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その日が来るまで  作者: 蔵 昭健
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真実

第九章 真実 


そして十一月になった雨の日曜日、緒方から連絡が来た。ハッキング事件の後は直接頭の中へ語り掛けてくる方法で連絡を取ることになっていたのが、何の前触れもなく突然声が響くのはやはり驚く。

 緒方が言うには、この研究所の存在が気に食わない権力を持っている地球人が、この研究所の処遇に不満を持ちやめていったヒューマンデバイスを探し出し、高額な報酬で買収しハッキングをさせたのだそうだ。

「都築さん、そのヒューマンデバイスの居所もつかみました。じっくりと話し合い納得してもらったので、彼にもう一度ここの所属になることを奨めました」

俺は正直驚いた、事の発端は彼の恨みだったのに、それを許し、もう一度チャンスを差し出す。これがツールアスク星に、競争も、差別もなく、ただ愛があるのみという原点なんだろう。

「緒方さん、その考え方が、ツールアスク星人なんですね。心から尊敬します」

「ありがとうございます、間違いは、誰もが起こします、それを許し、一緒に生きてゆく、そんなところでしょうか」

頭の中だけの会話だが、緒方の笑顔も見えた。

「それから、都築さん、明日こちらへ、いらっしゃいませんか?佐伯も会いたがっているし、佐伯がボスと呼んでいた人物へとも会って頂きたいと思っています」

「佐伯さん、元気ですか?しばらく会ってないしね。それと、ボスですか?とても気になります、明日必ず伺います」

「ありがとうございます。オートモービルのプログラムもアップデートしましたので、いつものように呼び出していらしてください、お待ちしております」

「承知しました。では、明日」

テレパス会話を終えた。


レセプターへカフェオレをオーダーした。

出来立てのカフェオレを飲みながら、ハッキング事件を思い返してみた。 

研究所のセキュリティシステムが堅牢なため影響はなかったが、それに合わせたかのように、ゴシップ専門雑誌の週間【春夏秋冬】がこんな記事を載せた。


ついにその全貌を暴く

《ブレーン開発研究所財団は詐欺団体》

能力があると言っては、研究所へ誘い込み洗脳してから世間に紛れ込ませていた!

元研究所ヒューマンデバイス、独占取材


ハイテクの時代になっても、こんな大衆雑誌のゴシップ記事を鵜呑みにする人々がいるのだろうか、情報の入手先は、今やパソコンやスマホでネットニュースから核心に近い部分を得ることができる、そして個人の情報をSNSや動画配信サイトを使って拡散できることも当たり前になった。ものすごい早さで、変化している。

だがこれらを使いこなせる人達は良いが、それが苦手な人達は従来通りの方法で情報を得ることになる。

それは偏った放送を流すテレビや雑誌となる。見たもの聞いたものを、そのまま信じてしまう。私は正しいと拳を振り上げる。私も同じと隣をみて安堵する。こうなってくると何が真実なのかを見極める能力が必要になる。

だが、SNSだって同じことだ、受ければ良い、見映えが良ければフォローワーが増える、【いいね】がたくさんつけば満足、人より上だという自己満足、果てはアイツが悪い、悪は封じ込めと、ネット自警団がネット上の情報だけで、とことん追い詰めて息の根を止める。どちらが【悪】なのかわからない。これもやはり深く根付いてしまった競争心理の影響だろう。勝ち組と負け組の差別を生み出してしまったのだ。

だからこそ今、地球人が、情報を処理する能力、ツールを使いこなす能力、それをどのように使い、共有する事ができるか問われているのではないか?その答えに近づくためにも、我々ヒューマンデバイスが存在するのではないのだろうか。

 この研究所を疎ましく思っている人々は、得体のしれない研究所というレッテルを貼って糾弾したかったのだろうが、研究所のハイレベルな技術やそれで培ってきた功績を知っている世界の支援者からは、ネット上のニュースやSNS上で、記事を書いた記者や雑誌社は笑いものになっていた。週刊【春夏秋冬】は超ゴシップ雑誌になり下がったとSNSで吊るしあげられ、炎上騒ぎになり、とうとう雑誌の不買運動に繋がり、この記事の編集部は責任を取らされ、解体される事になった。まぁ自業自得だろうが、なんとも複雑な心境だ。

