18話勇者の願い
白服のおっちゃんは60歳です。
鮮やかな花々は、
そのみずみずしい色を失った。
俺から見える世界は、カラフルだったのが
モノクロの世界に変わってしまった。
しばらく俺は現実逃避をした。
そんな俺を見たカルタは、
俺を優しく抱いた。
俺は、また失ったのかと空を見上げる。
「ユイは、死んだのか?」
俺は、嘘だとカルタにいってて欲しかったのか、
確認するように聞く。
「ああ、昨日街の花屋に行った道中で
落雷に打たれて死んだらしい。
遠雷がこの街を通らず、王都に向かっていると
この街の人は聞いていたが
急にこの街に2日前に近づいていると聞いてな、
ほら、ユイって頭悪いだろ?
雨が降っていたのに家の花が枯れたからって
買いに行った時に落雷にあたってしまったらしい。
どうして…、どうしてあの時止めておけなかったんだろう…!」
「ユイと一緒にいたのか?」
「うん。
ユイの家で二人で編み物をしていたんだ。
そこで、外には行かせず
編み物をしていれば…、
というかなんでユイに落雷なんて落ちるんだよ!」
カルタは、歯を食いしばりながら
唇からは血が滲んで出ていた。
俺はユイの遺体の元に案内してくれとカルタにいう。
歩くこと数分、俺はユイの家ではなく、見覚えのある野原に着く。
「ここで、3人でガキだった頃いっぱい遊んだな、カルタ」
「うん、俺たちが15歳になる頃に急にロビンがこの街からいなくなった時には悲しかったさ。」
カルタは、俺の両親が死んだことを知らない。
俺の父が死んだ時に、母は街の住民の誰にも教えず、
俺と二人で夜逃げして貧民街と呼ばれるところで
暮らしていたからだ。
カルタにそのことを言おうか悩んだが、
今言うべき事ではないと俺は結論づける。
「それはすまなかったな。ユイはどこにいるんだ?」
「ここさ」
俺とカルタはこの野原の中で一つしかない大きな樹木のしたにたくさんの花が添えられ、
十字架の棒が根元あたりの土に刺されていた。
「ねー!3人で誰が一番早くこの木を登れるか勝負しよ勝負!」
「ユイ、危ないよ」
「カルタのいうとうりだよ」
「えっへん!私には治癒っていう能力があるんです!これなら木から落ちても大丈夫!」
「そう言う問題じゃぁー…、」
「ハハハ、カルタ、ユイがやりたいみたいだしやろうよ」
「えーーぇ」
「文句を言わないのカルタ!じゃあ一番高く登った人が
なんでも一回ビリの人に命令できるっていう事にするー!じゃーよーい、ドン!」
ユイは自分でスタートと言った瞬間に気にしがみつき、無邪気にはいはいと登り出した。
俺は、そんなユイに続いて登りはじめた。
遅れをとったカルタはため息をはき、
えいえい、と下からものすごい速さで登ってくる。
「あー!カルタ!能力使うのずるーい!」
ユイがほっぺを丸くしながら言う。
「使っちゃいけないなんて言われてないしー」
こう見えて、カルタは負けず嫌いだ。
最初は嫌がってやるものの、
結局負けるのは嫌だと言いいつも全力を出す。
俺も、ビリにはなりたくないとホイホイと登り続ける。
結局一位は、カルタで最下位はユイ。
いつも大体何をやってもこの順位だ。
「ずるい!ずるい!
能力を使うなんてずるいカルタ!」
ハァーッとカルタはため息をつく。
「でも、能力を使ってないロビンに負けてたじゃないか」
「ムゥーー」
ハハハ、と俺は笑う。
それに釣られ、二人も笑う。
「じゃあ一位の命令って事で
今から一ヶ月勝負事は無しね。」
ええぇー、とユイがうなだれる。
それでも、これからずっととか一年間とか言わないあたりがカルタらしかった。
やれるもんならやってみろ、
これがカルタスタイルだ。
そんな微笑ましかった過去を思い出し、
俺は軽く笑う。
それでも、花々に囲まれたユイの墓は
どこか現実味がなく、本当にここでユイが眠っているのかと思ってしまった。
どんなに綺麗な花も今の俺の前ではモノクロである。
もしかしたら、この時から俺の身体は成長しなくなったのかもしれない。
俺はこんなつもりで持ってきたわけではなかった
花束を墓に添える。
みずみずしい風が、野原を駆け、木の葉を揺らす。
花束を置いて、カルタと墓を後にした直後
背中に一度感じたことのある温かい気配を感じた。
俺とカルタは後ろを振り返ると、
ヴィーナス様がいた。
「お久しぶりですね、君。」
ヴィーナス様は微笑み、俺に手を振る。
カルタもヴィーナス様が見えているのかと思い、
カルタを見るが身体が硬直してまるで時間が止まったかのように静止していた。
「カルタは、何故動かないんですか?」
「カルタ?あぁ、彼のことですね。
彼には一度静止してもらったんだ。
今から君に話すことも聞かれたら困るし、
私の姿を見たら彼も興奮しちゃうでしょ?フフ」
前者はその通りだと思うが、後者はジョークだろう。
ヴィーナス様は、ニヤっと笑みを浮かべ俺を見る。
