24話ミアとシンくん
ボリューム満点の24話楽しんでください。
蒼い蝶々が女の子の鼻に止まり、
優美な羽を彼女が触ろうとする。
触った瞬間に蝶々は再び
羽をパタパタと動かし、宙を舞う。
そんなおっとりとする光景を僕は眺めていた。
どうやら彼女は僕のことが見えていないのか、
ごろごろと野原で回っている。
僕がいる方向に彼女は転がってきて
避けようとしたがあえて僕は避けなかった。
彼女のような自由な人がどこか眩しくて
どこか懐かしいような感覚に
なぜか涙を僕は流していた。
転がってくる彼女は僕の足元にぶつかると
思っていたが彼女は僕の足をすり抜け
蝶々が飛んでいった方向へごろごろと転がっていった。
そして蝶々は光る日を目指して空の頂上へ飛んでいく。
そんな蝶々を見て彼女は立ち上がる。
彼女は空の頂上を目指そうとした
蝶々を焦点のズレたような目で眺めていた。
まだ、地面から5メートルほどしかあがっていない
蝶々は何故か身を灼熱の炎に焦がされて
チリとなって彼女に降りかかる。
あれほど美しかった蒼い羽が
この世の全ての災いが降りかかってしまったかのような
黒色に染まっていた。
そんなチリを彼女は踊りながら
受け止める。
彼女にチリとなった羽が落ちてくる。
そんな羽を優雅に浴びる。
まるで死んだはずの蝶々と戯れるかのように。
チリとなった羽を浴び終えた後、
踊りはラストスパートに突入する。
フォーラウェイリバースを華麗に決め、
ワンピースのふわりとしたスカート部分を
美しく広げてくるり、くるり、と回る。
そして最後は架空の誰かと抱き合うような形で
踊り、ワルツを終えた。
彼女の額からは、煌びやかに輝く汗が胸元へと
こぼれ落ちていた。
何故このような光景を見ているのだろう。
僕は感傷的になりながらも思う。
何故彼女はワルツを踊り終え、
そんなにも切ない顔をして空を見ているのだろうか、
今さっき死んだ蝶々を気にしないかのように…。
事実、彼女はチリとなった羽が落ちる前に
蝶々の身が落ちたというのにそれには興味がないように踊っている時にシルクのようなサラサラで
美しい足でさも何事もないように踏みつけていた。
そして何より疑問に思ったのが
何故此処には僕とと死骸と彼女しかいないはずなのに、
蝶々が灼熱に焦がされた直後に
ヴァイオリンのなだらかでビブラートのかかった
音がどうして空から聞こえるのか、
誰がここにいても疑問に思うであろう。
彼女は潤った瞳で僕を見つめていた。
どういうことなんだ。
先ほどまで僕の存在が見えていないかのように
彼女は転がり、そして踊っていたが
今になって僕を見つめたのは何故だ。
彼女が近づいてくる。彼女は何故か泣いている。
何かを追いかけるように裸足で走る。
汗で滴った胸は
豊潤でワンピースの胸元の生地が
喜んでいるように見えた。
たゆん、たゆん、と胸を揺らしながら
彼女は僕の目の前で立ち止まる。
そしてハグをする。
僕はそれに倣い彼女にハグをする。
しかしハグをしようとした手は彼女の肌をすり抜けた。
やはり彼女を触ることはできない。
だけど、彼女は確かに僕の体を力強く引き締めるように
抱く仕草をする。
彼女が抱いていたのは、僕に重なっていた
彼女にすりぬけずに触り合える
鎧を見にまとった僕だった。
気づいた時には空気中に漂っていた
甘い匂いがフレッシュな匂いへと変わっていた。
その光景を見た直後僕はカプセルの中で
目を覚ました。
もう30分経ったのかと僕は思いながらもカプセルの外へ出る。
ほぼ同じタイミングで秋良もカプセルから出たのか、
仮眠室の外に出る前に出逢った。
「そういえば秋良、どうして指定した時間に起きれるようになってるの?
あとカプセルの中に入った直後に急に睡魔が襲ったんだけど」
「それは匂いらしいぜ。
カプセルに入った瞬間に甘い匂いがしただろ?
起きる時には爽やかな匂いがしただろ?
それらのおかげらしいぜ。
あと、夢で見たことは自分の記憶の中を元にして
いい部分だけをかき集めてつくられてるらしいぜ。」
「へぇ。それはすごいね。」
少し支離滅裂な夢かと思ったら
記憶をもとにして作られているという。
こんな光景全く記憶にないぞ?
