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それでも、最強の盾であれ  作者: もちもち物質
第一章:機械仕掛けの体
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38話:決戦*3

 城を相手に戦ったことは無い。

 だが、単純に考えれば、アレは、コルザの町のダンジョンでゴーレムと戦った時のそれと似たようなものであると言えるだろう。

 相手はとにかく巨体であるが、その攻撃全てを避け切ればいい。

 防ぐのではなく、引き付ける。それならば、エメディアの言う『20秒』はなんとかなるのではないだろうか。

 そして……。

「全く……愚かしいと言わざるを得ないが、姫君を残して逃げることは私の美学に反するな。やれやれ……」

「ああくそ!おい、エメディア!何としても成功させろよ!一発だぞ!いいな!?」

 ……こちらには、『引き付ける』役割を担える者が、あと2人居る。

 グレイはそれを心底頼もしく思いながら……まずは自分が、とばかり、メカニジア城に向かって走り出した。




 今のグレイには、右腕が無い。とはいえ、どのみち、右腕があっても使わなかっただろう。

 このメカニジア城は、斧槍程度でどうにかできる相手ではない。斧槍で切りかかっても、城を破壊することはできない。生物ではないから、痛みで動きを鈍らせるようなこともできない。

 ならば、斧槍は必要ないのだ。右腕も、必要ない。グレイには、ただ、敵から目立つために使う大楯と左腕があれば……そして、敵から逃げ回るための脚があれば、それで十分なのである。

 そうしてグレイは自分の体の欠損にも戸惑わず、大楯を掲げてメカニジア城から目立つように動く。……すると、メカニジア城は、ひとまず、グレイに目を向けた。

 途端、ぞくり、と悪寒が背筋を駆ける。強大な魔力を持つ相手と対峙した時特有の感覚だ。グレイは、これがあまり好きではない。盾役である以上、しょっちゅう味わわざるを得ない感覚ではあるが。

「……全く、とんだことに巻き込まれたもんだ」

 ぼやきつつも、城の動きをよく見る。

 ……ここで城の動きを見誤ったら、待っているのは死である。それも、グレイ1人の死ではない。グレイが死ぬことによって次に攻撃が向くであろう……スファルやアイオン、そしてエメディアの死が、直結している。

 だからグレイは、死ぬわけにはいかない。盾としての役割を全うするために、グレイはじっと、メカニジア城の動きを注視して……。

 ……ここだな、と閃いたその瞬間に、グレイは前方へ走った。

 メカニジア城へより接近するという、愚かしくも見える行動であるが……こうした図体の大きな敵相手ならば、これも案外、有効なのである。

 案の定、グレイが自分に接近してくるとは予想していなかったらしいメカニジア城は、グレイを一瞬、見失った。……そして、グレイを再び見つけるまでの間は、時間を稼がれてくれる、というわけである。

 グレイは、『これで3秒は稼いだか』などと思いながら、再びグレイを見つけ、いよいよ振り下ろされる腕を見上げる。


「おいおいおい!グレイ!死ぬ気じゃねえだろうな!」

 そんなグレイの遥か頭上から、スファルの声が降ってくる。メカニジア城を足場に跳び上がったらしいスファルは、グレイへと振り下ろされるメカニジア城の腕に向かって、グレイの斧槍を振り下ろした。

 だが、凄まじい膂力を誇るオーガの一撃を、メカニジア城はあっさりと受け止めた。流石に、この巨体相手には、スファルもまともに太刀打ちできないらしい。

「ああクソっ、こいつ……!」

 スファルは舌打ちしつつ、しかし、メカニジア城の腕の上へ着地すると、メカニジア城の腕の上を走り始めた。これには、メカニジア城も多少、判断に困った様子である。自分の腕に止まった羽虫を叩き潰すにあたって、どのくらいの力で叩けばよいのかを今、初めて計算しているかのような、そんな様子であった。

 だが、メカニジア城にはスファルが見えている。そして、スファルがどんなに素早く動いたとしても、それは、メカニジア城にとってしてみれば、全て、自分の視野の範囲内でのこと。

 ……それを捉えることは、簡単なのだ。


 メカニジア城の手が、スファルへと伸びる。スファルも決して逃れられない速度と正確さで。

 ……だが。

「ここで逃げるのはオーガの誇りが許さねえ!」

 スファルが、グレイの斧槍を投擲する。

 ……躊躇なく投げられた斧槍は、回転しながら飛んでいき……そうして、メカニジア城の一部、きらりと輝く……目のような箇所にぶつかって、そこを破損させた。




「いやはや、素晴らしい!」

 それを見て手を叩いたのはアイオンである。

「巨人討伐の伝説でも、巨竜相手の英雄譚でもそうだ!巨大な相手と戦う時に狙うべき箇所は、『目』!実にその通り!実に賢く美しい解答だ!」

 アイオンが声を上げる一方で、メカニジア城はスファルを殺そうとしていた腕を、ふらふらと動かしているばかりである。……どうやら、スファルを一時的に見失ったらしい。その隙にスファルはさっさとその場を離脱している。これでまた、何秒か稼げるだろう。

