10.5話医療室
目が覚めると、そこには、あたり一帯白で埋め尽くされていた。
「あら、目を覚ましたみたいね。」
白衣を着て、メガネをかけた女性がいう。
「ここは、どこですか?」
僕は、闘技場で戦い終わった直後からの記憶がなかったので聞く。
白衣を着た女性が僕の近く、いや隣にいるだろう人の
治療をしながら言う。
「ここは、医療室よ。
君は、能力を使用しすぎて力果てた様子だったわ。
そして、今私が治療している子はあなたと戦っていた子だとアイツから聞いたわ。
安心して、この子に命の別状はないわ。」
そう聞いて、僕は安堵する。
そしてハッとする。
「今何時ですか?!」
白衣の女性は、腕時計を見て、冷徹な目で
「今は13時ね。
それと、みんなはもう最初の授業を終えて寮に行ってるわ。」
僕は、白衣の女性の助手のような女性から温かいミルクを差し出してもらった。
とてもまろやかで美味しい。
この国ではミルクは高級品なので、
あらためて学園の凄さに驚かされる。
「まだ起きたばかりで完全になったわけじゃないので、
今日のところはここで寝ていてくださいね。」
キューピットのように美しい助手らしき人が
僕の心に微笑んで矢を放った。
やめて!
僕の心には決めた人がいるんです!
にしても…と白衣の女性が僕に向かっていう。
「よくここまでの傷をこの子に負わせたわね。
あなたひょっとしてかなりすごい人なのかもね。」
「生まれたときから〝ひょっとして〟ならよかったんですけどね、ハハハ。」
白衣の女性は、僕が何を言っているのかわからないといったようなキョトンとした顔をする。
「…、ん、ん、?ここは?」
どうやらオルガさんも起きたみたいだ。
すると、僕が起きた時から今まで冷酷な姿勢を貫いてきた白衣の女性が、
一輪の美しい薔薇が急に花咲くように笑顔になり、
「メアリちゃん!起きたのね!大丈夫だった?」
あれ、この白衣の女性ってこんな人なの?
僕は俗に言う〝ツンデレ〟と言うやつを目撃したのかもしれない。
いや、そこまでツンツンもデレデレもしてない気が?
……。
よし、前言撤回だ!
「えぇ、マリーさん。…、私は負けたのね。」
そうオルガさんが呟き、僕と同様白衣の女性の助手らしき人から温かいミルクをもらうときに僕と目が合ってしまった。
「こ、こんにちわ…」
オルガさんは、頭を抱えるようにしてため息をつき、
ミルクを一口飲んだあと再び僕に向き合う。
「あの時は、酷いことをいってごめんなさい。
つい戦う時に自分が制御できなくなってしまって。」
あの時の頭のおかしい人かと思っていたが、どうやらそうでもない。
「いえ、ああいうのは日常茶飯事でしたから、ハハ」
そういうと、オルガさんは納得しないような顔をして、
「いえ、本当にごめんなさい。前田くん。」
そういい、まだ痛むであろうお腹を動かして、
頭を下げる。
「そんな、そこまでしなくていいですよ!
僕も、その傷をオルガさんに与えてしまってすみませんでした。本当ならもっと加減できたと思うのに…」
そういうと、オルガさんは口を膨らましムスッとして、
「私が弱いって言いたいのかしら?言いたいのかしら!
ふん!もう前田くんのこと嫌いになっちゃったんだから!もう知らない!」
と顔をくいっと僕からそらして言う。
僕は、それについ笑ってしまった。
すると、くいっと僕から外していた顔を戻し再び僕の顔を見て、両手をぎゅっと握りながら
しばらくして………。
「ヴェーん!まりーざぁーん!わだじよわいっていわれだぁー!ウェーん!」
マリーさんという白衣の女性は、はいはい、もう大丈夫ですよと泣きじゃくっているオルガさんを慰めつつ、
僕の方を向いて、軽蔑したような視線を送り、
「あなた、最低な男ね。帰って!もうここから出ていきなさい!」
えぇー。
マリーさんの僕に対する目とオルガさんの変わりよう。
オルガさんの精神年齢は戦っている時はある意味
一周回ってやばいやつって事で高いと思っていたけど、
今はなんというか、小さな頃の僕のような感じで
かなりお子様って感じになっている。
〝これがギャップっていうやつか!〟
僕はこれに萌えをつけようとしたが、
マリーさんの軽蔑したような冷徹な目と、プンスカとしているであろう瀬奈を考えあえなく撤去される形となった。
「いやぁ!違いますよ!
ただ…………、」
「「ただぁー?」」
二人にぎょろっとした視線を追加で送られる。
「なんでもないです……」
そういった後、マリーさんにほうきでゴミをはたかれるように医療室を追い出された。




