〈5〉
真野に続き黒塗りのエレベーターに乗る。
エレベーターはあるんだな。見慣れたものを見つけると、少し安心する。
僕らを乗せたエレベーターはものの数秒でポーンという音を鳴らし停止した。
ドアが開いた先は薄暗く、ポツポツと設置された蠟燭の光に照らされて、剥き出しの岩肌が見えた。どことなく、以前訪れたことのある鍾乳洞に似ている。
「足元、滑るから気をつけてね。左右に手すりあるから怖かったら掴んで」
真野はいつの間にか、何処から手に入れたのか、蝋燭の取り付けられた銀色の燭台を手にして、慣れた足取りで先を行く。
僕は頼もしいその背中を見つめながら、がっつりと手すりに掴まりながら歩いた。
ここ、段差あるから。天井低くなるから頭気をつけて。といった真野の指示に従いながら歩くこと15分ほどだろうか。目の前の壁に黒いカーテンが引かれているのがぼんやり見えた。真野がぺらりとそれをめくり、僕に中を見せると、そこには人ひとり通れるほどの、壁を繰り抜いたような穴があった。真野が明かりで穴の上を照らすと『武器課』の薄汚れたプレートが。
「ここから先は、一人ずつしか入れない決まりなんだ。ここで待ってるから、行っておいで」
「……安全、だよね?」
「大丈夫だよ」
暗さで真野の表情はわからなかったが、またくすりと笑われた気がした。
「じゃあ、行ってきます…」
僕はカーテンに手をかけ、ゆっくりと穴をくぐった。
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穴をくぐり、細い道を抜けると、広い空間に出た。
「すごい…。」
その部屋の壁一面に、青白い光が満ちていた。まるで夜空の星の中に足を踏み入れたようだ。思わず感嘆したが、部屋の中央の異様なものに目を奪われる。
「ようこそいらっしゃいました。救世主よ…」
はっと顔を上げると、いつからそこにいたのか、部屋の一番奥に少女が佇んでいた。暗闇の中に煌めく修道女のような真っ白な衣装が目を惹いた。
「あ、えっと…武器を…」
「分かっています。言葉はいりません。貴方には今、審判が下されるのです…。」
え、審判?真野、安全だって言ったよね?大丈夫だよね…。
「さあ、今こそ!この祝福の蹲に手を差し入れ、己の運命を掴むのです…!!」
何を言っているのかはよく分からないが、とりあえず、この異様な井戸のようなものに手を入れなくてはならないらしい。覗きこんでも底が見えるはずもなく、ただただ恐怖しか沸かない。
「…くっ」
井戸の縁を右手で掴みゆっくりと左手を差し入れていく。5センチ…10センチ…。その時、突然奥からなにか強く引っ張られるような感覚があった。
「うわぁぁぁ」
慌てて手を引き抜き尻餅をつくと、少女が、そばによってきた。
「……ひゃっ!冷たっ!!」
何か液体を顔面にかけられると草のようなもので頭を叩かれた。
「どうか…貴女に幸多からんことを…。」
続いて祈るように両手を合わせた。
「御武運を…」
あれ、そういえば武器を貰っていない。どういうことだろう。
よくわからないが、もう出て行けという雰囲気があったので、僕はすごすごと退出した。
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「お。おつかれ。どうだった?」
「武器、貰えなかったよ…?」
真野は、きょとんとすると、僕の全身を見渡した。そして、にんまりと笑う。
「これじゃない。」
僕の左手をとった真野は、その手を目の前に引っ張った。
「え…?」
その人差し指には、真っ黒い指輪が我が物顔ではめられていた。




