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君に送るワルツ  作者: 青木星
29/34

25話俺と戦え前編

遅れてほんとすみません!!


柚さんは、何やら分厚そうな本を黙々と読んでいた。

よくよく見ると柚さんの読んでいる本は


「心から謝りたい人へ。

 私の謝罪成功例五百選!」


というタイトルであった。


僕が柚さんの席の前まで近づいていっても

彼女は本にご熱心なようで僕の存在になど

気づきもしていないようだ。


僕は彼女が読んでいる本をマジマジと見る。

柚さんには謝りたい人でもいるのかな?

そんな思いが僕の引き出しに入ったばかりだった

秋良が言っていた事を思いだす。


秋良が柚さんについて僕に言ってくれた時は

半分は本気で、半分は人違いではないか

と思っていた。


しかし、彼女がこの本を読んでいるということは

何か謝りたい出来事が過去にあったという事。

それはもしかしたら僕と秋良に対してかも知れない。


僕は口に少し溜まっていた唾液をごくりと飲み込んだ。


僕は柚さんに気づかれないので柚さんの前の席に座る。

席の仕組みは一つの横長テーブルに対して

6×2で12人が椅子に座れる。


僕はあまりにページを開いたりする音を立てない

柚さんに対し、何か目に入る内容でもあるのかと

妄想を膨らます。


「柚さん、柚さん?」


僕はそろそろ気づいて欲しいと思い声をかける。


しかし反応がない。


「ゆずさーん?」


またまた反応がない。


おかしいなと思いながら僕は彼女の肩をトントンと叩きにいこうと席を立ち上がる。


その時に縦に120度くらいの角度で立てていた本が

ばたりと柚さんの方へ倒れた。

その音に本が柚さんの頭に当たり、

柚さんは気づいたのか

徐々に身体の状態を起こす。


「んー、ん、…。んー?」


柚さんは寝ぼけた顔でぼんやりと目に映る

人影を見る。


どうやら柚さんは寝ていたようだ。


顔が本に隠れていたからわからなかった。


「柚さん、僕だよ、春馬だよ」


「あー、うん。春馬ね。ぅえ?」


僕が目の前にいることに驚いたのか

柚さんの声が裏返る。


柚さんは目の前に倒れた本を

瞬時に胸元に引き寄せる。

そして恐る恐る僕に聞く。


「もしかして、タイトルとか見ちゃってた…?」


「ごめんね、見ちゃったよ」


僕はこういう時には嘘をつくのが正しいのかも知れないが嘘はつけないたちだ。


すると頭をカクリと足元まで柚さんは落とす。


そして僕たちの間にしばらくの静寂が訪れる。


先に口を開いたのは僕だった。


「僕たちって幼い頃一緒に遊んだことある?」


そう聞くと柚さんが下を向いていた視線が一気に

僕の顔までに上がる。

相当動揺していたのか柚さん身体が少し震えていた。


「覚えているの?」


「実は秋良から聞いたんだ。」


柚さんは僕の口から出してほしくなかった名前が出たことにより次第に目が潤み始める。


「なんで言っていたの?その…、秋良は」


ここでストレートにいうと話が長くなってしまう。

少々割愛しよう。


「秋良は、柚さんが僕と秋良が仲良くしていた時の

記憶を消したって言ってたんだ。

でも僕は病院で8歳くらいに秋良と会ってから仲良くなったと記憶していたから5歳に秋良と会っていてそれから仲良くしていたって聞いて驚いたんだ。

この話は本当かな?」


僕は緊張しながらいう。

一歩でも言葉を間違えてはいけないと

僕の第六感のようなものがうずく。


そんな僕に柚さんは再び視線を

今度は机あたりまで落として答える。


「うん。本当だよ。

フフ、私って本当にどうしようもないクズだよね…。」


柚さんから出たフフは自分自身に対しての事だろう。

僕は秋良から聞いたことは綺麗さっぱり覚えていないので全く怒る気にはならない。

むしろ、これほど病んでいる彼女を助けたいと

僕は思った。


「そんなことないよ。

 たしかに過去に悪い事をしちゃったら

 謝る必要があると思うけどさ…、

 そこまで引きずる必要もないと思うんだ。

 だってそんなの誰も幸せになれないし。」


柚さんには僕の言葉が届かなかった。

しかも先ほどよりも暗く、哀しげで怒りの感情が

彼女から滲み始める。

    ・・・・・・

「春馬はあの時のことを覚えていないから

 私を許せるんだよ。

 ちょっと痛いと思うけど許してね。」

 

すると、僕の頭の中にキィぃぃぃぃーん!