「さて、私もこの新たなる伝説の一ページに名を刻むとしよう……」

 そしてアイオンが、動く。

 彼は……なんと、メカニジア兵が持っていたのと同じような……それでいて、大きさと意匠を3倍ほど派手にしたものを構えていた。

「さあ!とくと味わうがいい!」

 アイオンの声と共に、筒の先から何かが発射される。それは、細く長く、煙の尾を引いて飛んで……メカニジア城の横っ腹に着弾すると同時、盛大に爆ぜた。

「や、やったか!?」

「いや……」

 スファルは歓声を上げかけたが、直後、立ち込める煙の向こうから、メカニジア城の脚がガシャンと振り下ろされた。

「成程。効いていないようだ。やれやれ……」

「見掛け倒しかよ!おい!」

 アイオンは本当にそう思っているのかよく分からない仕草で嘆き、スファルはいよいよ本気で嘆いてたが……グレイは、この光景を見て、少々にやりと笑っていた。

「いや。案外、悪くなかったかもな」

 グレイの言葉を聞いて、スファルもアイオンも、はて、と首を傾げていたが……。

「『目』を狙う、っていう点では、スファルと同じことをやったっていうわけだ」

 ……メカニジア城の脚は、ガシャン、ガシャン、と闇雲に動かされるだけで、今一つ、こちらを狙いきれていない。

「そうか……煙か!目くらましってわけだな!?」

 どうやら、アイオンが放った攻撃も、無駄ではなかったらしい。……『見かけ倒し』ではあったかもしれないが。


 だが。

「いや……しかし、アレは魔力も探知する!魔力が強いものがあれば、それを狙ってくるぞ!」

 アイオンが警戒を強める中、メカニジア城が動く。

 どんな獣の声とも異なる唸りを上げて、メカニジア城は……こちらへ向かってきていた。

 魔力だ。あれは、目で物を見るのみならず、魔力をも見ることができる、ということなのだろう。そして……。

「なら問題ない」

 グレイはやはり、笑っていた。

「俺も、それなりに魔力が多い性質でね」

 ……それならば、今、魔力を自分の内で集中させているエメディアよりも……魔力を大いに消費しながら魔導鎧と手足を、そして大楯を動かしているグレイの方が、目立つはずだから。

 目立つことが、盾役の使命であるから。




 そうして、メカニジア城の脚が、グレイ目掛けて振り下ろされる。

 グレイは動きを読んでなんとか避けるが、自分のすぐ横で割れ砕ける石畳に、そして隆起する地面に足を取られ、咄嗟、均衡を崩す。

 ……見誤ったのだ。自分の体が、右腕と斧槍の分、少々軽くなっていたことを。

 その場で転倒したグレイは、しかし、すぐさま態勢を立て直し……。


「グレイ!」

 ……スファルが叫ぶ中、自分に迫るメカニジア城の脚を、見上げていた。

 この距離では、もう、間に合わない。


 グレイは、だが。




「お待たせ!いくわよ!」

 鋭く、エメディアの声が飛んでくる。

 グレイはその声を背中に聞くと……大楯を構えた。

 城を相手に、大楯で挑むなど実に愚かしい。だが……『間に合う』と、グレイは信じていたのだ。




 そして、グレイの大楯にメカニジア城の脚が触れる直前。

 凄まじい魔力の奔流がエメディアの杖から放たれ……メカニジア城を撃ち抜いていた。




 ごうん、と低く響く音は、メカニジア城の悲鳴だろうか。

 ……エメディアの魔法は、凄まじかった。メカニジア城に巨大な風穴を空けるに留まらず、内部から破壊したと見える。

 メカニジア城は仰け反るように体勢を揺るがせており……そして、あちこちで爆発を起こしながら、ゆっくりと、倒れていく。

「身構えろ!」

 グレイが叫ぶと、スファルもアイオンも、その場で防御の姿勢を取った。だが、魔力を放出しきって無防備になったエメディアには、それができない。

 ……グレイはエメディアに向けて走った。走って、大楯を構え……そして。


「……間に合ったな」

 グレイは、緊張に滾った血が、徐々に落ち着いてくるのを感じながら、細く長く、息を吐き出した。

 ……崩壊するメカニジア城が降り注がせる数多の瓦礫を大楯で受け止めて、グレイはエメディアをなんとか、守り抜くことができたのであった。

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― 新着の感想 ―
図らずも王城落としたわけだけど、エメディアはまた大変そうだなって。
たかがメインカメラがやられただけだ! やっぱりアム□っておかしいんだな。
中近距離はモーニングスターで遠距離はロケランとか、思った以上に強ユニットだなアイオン卿!?
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