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君に送るワルツ  作者: 青木星
23/34

21話幸せと哀感


二人が来るとは思いもしなかった僕は、

目が飛び出る程驚く。


「よお春馬。

ちょっと邪魔するぜ。」


「ちょ、ちょっと待ってよ」


「うん?どうしたの春馬くん?

やけに焦ったような顔して。

うわぁ、A棟の部屋ってどれも綺麗だと瀬奈から聞いたけど

玄関からうちの寮とは大違いだね。」


僕は淳くんを止められず

淳くんは僕の言葉が耳に入っていない

というようにズカズカと廊下を歩きリビングに入る。


そんな光景を僕はため息を吐きながら見ていると、

亜美さんが申し訳なさそうに僕に謝る。


「いやぁ、ごめんね春馬くん。

このバカがさっき春馬くんと会ってないからとか

言い出して…。」


ハハハハ、と僕は苦笑する。


「まぁ全然平気だよ。

亜美さんも部屋に上がってよ。」


そう僕がいうと亜美さんの顔が

ひまわりのようにぱぁぁぁっ!っと明るくなり、

淳くんを辿るようにズカズカとリビングに入る。


ほんとに似ているなこの二人。

だけどいつもの淳くんらしくないと感じた。


リビングのゴージャスさを見て

二人は絶句する。


「なんだよ春馬…、いいとこ住んでるじゃねぇか。」


「こんなにも寮が変わると質も変わるのね…」


そしてほぼ同時に二人からため息が出る。


そんな二人にどう接していいのかが

わからなかった僕は苦笑いをする。


「ま、まぁ、僕も驚いてるよ…。

あと柚さんたちも僕と同じ寮だし…。」


「そういえば最近柚にあってないかも」


亜美さんが僕の言葉に反応する。


「ねぇバカ、私達急にお邪魔しちゃったのも悪いし

次は柚の部屋に行こうよ」


「えぇー、俺はまだ春馬の部屋にいたいぜ?」


「わがまま言うな!」


すると亜美さんが淳くんの耳を引っ張りながら

強引に外に引き出す。


「痛い痛い痛い!わ、わかったから離せその手を!」


淳くんは嫌々ながらも亜美さんに従い

結局すぐ僕の部屋を出る事に。


「それじゃ春馬くん、今日は急にごめんねぇー。」


「じゃあな春馬」


二人を玄関で見送った僕は

瀬奈が来る事を思い出す。


いやぁ、瀬奈と鉢合わせなくて良かったぁ!

なんか忘れてる気が…、。あ!


まずい!なんもご飯の支度していない!


瀬奈との電話から10分、

そろそろ来てもおかしくない時間だ。


ぼくは、手の凝った料理を作る事を断念し、

いつもおじさんと生活してた時に作っていた

野郎メシを作る事にした。


適当に味噌汁の具をカットしていく。

今日はたまたま豆腐が無いので

豚汁路線に変更していく。


グツグツグツ、


30分くらいしただろうか、

だいたいの品が完成に近づいていた。


それなのに瀬奈が一向に姿を見せない。


おかしいなと僕は心配になり

ソファに置いたスマートフォンで瀬名に連絡する。


ぶるるるるー、ぶるるるるー、ぶるるるるー


あれ?なんで部屋の中から僕が持っている携帯じゃない物から電話の音が鳴るんだ?


僕は不思議に思いながらも

僕の携帯以外から出た音が次第に小さくなり

聴こえなくなる。


ぶるるるるーが20回くらいしたあたりに

メールで瀬奈から


「ごめんお腹痛くなっちゃって、

電話に出れなくなっちゃった。

もうトイレから出て今春馬の部屋に向かってるよ!