「君が王都にいるかと思って探したんだけどいなくてさ、苦労したんだよ?フフフ。」
「ヴィーナス様の近くにある木の元でねむる彼女を知っていますか?」
「知りませんよ?」
「そうですか、すみません…。」
「謝らなくていいよ。
さっきまで能力を授けた9人に祝いの言葉を伝えにいってて君が最後なんだ。
まずは、ありがとう。王を討ってくれて。
そして、おめでとう。君は英雄になったんです。」
さっきまではモノクロの世界だったのが、
ヴィーナス様が現れてから次第に世界がカラフルになり、かつての野原の色を取り戻していた。
「ヴィーナス様が直接あの王を討つ事はできなかった
のですか?」
「そうしてもよかったんだけど、
それじゃつまらないと思ってね、フフフ。
というか、人間同士の問題は人間が勝手に解決してくれればいいなって思ってたんだけど
あまりにあの王の支配力が強くてね。
だから私はあの王を心から強く憎んでいた10人に能力を与えたんです。
いやぁ、みんないい戦いっぷりだったね。」
「え?」
俺はまるで神の駒として遊ばれてたみたいな言い方を
ヴィーナス様にされて言葉を失った。
「でも君たちを助けたかった気持ちは本当だよ。
だから、君が願うことがあればできる範囲で一つ願いを叶えるよ。」
俺は、ヴィーナス様を信じていいのかわからなくなる。
ただ都合よく扱われているだけではないのか。
でも、ヴィーナス様は俺を救ってくれた。
だから…、
「俺はこの国の人々が平和に生きてくれることを望みます。そして俺は、貴方の騎士になりたいです。」
そういうと、ヴィーナス様は盛大に笑い、
「君、それはどちらも既に叶えられていますよ、フフ。
この国に、君たち10人とその子孫がいる限り
戦争になっても余裕で国民を守れますよ。
でも、平和に生きられるかは、国民次第だし
私がどうこうするのはできないかな。
後、既に君は私の配下。
つまり、私の騎士として既に君は活躍したんです。
だから、君が自分自身が真に欲する願いを一つ言って
欲しいな。」
ヴィーナス様は、敬語とタメ語をランダムに使うので
ちょっと面白いと思う。
「昨日、落雷で亡くなったある人を生き返らせたいです」
そう僕がいうと、ヴィーナス様は何かを考えるような仕草をし、僕に提案を持ちかける。
「うーん、亡くなった魂が浄化するのは死んでから3日後だから生き返らせることは可能なんだけどなぁー、
でも肉体を再生させてそこに魂を入れて生き返らせるのには200年に一度っていう制約があるしなぁー。
じゃあ…。
君に提案があります。
彼女の魂を保存して、
200年後に彼女の魂の器となる人に魂を入れるのはどうでしょう?
もちろん、魂の器となる人の魂は消滅してしまいますけど」
俺は、ユイが生きて帰ってくれるならなんでもいいと思い、ヴィーナス様にそうしてもらうように頼む。
「じゃあ君の願いは叶えるよ…。
彼女の魂の器になる人は、15歳かな。
私の〝予言〟って能力で見るとうん、
君は学園の先生をやっていて3年目には担任となった
クラスに王位継承権を持つ女性が生徒としています。
その子が16歳になる時に君が生き返らせたいと願った彼女の魂がその子に入り、その子は死に、彼女は生き返ります。これは貴方がそう願う限り確実に行われます。
忘れないでね?」
「はい、ありがとうございます。」
ユイを生き返せるのなら他人の一人が生贄になったとしてもありがたい話だ。
生贄になった子には申し訳ないが、
俺はユイともう一度喋って
今まで抱いていたこの気持ちを伝えたいんだ。
これが俺の願いだった。
ヴィーナスは、少し儚げな目で俺を一度見て
その後、空に顔をあげ気持ちを整理する。
「とりあいず、2日後にアマテラス王国誕生の式をするから王都に戻ってきてね。
じゃあ…、またね。」
「はい。」
そういうと、ヴィーナス様は6対の翼を大きく広げて
空高くに行ってしまった。
カルタは、元に戻ったのか歩き始める。
それに従い、俺も歩いた。
ー2日後ー
プンプクプーン!プンプクプーン!プンプンプププー!
大きなラッパの音が王都の中で響き渡る。
大きな列を作り、楽器隊が王都の正門から王城まで
行進して歩く。
その列の間に俺たちは立派な馬に乗って
ついていく。
俺と革命の時一緒にいた男の子は
白服のおっちゃんの背中に抱きついて馬に乗っている。
道中はどこもかしこも国民たちが警備隊に押されながらも道の両端で歓声をあげていて、
俺は、国民の笑顔が見れて満足だった。
「わぁー!小太鼓の音いいね!」
例の男の子が後ろかがみになって興奮している。
馬から落ちそうになった男の子をおっちゃんが助ける。
そんな光景に俺はほっこりする。
俺の目の前で白馬に乗るアンを見る。
やけに今日は綺麗で背中を綺麗に露出させている。
そして、馬に跨っている時により一層際立つ
弾力のありそうな尻。圧倒的俺好みでイィ!!