ツールアスク星のように競争もなく、差別もなく、すべて愛で満ちている世界になるためには、地球はあと何年?いや何万年も必要なのかもしれない。


第十章 再会


突然何もない空間へ放り出された。目を凝らして見る、そこは宇宙空間のようだ、足元には地球が蒼く光っている。

また、同じ夢を見ている。

この後はものすごい衝撃で身体が弾き飛ばされるはずだ、がこれもまた違った。

俺の両足の裏側から一本ずつ金色に輝くワイヤーが出てきた。その二本のワイヤーは曲線を描いて頭の真上から入ってきた。貫通したワイヤーがまた両足の裏から出てきた。少しずつ角度を変えながら入っては出るという事をくり返し、俺の身体全体が光のワイヤーでこしらえた球体の籠で包まれてしまった。

そのまましばらく宇宙空間を漂っていたが、今度は籠から延びたワイヤーが蒼く輝く地球へ伸び始めた、ますます強く光り太くなり、毛糸玉を作るように何度も地球を回り、とうとう光る籠で包んでしまった。そしてより一層激しい光で輝きながら俺と一つに、つながった。

その瞬間俺の脳へ

言葉、人類、建物、泣き顔、怒り、笑顔、音楽、騒音、チェスナットウィルス、工場、子供、動物、排煙、誕生、植物、暗闇、恐怖、安らぎ、お金、戦争、水、光、暴力、教会、信仰、遺跡、車、忖度、・・・おそらく、地球上に存在するありとあらゆるすべてのモノや感情が、とめどなく一気に飛び込んで来た。

もう限界だと思った瞬間、地球と繋がっていたワイヤーが切れた。その反動で音のない世界へ俺はまた光る籠のまま放りだされ、スピードを増しながら移動をはじめた。地球は小さくなり、月が視界に見え、それさえ遠ざかってゆく、とうとう太陽の輝きだけしか見えないところまで来てしまった。上も下もない宇宙空間で漂いながら夢なのか、現実なのか区別かつかなくなっていた。

そのときだ。

「わしじゃ、オーラじゃ」とあの古風な言い回しのオーラの声が聞こえた。

見上げても、足元を見ても籠の隙間からは、漆黒の宇宙空間しか見えない。

「そんなところにはいない、お前の頭、いや、心の中にわしはおる」

「以前、言ったであろう、いつも一緒じゃと」

「やっとこの時が来たな、待っておったぞ」とオーラが言った

「オーラ、俺は何故ここに浮かんでいる?」

「教えてくれ待っていたとはどういう事なんだ」「これは、現実なのか?」

俺は矢継ぎ早に聞いてみた。

「存在は意識を持つか否かで決まる、そして、現実か幻かも、さほど重要な事ではない。今、起きていることに向き合い理解することで、もっと大切な事が見えてくる」

「ここへ来たのは、お前の意思で来た事をこれからも忘れてはいけない」

「常に、その先にあるものを見にいくのじゃぞ」その声を合図にまた金色の輝く籠は動き始めた。

「なんども言うが常にわしは、お前と一緒じゃ」その声が次第に遠ざかって行く。

「その先にあるものか、その先にあるもの」

といつの間にか繰り返し呟いていた。その声に重なりアラートが鳴りだした。

え、また、緊急事態か、どこで鳴っている?