僕は困惑しながら秋良とSクラスの教室へ向かう。
そして数分が経ち教室で空いている席に座り、
午後の授業が始まった。
ケイン先生の授業はわかりやすいし面白い。
時間はあっという間にすぎ、帰りのホームルーム前の5分休みに入る。
「いやぁ、獣族の歴史は面白かったな。
なんか時間もあっという間だったな。」
「秋良だったら今授業でやった内容も既に知っているんじゃないの?」
「いやぁ、流石に軽くは知っていたけど
あそこまで深くは知らなかったな。
俺もまだまだ勉強が必要だな。」
「あの秋良でも興味を持つのか」
「あのってなんだよ春」
秋良は基本大人の話を聞かない。
常に自分が正しいと考え、
じぶんにあだなす意見を押し付けてくる
年上をことごとく論破して殴り合いに
なることがしょっちゅうだった。
そんな秋良が素直に興味を持って授業を聞いている。
「あのはあのだよ」
「だからあのってなんだんだよ」
「ハハハ、さぁ」
「やばいむかついちゃうぞ俺?」
「すいませんでした」
そんな会話をしていたらチャイムが鳴ったようだ。
何かを取りに行っていたのかケイン先生は
教室にいなかった。
数分してケイン先生はダンボールを一つ持って
教室に入ってきた。
地下一階から四階まで運んだせいか、
額から少々汗がこぼれていた。
こぼれた汗を自前のハンカチで拭く。
そんな様子が良かったのか
数人の女性が叫ぶ。
カルミアや進之介は迷惑そうにその女性たちを見ていた。
カルミア様を見た時にその隣にオルガさんがいたのに
僕は驚いた。
そしてオルガさんと目が合ってしまい、
瞬間的に僕は視線を教卓の方へ逸らした。
…、なんか針のような視線が右から感じる。
無視だ無視。
汗を拭き切ったケイン先生は
教卓に置いてあった水をごくごくと飲む。
ヤベェと、
そこらの男性俳優やアイドルが飲み物の宣伝やるよりもケイン様がやられた方が効果100倍だぞと、
先ほど騒いでいた女性たちが生き高らかに
言いたそうな顔をしている。
Sクラスの生徒が全員思っているであろう、
「「めっちゃ浮いてるやん、彼女たち。」」
水を飲み終えたケイン先生は
やけにかっこよくペットボトルの蓋をしめて
教卓に置く。
そしてダンボールを開けていく。
中には何やら冊子が入っていた。
「遅れてすみません。
今からこの冊子を配ります。」
数十秒して配り終える。
「これは今日やった授業の復習ができる
演習冊子となっています。
提出は明日とするので放課後に解いてください。
明日出せなかった場合はこの教室で居残りで冊子を終わらせてもらいます。」
僕達はうなづく。
結構冊子は薄く、ページ数は見開き10ページほど。
1ページあたりの問題数も少なめで
帰ったら3時くらいだとして寝るまでに7時間はある。
余裕だとみんなは感じているだろう。
「では今日は解散とします。
皆、かえっていいですよ。教室で残ってやりたい場合は18時まであけときますのでご自由に。
図書室の利用は21時まで空いてますので
他の資料など活用したい方はぜひ。
また、この冊子の答えは配布しません。
皆から提出してもらったのを私が採点してから
渡します。」
Sクラスに答えを写す人はいないと思うが、
皆のできを確認したいという意図だろう。
こくと皆うなづき先生は空となったダンボールを持って教室を出た。
クラスの半分くらいは寮に帰り、半分ほどは教室や図書室にいるようだ。
僕は、教室で宿題をやろうとしていたが
秋良が図書室に行きたいというのでついていくことに。
進之介も用事は昼で解決したようなので
僕達について行くという。
僕達は3人で図書室に向かうはず、だったが
カルミアとオルガが進之介が行くならと
ついてきた。
「勘違いしないで、別にあんた達二人には興味はないから。」
カルミアがガルルルルと敵意を向けながら僕を見る。
それに対して秋良が笑う。
「じゃあ進之介が好きなのか?笑」
「ち、違うわよ!」
あきらかに顔をカルミアが赤らめる。
秋良は容赦なく追撃する。
「進之介譲るから二人で図書館行ってきなよ笑」
「お、おい!いい加減なこと言うな春馬!」
いつも冷静な進之介が
3段階くらいトーンを上げて言う。
「ま、さ、か、だと思うけど進之介、
昼飯をカルミアと一緒に食べていたのか?」
「「ち、違うわ!」」
完全に二人は動揺している。
こうなったら秋良は止められない。
「おいおい、嘘はよくないぜ二人とも。
俺たちは3人で図書室に行くから二人で
らゔらゔ教室で勉強してなよ笑
あ、恥ずかしいなら寮でしなよ?色々と」
顔を赤らめた二人は、沸騰するように
本音を言い出した。
「し、進之介とは既に婚約予定だ、だ、わ!