そんなこんなでニヤニヤしながらアンを見ていたら、
その卑猥な視線を感じたのか、アンは俺を見て
殺すといった視線を送られた。
…わぁー怖い。
そして10分ほど馬に乗っていると、
王城に着いた。
俺は難なく馬から乗り、周囲の歓声に手を振って答える。そうすると、国民たちはより興奮し、男女問わず黄色い声援を送って来てくれた。
おっちゃんは馬から降りる時に転げ落ち、
男の子はするりと馬の背中を下り尻尾からポトッと落ち、尻をついた。
…なんて情けないんだ二人とも。
戦っている時だけは頼もしい男の子も日常では
ちゃんと男の子しているんだなと俺はしみじみと思った。
それからなんやかんや事は進み、
ヴィーナス様が空から現れた。
その瞬間、席に座っていた俺たち10人はすぐさま
ヴィーナス様に向かってひざまづく。
その圧倒的な美しさを国民は見て、神だと確信する。
「表をあげてください。
此度は、素晴らしい活躍をしてくれました。
そんな英雄となりし君達に二つ名を与えます。」
国民はどっと盛り上がる。
灼熱王、アン・セレスティーゼ
氷結王、ルカ・シャークリッド
風雷王、バルタ・バルト
怪力王、カイザード・メアリジェーン
誘惑王、メルヘル・ニーヴィル
狂乱王、デイン・タナトス
通信王、ヤーデルト・ハス
理想王、バートル・アマテラス
創造王、有賀太郎
勇者、ロビンフ・ヨルムンガルド・ワン
なぜ俺だけ王がついていないんだ?
俺は腑に落ちないと感じた。
まぁ今は考えなくていいかと俺は思った。
王を討った次の日、
俺たち10人は誰が王に向いているかと話し合った末、
バートルが一番向いているということで、
バートルがこの国の王となって、
アマテラス王国を新たに誕生させた。
最初は皆に俺が王になればと言われたが、
俺には果たすべき目的があったので断った。
この事は、俺たち10人しか知らない真実で、
この国の歴史学のあらゆる資料では10人が戦って一番強いものが王となったと記載されている。
そして、俺は学園の特任教師として働き始めながら10年ほどヨルムンガルド騎士団の団長を務めたが、俺がいなくても騎士団は大丈夫だと判断したタイミングで俺は団長という座を降りた。
そして、貧民街で貧しい生活を送る人たちに今まで稼いだ金を使って、誰でもできるような仕事を作ったり
疲れを癒せるでっかい銭湯を作ったりした。
また、貧民街の複数の箇所に
創造王と通信王が協力して作ったという、
確実にこの街に暮らす人が買うことができないテレビというものを設置した。
そこらが次第に住民の憩いの場となっていった。
最初はテレビが白黒で画質も荒かったが、
研究に研究をあいつらが重ねてついに、
画質も良いカラーテレビを作り上げた。
そして、今現在闘技場で俺は戦っている。
バートルとアンは結婚したらしく、
その子孫が今俺の目の前にいる奴って事か。
そして…、カルミアって奴が
ユイの魂の器となる者か…。
俺は後1年でいなくなるであろう
カルミアを見て葛藤が生じる。
それは俺が願った事への疑念だ。
そんな事を考えているうちに
カルミアの全力が俺を殺ろしにかかってきようとしている。
だが、俺は避ける事なくカルミアの会心の業火を喰らう。
肉体が滅びる。
そして、業火の力を吸収し、
俺は強くなって肉体が再生する。
プンプルプンプルプンプルプルプルーン。
3分がたったようだ。
俺は、彼女の肉体を傷つけないようにした。
また、イチ教師として彼女が生きている間は
全力で教育するつもりだ。
…悔いのないように。
あの二人の子孫とは思えないほどの性格をしている。
彼女をどうやって正しい方向に導けるかを俺は
轟々と吹く嵐の中考えていた。
人間は平等だ。
そんな綺麗事を並べられるほど俺はできた人間じゃない。
というかそもそも人間じゃない。
たしかに、アイツのいっている事の中に含まれる感情は理解できるところもある。
だが…。
…今日のところは彼女を休ませよう。
「お疲れ様だぜ、カルミア」
カルミアは既に意識を失い、どこだらけの地面に倒れていた。
裸のカルミアを先生は持ち上げ、治癒士の元へと運んでいった。
突然来た嵐は、試合が終わるのと同時に闘技場から過ぎ去り、お日様が次第に顔を出し始め
青い空に虹がかかっていた。
そんな中、お日様の日が地面にわずかに当たりその場には先生がいた。
次は、坊主と有賀だな、
出てこーい!
僕と進之介は秋良に見送られながらステージに向かった。
創造王の外伝みたいなの書いてみたいなと思ってます。
読んでいただきありがとうございます!