という金属と金属をする時になるような

音が脳内に響き渡る。


「ヴぅああああああ!」


僕は突然の頭痛により頭を抱えて倒れる。


図書室は静かにするのがマナーなのだが

あまりの痛さに悲鳴をあげてしまった。


僕が倒れる寸前、彼女は哀しげな表情をしながら


「ごめんね。」


といいその直後僕の瞼が閉ざされた。


春馬が悲鳴をあげ倒れた時には図書室にいる

全ての人間が彼に視線を送っていた。


次第にざわざわとひしめき合いながら

不安がる声は水滴が水溜りに落ちて衝撃が広がるようにして広がった。


誰か治癒室に運んだほうがいいんじゃない? 

大丈夫?

アイツって原始人じゃね?


そんな彼を柚が能力により浮かせ、

どこかへ運ばれていった。


ここはどこだ?

僕はあたり真っ白な世界に戸惑う。

突然の頭痛がして、そこから目を覚ましたら

ここにいる。

 

ヴィーナス様の時とは違う、

どこかここが僕の精神世界のような感覚がする。

僕の足元には白い霧がたちこんでいる。


僕はここに立っていても何も始まらないと感じ

前に歩き始める。


あたり一帯が白色なので方向感覚を失いそうになるが、

歩いて数秒、突然目の前に扉が3つ現れる。


一つは鍵がかかっておらず既に空いているブラウンの扉

一つは3つの中で一番大きくてしまっている青い扉

一つは何重もの鎖が巻かれたいかにも不穏な見た目をしている黒い扉


僕は、この中で選ぶべきはブラウンの扉だとは

思うが黒い扉は開かないにしろ青い扉に入れるのかもしれないと思い、両手で扉を押す。


すると、ブゥーン、となんなく空いてしまったので

ブラウンの方か青い方かで悩み、

結局青い扉に入ることにする。


僕が青い扉の中に入った瞬間に扉は閉まった。

再度開けようとしても開かないので僕は

前に進むことにする。


扉の中は砂漠であり、遠くに海のようなものが見える。

僕はそれに向かって歩く。


しかし海には一向に辿り着かなく、

距離も最初と変わらないように見える。


ここはかなり暑く、何も持っていない僕は

次第に体力を奪われる。


僕はこれ以上歩いても体力の無駄だと感じる。

そして、砂漠に横たわり少し休憩をする。

たしかに扉からは離れているがあの海とは距離が変わっていない。 

僕は空を見上げる。

何故かこの空を見たことがあるような気がする。

空には雲ひとつなく、あたり一体に広がる

眩しい星。


「しぶといですね。

ですがここがあなたの墓になることには変わりませんよ。」


「まだ力を隠していたとは…、ガハッ」


なんだこの記憶は。

僕が突如頭に流れてきた記憶に困惑する。


そして唐突に目の前に鎧を着た僕が現れる。

なぜか彼が僕だと思うかはわからない。

でも本能が僕だと感じている。


この鎧を着た僕は夢でも見た気がする。

というか夢って何を見てたっけ。

僕は急に思い出せなくなる。


目の前にいる僕はどこか儚げで

それでいて勇ましく感じる。


彼は僕にいう。


「俺と戦え。」


そう言った直後突然彼が刃を手に持ち襲ってくる。

僕はヴィーナス様から授かった能力で応戦する。


彼の剣技は極まれていて、繰り出す一撃が全て

僕にとって致命的なダメージになってしまうほどだ。


僕は、必死に避けながらも反撃の糸口を探す。


しかし、数分経っても見つからない。


「それでは足りん。もっとだ。

 もっと本気を出せ。」


僕が先読みをしても隙が出ない。


彼は何がしたいんだ。

僕は彼が攻撃してくる理由がわからない。

しかし、勝てば何かしら聞き出せるはずだ。


僕は三つ目の能力アビリティを使う。


それは特異な力を発揮する眼である。


神眼は全部で3種類あるとヴィーナス様はいった。


天空神眼ホルス

右目は太陽眼、左目は月眼

右目は真実を見通す眼、

左目には失ったものを回復させる眼。


炎神眼ヘパイストス

聖なる炎を対象に発火させる。

炎は使用者が消そうと思わない限り

絶対に消えない。


時空眼クロック

対象の相手と自分以外の時を止める。


どれも使用制限があり、