し、仕方ないから教えといてあげるわ!」
「ちょ、それは言わない約束じゃんミア!」
カァァァァ、とカルミアは今の発言について恥じたのか
顔を手で隠ししゃがみこんでしまう。
そんなカルミアをオルガが頭をなでなでしている。
オルガさん、知っていたのか…。
というかオルガさんに同情される
カルミア様っていう図が面白いです…ククク、腹痛い。
「ま、まぁ、お前のその話乗るわ!
今から二人でべ、勉強するから図書室は譲ってあげるわ!」
「どこで?笑」
「そりゃ…、ね?」
「どこで?笑」
秋良必殺の笑顔でといただすゥゥ炸裂。
クリティカルヒット!
クリティカルヒット!
二発当たった!
カルミアは進之介と共にどこかへ消えていってしまった。
テッテレテーテテテテー。
秋良は5000経験値を手に入れた。
秋良はレベルアップした。
秋良は新しく、カルミアの弱点、進之介の弱点を
入手した。
「ハハハハハァ!どうだ春!
これが俺の真骨頂だぜ!」
秋良は二人の秘密を知れたのか満足しているようだ。
「はぁーっ、じゃあ秋良…とオルガさん、
図書室行こっか?」
オルガさんはカルミアに置いていきぼりにされて
今にも泣き出しそうな顔をしている。
「前はごめんねオルガさん。
オルガさんが強くて僕も本気を出して
ギリギリで勝てたんだ。
だからオルガさんと次戦った時は
負けちゃうよハハハハ」
「本当?」
オルガさんは泣き出しそうな目から一変して
少し嬉しそうな表情になる。
「う、うん?」
「そうなの!じゃあ嬉しい、えへへ!」
オルガさんが無邪気に笑う。
見た目はモデルのような高身長美女
中身は5歳児並みのお子様
そんなギャップに危うく僕は笑いそうになるが
また変な言いがかりをつけられて
オルガさんが泣いちゃうだろうと思い
僕は必死に堪えた。
僕は初見じゃないのでなんとかなったが
僕の隣には初見である人がいた。
そして既に大物二人を討伐して調子に乗っているので
ブレーキが効かない。
あー、逃げよ。
僕は秋良にごめんと言い残し、全力疾走で四階を降り、図書室へ逃げた。
「ごめん、てなんだよ!おい春!
…、そうだ!
オルガだっけ?」
「うん!」
「春と戦ってる時は化け物みたいな
頭のいかれたやろうかと思ったが
案外可愛いじゃねぇか!
これからなかよくしようぜ!」
「ば、化け物って言われた…。
ひどい、ひどいよ秋良くん…!
うえーーーーん!!!!!!」
秋良は地雷を踏んでしまった。
オルガは戦闘不能となった。
テッテレテーテテテテー。
秋良はオルガに嫌われてしまった。
秋良は5000経験値を失った。
秋良はレベルダウンした。
「ご、ごめんよ?なんか」
「ユ、許さないんだから、ウッウッ。
お詫びとして勉強教えてよ!」
「え?」
「ウッ、だから勉強一緒にしてよ!」
「え?」
秋良は困惑している。
「オルガって勉強できないの?」
「一人でできないの、ウッ」
オルガは涙をハンカチで拭きながらいう。
そういうことか。まぁーそれなら。
「わ、わかったよ。一緒にしてやるよ」
「ふん!じゃあちょっとだけ許してあげる」
「教室か?図書室か?」
「秋良の部屋がいい」
「は。」
「だめだの?」
再び止まった涙が出そうになるのを
俺は見る。
まずい。
「わ、わかったから泣くな」
「ほんと?」
「ああ」
「へへーん、もうちょっとだけ許してあげるよ!」
「はいはい」
まじで子供かよ。
これじゃ5歳児以下じゃねぇか…。
…覚えてろよ春。
秋良は春に少し恨みを持ったが
オルガと一緒に勉強するのはむしろ
いい事なのではと俺は思考を変えた。
扱いにはむずいが容姿は美女。
…。
サンキュー春!
秋良はオルガに腕を抱きつかれながら
寮に向かった。
ハァッ!ハァッ!
秋良は全力疾走したせいか
息を荒くして図書室に入った。
荒い息遣いが静寂が支配する図書室中に響いたのか
迷惑そうな目で色んな人に見られる。
僕はぺこりぺこりと謝罪しながら息を整える。
図書室は意外と広く、本の豊富さはに加え、
席も豊富にある。
僕は人気の少ないところを探していると、
一人でただ黙々と本を読む柚さんの姿が見えた。
読んでいただきありがとうございます。
明日はお休みとなっています!




