〈2〉
先端に球体のついた柱が4つ、正方形の形で地に刺してある。その中を仄かに輝いている光があり、それは先程から大きくなっている。
「転移完了まで、5,4,3…」
転移及び情報部隊の中に緊張が走る。失敗したら、人類の勝利のための貴重な財産が失われるのだ。
光の一瞬の静止の後、辺りを眩い閃光が照らした。
誰もが目を瞑る中、一番に目を開いた部隊長は、簡易転移装置の中を確認する。
「真野、一茶、メリー、フード、槇原、小夜。同6名を無事確認。これより作戦を開始します。」
通信石で全部隊に通告すると、部下を事前の指示通りに動かす。
通信石を配布し終えたのを確認し、簡単に戦況等の最新状況を伝えにかかったその時、
「くふくふふふふ」
不気味な笑い声と共にメリーが武器を構え一撃。大きな音が鼓膜を揺らした。
「あそこに1体ピエロがこちらに向かっていらしてましたのよ私いても立ってもいられなくって」
「メリーさん。調子に乗り過ぎなんじゃないですか。今の音でピエロみんなこっちに来たらどうするんですか?」
フードが諫めるものの、メリーの耳には入らない。
「あら貴方怖いんですか大丈夫私すべてぶっ飛ばしますわ」
それでは御機嫌よう。そう言い優雅にスカートの裾を持ち一礼すると、すさまじい早さで、敵の元へと向うメリー。
「すいません、チームワークとかなくて。戦況報告等、済ませちゃってください。」
その真野の常識的な物言いに感動した部隊長は、手早く説明する。ここに到着するまでの報告との違いは、大怪我の中狂ったように戦い続ける玄龍を早く止めてほしいとのことだけだった。
「では、生徒部隊、行ってまいります」
「っかー、緊張するっすねー」
「さ…さささ小夜に…できるでしょうか…」
「案ずるな。拙者が何人たりとも死なせはせぬよ」
「……。」
足早に戦地へと向かう子どもたちに、その場の全員が敬礼を送った。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
冷静なふりをして、何ともないふりをして、私はおっさんが心配だった。
早く早く早く。流行る気持ちを抑え、戦地へと急ぐ。
何か焼けるような臭いや、血なまぐささ、そんなものに構っている暇はなかった。
と、目の前からゆらりゆらりと近づく今回の敵、ピエロが目に入る。
迅速に、かつ丁寧に相手の鼻から上を削ぎ落とすと、私は走りだした。
「単純計算で、一人あたり五十ピエロね。無理はしないで、ダメなら逃げて。みんな、絶対に死なないで」
四人の顔が引き締まるのを確認し、二人目のピエロに手をかける。
闘いが始まった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
珍しく焦るように先を行く真野を見て、マッキーこと槇原は、銃を握る手に力を込めた。
ついに始まってしまった。隣を震えながら走っている器用な小夜を見ていると、自分は冷静なんだと思えてくるが、実際は違う。…戦場では、一瞬の気の緩みが死を招く…これは誰の言葉だったか?
そんなことを考えていると、地中から突然ピエロが。
「ちっ、…んなところからでてくんなっすよ!!」
咄嗟に放った弾は見事に赤鼻に命中。事なきを得たようだ。
「きゃぁぁぁぁ!」
後方で悲鳴が聞こえ、振り返る。するといつの間にか小夜は8体のピエロに囲まれていた。
「ひぃぃ!!こないでくださいぃ…。」
情けない声とは裏腹に、その手から放たれた手裏剣やクナイはすべて鼻に命中。本人の死角にいるピエロにさえ当てているのが恐ろしいところだ。
さらに地中から、彼女の足を狙うピエロを見つけ、槇原はさらりと対処する。
「はわわわ!!す、すみませんです!!」
「いや、無事で何よりっすよー、っと!!」
更に前方からお手玉…いや、手榴弾を投げてきたピエロを、彼は仕留める。
「先輩たち、相性良さそうなんでここら一帯任せてもいいですか?私達は姉の援護に向かいます」
「は……はぃぃ!!小夜、全力を付して戦わせていただきます…!!」
「一茶先輩とふーちゃんも、気をつけてっすよー」
挨拶を済ませると先を行く二人は、スピードを上げた。それでもなお、ほんの少しだけ前に飛びだした真野やメリーの姿を捉えることはできなかった。