1日にニ回までという制限があるらしい。


三回目を使うと脳が内部から壊れ、死ぬらしい。


僕には神眼が危ないとヴィーナス様がいい、

神眼よりも下位の天眼という能力を授かった。


これは20種類あるというが説明は今度にしよう。


天眼、真似眼コピーだ。

相手の動きや能力を真似してオリジナルの80%の

力を扱うことができる。


僕は彼の極上の剣技をコピーし、

光剣ヴァイオレッドで彼の刃と交える。


光剣の剣技にはどれも隙が生じてしまう。

また、剣技を放つとどっと体力を奪われてしまう。

だから、僕はコスパよく戦う。


ヴァイオレッドには力を吸収させず、

ただの剣だと思って戦い、ここぞという時に

少し力を吸収させる。

慈愛神之愛ラヴァーヴィーナス

最近になって制御できるようになってきている。

これで力切れになることはないだろう。

暫く剣を交えた。

彼は僕の反撃の一撃をことごとく跳ね返し

カウンターをされ片腕がいかれる。


「やめだ。」


彼はそう言った。


結局彼に浅い傷を一つしかつけられず

僕の完全敗北であった。


肩から溢れる血が砂漠に落ちる。

砂漠は水分のことごとくをすう。

そして幾分か経つと天へ蒸発していく。


その間に彼は僕の肩を再生させた。


再生の能力まで持っていることに僕は唖然とする。

というか、僕と戦っている時に

能力を使っているようには見えなかった。

というより、何か感じたことのない

熟練された闘気のような力で圧倒された。


「貴方は僕ですか?」


自分でも何を言っているのかわからない事を

彼に聞いた。


「そう。俺と君は同一人間だ。

 だが、記憶が分裂した結果俺がこの世界に誕生した。

 つまり君は俺と今日、合体するということだ。」


僕は変に納得した。

正確には僕じゃない違和感を理解した。


彼は僕に対し厳しい顔を向ける。


「俺は、本体ではなく君が本体であることに変わりはない。だが、俺を君に委ねると俺の意識と人格は

消滅する。だから最後に君と手を交えたかったのさ。

どうせ彼女が君に能力を授けたんだろう。

なかなか手応えはあった。

これで悔いはない。


……。


俺はこの砂漠の世界でずっと君を待っていた。

この瞬間、俺の目的はなされた。

さぁ、濁流として押し寄せてくるであろう記憶に

抗う覚悟は出来たか?」


「はい。」


早すぎる展開に僕は少し戸惑うが

今の答えは、はい一択だ。


いいえと言ってしまっては過去がしれないままとなってしまう。


柚さんと秋良と遊んでいた過去を思い出して、

次こそは彼女を救おう。


というか絶対扉を間違えた気がする。

幼い頃の5歳から7歳に秋良と仲良くしていた記憶を

取り戻すのに砂漠っておかしいでしょ確実に…。


僕が下を向いてため息をついていると

彼がバシンと僕の頭を叩く。


僕は驚いて顔を上げる。


彼はニコッと彼に似合わない笑みを僕に浮かべ

腕を伸ばす。


僕は彼からさし出された拳に

再生したばかりの左腕を伸ばし拳でコンっと当てる。


「僕の名前は前田春馬。

 ほんとにだらしなくともたまにはカッコいいところもあるおじさんにつけてもらった名前です。

 貴方の名前は?」


「俺に名乗る名はない。合体した後にわかるさ。

 ハハッ。そりゃいい育て親かもなきっと。

 達者でな。」


そういい、彼は光の粒となる。

しかし、再び人の形に戻る。


「そういや、言い忘れていたな。

 ヴィーナスを頼んだぞ。」


「え!」


僕はヴィーナス様を知っている彼に

驚いたがその瞬間に僕の身体の中に

彼が取り込まれていった。


僕は、次第に、封印が解けるように、

暖かくじわりじわりと過去の記憶を思い出していく。


しかしその記憶はどれも

5歳から7歳の秋良と仲良くしていた時の記憶ではなく、

0歳から5歳までの記憶ではなく、


僕が生まれる前の、

転生前の僕の記憶であった。













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