「なんでしょうか…?」


「お前は何者で、どこから来た?こう言ったら、分かるだろ?」



途端に口の中が乾き、二の句も継げなかった。今まで誰にも聞かれなかったから、なんとなく気にしていなかったが、僕は通常ありえない、異世界のものなのだ。



「僕は、気づいたらここにいて…、多分、ここではない世界から来たのだと思います。」


「それは、どんな世界だ?」



「少なくとも、こんな戦いとは縁のない生活を送れる世界です」



考えこむようなジャージさん。異世界については、すんなり受け入れられたようだ。



「真野は、お前に希望を見出しているんだろう。」


「え?」



「鏡の魔女というマガイモノがいる。文献によると、奴は他の世界と空間を繋ぐことが出来るらしい。お前は、そいつに連れて来られたんだと俺は考えている。」



そんな魔女、目にした覚えがない。



「やつは、記憶を奪うとも言うからな。何も覚えてないかもしれないが」



「はい…。なにも分かりません。」



「俺らは、こんないつまで続くかも分からないような戦いばかりの世界しか知らないからな。平和な世界があるなら、それは希望だ。」


どうしてここにいるのが僕なのか本当に、よく分からない。


「魔女のゲートを使えば、こんな現実から逃げられるかもしれないし、お前が、俺達の戦いを終わらせてくれる救世主なのかもしれねえしな。」

 


「救世主は、ないと思います…」



ジャージさんの口が、微かに笑った。



「俺が賭けてえのは後者だ。」


「……へ?」



彼は立ち上がり、僕の顔を覗きこむ。

その時、初めてその瞳が見えた。



「戦い方なら教えてやる。武器が欲しいならくれてやる。お前は戦え。何の因果か、選ばれちまったんだからな。」


そう言うと踵を返してしまう。



その瞳は綺麗な紅い色をしていた。






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