〈a〉
久しぶりの月の姿に浮かれ、月見酒と洒落こむ事にした。四方も誘ってみたんだが、寝言は寝て言いなさいよと、一蹴されてしまった。
それに、今夜は嫌な予感がするとも言ってたな。こんな黒紫色の濃霧の中じゃ、しないほうがおかしいがな。
プシュと缶ビールのプルタブを上げる。今夜はまだ2本目だ。
厚い雲の中に何故か月だけがぽっかりと浮かんでいる。なんとなく物悲しさを感じ、ビールを勢い良く流し込む。
そろそろ偵察部隊からの連絡がある頃か。そう思ったすぐ後、左手首につけた通信石から声がする。
『こちら偵察部隊長石田。敵の姿を捉えた。女だ。4メートル程の身長に、全身に炎を纏っている』
報告の声の背後に、駿馬の駆ける音や、交戦している先遣隊の声が聞こえる。
『五大魔女が1人、炎の魔女と思われる。現在、第一偵察部隊及び先遣隊交戦中。至急、応援を求める。座標はー…』
缶の残りを飲み干すと、止めてあるバイクに跨る。無理やり括りつけたクーラーボックスに飲む予定だったビールやつまみをねじ込み、バイクに収納されてある装備を確認する。
「…せっかくの休日、休ませてやりてえしな」
1人笑うと、戦地へとバイクを走らせた。
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「ぐっ…。隊長…っ、限界です!!第3班壊滅!もう残るは我が班だけです!!!応援はまだなんですか!?」
「ちっ…、そろそろ来るはずだ!持ちこたえんぞ!うちの班は…そんな軟な班かよ!?」
そうは言うものの、先遣隊が敗れた今、偵察部隊でどう戦えというのだろう。そんな諦めの考えが戦地にいる者全員の心によぎった時、あの特徴的なバイクの音が聞こえる。
ガロロロロッ!!!!
キキキィーーッ!!!!ズガガーーッ!!!!
猛スピードでやってきて、すんでのところで急ブレーキをかけ、危うく転倒しそうになる。そんな考えなしの姿だが、今は何よりも望んだ姿。
「遅いぞ玄龍。何やってんだよアホ」
「うるせえなあ、早かっただろうが。おい、今、動ける野郎は全員俺の後ろに下がっとけ。邪魔だ。」
その横暴な姿に、戦闘中ながらも笑いが溢れる。
「なんなんだよ偉そうに…。」
失笑しながら部下に支持を出す石田は、頼もしい同期の目を見つめる。
「死ぬなよ、玄龍」
「は、お前じゃねえんだから死ぬわけねえだろ」
殺気を放つ魔女が玄龍に向かってその手を振り下ろす。そこから生み出された真っ赤な巨大な火球は、真っ直ぐに彼に向かう。
それに合わせて片手で軽々と振られた彼の大剣は、難なく火球を打ち返す。
「次は俺の番か?」
一気に相手の間合いに踏み込むと、その剣を振り上げる。狙ったのは右腕。小手調べの一撃。
「ギイイオオ」
剣先が目標に届く前に敵の左手が玄龍を捉えようと藻掻く。さらりと避けると、ついでに一振りし、初めの位置まで引く。
「多少雑魚とは違うようだな…」
それを感じたのは敵も同じらしく、何やら思案している様子が見受けられる。
「だが」
剣先を敵に向けると、玄龍は不敵な笑みを浮かぺる。その周りにはいつの間にか一陣の風が吹き荒れた。
「俺の敵ではない!!!!」
叫びと共に生み出された衝撃波は、敵の脳天を捉えた。
〈ご挨拶〉
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