いっぱいお菓子買ったから期待しててね! 7時50分」


なんだぁーっと僕は安堵し

作ったご飯を盛り付け食卓に置く。


5分くらいしてピンポーンと僕の部屋に鳴り響く。


部屋着姿の瀬奈だ。


扉を開けて僕は迎える。


「おまたせ、いっぱいお菓子買っちゃった、フフフ」


「こんなに?! わざわざありがとう!」


僕は瀬奈が重そうに持っていたパンパンにお菓子や飲み物が詰め込まれたビニール袋を持つ。


だが、これほど重い荷物を片手で持っていたのに関わらず、あとひとつついていない。


普通だったら袋のとってで少し赤い線ができたりするはずだが…。


僕はそれが気になりつつ瀬奈を見る。


「ちょっと肌寒いし、部屋入っていいかな?」


僕はどうでもいい事に気を取られ、

瀬奈を部屋に入れるのを忘れていた。


瀬奈は、上はパーカーで下は短パン…。

すみません本当に…。


ごめんと謝りながら僕と瀬奈はリビングに上がる。


豚汁の温かくもいい匂いに瀬奈がほっこりしてる。


「本当に作ってくれたんだ!嬉しいな、フフフ」


瀬奈は、食卓を見て優しく微笑む。


僕は、瀬奈から預かった袋の中にある

飲み物をコップに注ぎ込む。


「ありがとうございます」


僕の世界では食べる前に、

食べ物に感謝をして

ありがとうございます、と手と手を合わせて

いうのがマナーだ。


僕は、自分が先に食べる前に瀬奈がどんな感想をくれるか気になったのでドキドキと緊張しながら

豚汁をすする瀬奈を見つめる。


すると瀬奈は、ほっぺがとろけるような顔になり、

まるで綺麗なお花が瀬奈の周りに咲いているように

幸せそうな顔をして言う。


「おいひぃーはふま!」


貧民街でつちかった野郎メシなので、

味に自信がなかったが喜んでもらった事に僕は満足して

焼うどんを食べる。


焼うどんは、

水、しめじ、肉、茹でたうどん、すき焼きのタレにごま油、そしてちょっと塩昆布を入れて作った。


これは、おじさんが僕が作る料理の中で

一番美味しいと絶賛してくれるほどだ。


きっと瀬奈にも満足してもらえるだろうと僕は期待する。


僕は、まあまあの出来に納得しながら焼うどんを食べる。


僕が飲み物を飲んでいる時も幸せそうな顔を瀬奈はしていた。


瀬奈がいたら無限にご飯が食べれる気がする。


それほどまでに、瀬奈は美味しそうにご飯を食べる。


「ご馳走様でした!」


僕は、食器を台所に置いて洗う。


僕が食器を洗う姿を瀬奈は

食卓で足をパタパタとさせながら楽しそうに見ている。


なんだか無邪気な妹ができた気分に僕は困惑する。


「あんまり大したご飯作ってあげられなくてごめんね」


「ぜんっぜん!

このくらいの量がちょうどいいしおいしかったよ。

あとね…」


瀬奈は、手を交差するようにしながら言い続ける。


「料理ってその人の今までの人生が反映されてできている物だと思うんだよね。

だから、春馬が作った料理は、一つ一つの具材が綺麗に切れているわけじゃないけど

それでもどこか家庭的で暖かくて、それが輝いて見えて…。ほっぺが落ちるくらい美味しくてね、

春馬は今まで苦労したんだろうなって思ったり…、したりね。」


僕が気づいた時にはすでに瀬奈は顔を少し赤らめながら

僕の目を暖かく見つめていた。


「だから嬉しかったんだ。

春馬の心を女の子の中で私が一番知れたような気がしたし、春馬とまた一歩仲良くなれた気がするんだ。」


瀬奈は自分の言っている事に恥ずかしさをおぼえながらも顔を赤らめ、そしていたずらっぽく僕を見つめた。


そんな瀬奈を見て僕は

心の中に〝好き〟というラベンダーの色が

透明な水の中に広がるように

どくん、どくんと支配していった。

 

僕は、照れるよりも先に涙が出た。

最近の僕は涙もろいのか。


今までの苦しい生活を踏ん張ってきたはずなのに。

今よりも泣くべき場面があったはずなのに。


なぜ今、この瞬間に泣きたくなるのだろう。


今の僕にはその感情をなんと説明して良いのかが分からなかった。


僕の頬を通り、洗っている食器にポツンと落ちる。


落ちた涙は、泡だらけの食器のどこかに消えていなくなった。


「なんで泣いてるの春くん」

 

僕を見て先程の恥ずかしさが消えたのか、

瀬奈は優しく微笑む。


「ううん、泣いてないよ。

これはね…、瀬奈が面白いこと言うから

笑ってでたんだよ」


「春くんたらひどい、もう知ーらない。ふんっ」


「ハハハハハ」


「フ、フフフフフ」


僕たちは自分たちが面白おかしかったのか

しばらく笑い続けた。


それでも僕の目からは

溢れんばかりの涙が止まる事はなかった。



食器を洗い終わったあと、なんやかんや遊んだり話したりして時刻は22時。


明日も授業があるので早く瀬奈を帰らせた方がいいと

僕は考える。


「明日も授業があるし、そろそろ帰った方がいいよ?」


「私が玄関から家に入った時に違和感を感じなかった春くん?フフフ」


ええ。


あんなパンパンに詰め込んだリュックを持っていたのに違和感がありましたよ。


「まさかっだとは思うけどさ、瀬奈?」


「そのまさかだよ、フフフ」


僕がいう事を察したのか瀬奈はいたずらっぽく微笑む。


「今から外に出るのも怖いし、いいよね春くん?」


瀬奈は僕の部屋に泊まるつもりのようだ。


ちゃっかり春くんと呼ばれている事に気づいた僕は照れつつもOKサインを出してしまった。



遡る事2時間前、


淳と亜美の姿が7階にあった。


7階はこのA棟の最上階である。

そして一年全ての教師の部屋があるところだ。


そして、701号室。

ロビンフの部屋にて。


「お疲れだったぜ二人とも。

変身は解いていいぞ。」


「無事盗聴機なら設置したぞ。

これで10万円もらえるんだろうな?」


変装を解いたらそこには中村と木村亜衣がいた。


「あぁ、報酬は支給する。よくやった。

スマホをよこせ。」


二人は、スマホをロビンフに渡す。


そしてティロリン、と二人のスマホの中に10万円が振り込まれる。


「やったね!中村!これなら生活にも困らないよ!」


中村は亜衣の言葉をシカトする。


そんな中村を亜衣は心配そうな目で見る。


「この事は誰にもいうなよ?

いったらその時は悪魔を見る事になるからな。」


二人は、ロビンフの部屋を後にする。


ロビンフは手に持っていた酒を飲みながら

空に輝く三日月を見る。


なぜヴィーナス様は200年間も俺に姿を見せてくれないのか。


貴方の騎士であるはずなのに…どうして!


ロビンフは手に持っていたグラスを床に叩きつけた。


前田春馬。

アイツは怪しい。

特に実技試験の時の変わりよう。

微かにヴィーナス様の気配を感じた。

しばし監視する必要がある。


アイツにユイの復活を邪魔されるかもしれない。


俺は床に散らばったガラスの残骸を見て

高らかに笑った。




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