ここで、目が覚めた。

鳴り響いていたのは、緊急事態を告げるアラートではなく、モバイルのアラーム音だった。

そうか、今日は研究所のボスへ逢いに行く予定だった。アラームを止め、ブラインドを開けると、眩しい朝の陽ざしが飛び込んできた。


オートモービルがいつものようにせり上がって所定の位置で止まった。

「おぉ、白い車体か」緒方がアップデートされたと言っていたが、色もアップデートしたのだな。

「おはようございます、都築さん」窓が開いて佐伯の声がした。俺はその声に驚いてドア越しに覗き込む。

「おぉ? 佐伯さん」

佐伯はいつもの、あの笑顔で

「お迎えに上がりました」と少しおどけて、車を降り俺の側のドアを開け「どうぞ」と言って乗せてくれた。

車内へ乗り込みシートベルトを閉めながら、

「白に変わったんだね」

「はい、研究所カラーに統一という事と、新しいスタートの意味も込めて変えました」

「それから、今日は窓にスクリーンを下ろしません」

「え?、研究所の場所は秘密なんだろう?」

「確かに、そうですが、都築さんへはもう隠す必要がないと思いますから」

専用エリアの床が消え、モービルが宙に浮かんでいる。十秒ほど下降して、次にモービルは浮かんだまま、前進を始めた。通り過ぎる照明が勢いよく後ろへ流されてゆく、ますます加速されそして光の帯状になり、さらに虹色のチューブの中を高速で移動している。この速度なのに身体への重力は全く感じない。

突然チューブが消えた、佐伯が

「都築さん、ほら」とフロントガラスを指さす。

その声を合図したかのように、虹色が消え、漆黒の空間の中に蒼く地球の蒼よりさらに蒼く輝く惑星が視界に飛び込んで来た。

「佐伯さん、この星って、ひょっとして・・・」

「そうです、我々の星、ツールアスクです」

「俺は、いつも、ここへ来ていたのか」

モービルは加速したまま惑星へ降りて行き、同じように光のチューブへ入り減速をしながら駐車場のようなところで停止した。

「このモービルが宇宙船だったんだね」

「まぁ、そういうことです」といつもの笑顔だ。モービルはそのまま上昇して行き、いつもの見慣れたポッドへ到着した。

あっという間だった。俺は外が見えない時は到着までものすごく長く感じていた。

車を降りながら

「佐伯さん、ここまでの所要時間は、いつもと同じ?」と聞いてみた。

「はい、いつも通りの、八分十秒です」

と振り返って応える。佐伯は

「僕はここで、失礼します」と言って部屋のドアを開けてくれた。

俺の専用の部屋へ入る。緒方がいつもの白いスーツで出迎えてくれた。

「綺麗な星でしょ、ツールアスクは」

といって、右手を差し出した。

「はい、蒼く、とても蒼く輝きその中に、なんだろう、うまく言えませんが、優しさを感じました」と言って握手をかわした。

「地球からは約三十七光年離れていますが、あの小型モービルは、光速の七百五十倍の速さで移動が可能なんです」と緒方は言った。

そうか、だから八分十秒で到着か。

おかけくださいと緒方は言い、いつもの白いテーブルの席についた、俺の好きなカフェオレが置いてある。

「都築さん、昨夜オーラと再会しましたね」、俺のことはもう周知の沙汰なんだな。

カフェオレを飲みながら、

「ええ、いつも一緒だと、今回も言われました」と応えた。

「そのオーラへ直接逢ってみませんか?」

「え?、オーラは、俺の中の意識では?」

と聞き返す。

「そうですね、確かにそれも、ありますが、

直接聞いてみてはいかがでしょう」

と、にこやかに言って、

「では、ごゆっくり」と隣室へ姿を消した。

直接?逢えるのか?本当に、どういうことだろう?と天井をにらみ考えを巡らしていると。

「やぁ、ひふみ君」と懐かしい声だ?

驚いて、声の方を見た。

え?まさか・・・そんなはずは・・・

「しばらくだったね、ひふみ、いやもう都築さんだね」と笑っている。

俺は茫然と立ち上がり、何か言おうとするが言葉が出ない。

「驚かせて、すまないね」といって俺の右手を取って握手をした。俺は理由が分からず。まだ、突っ立ったままで放心状態だ。

「つ、筒井さんですよね?」やっと言葉がでた。

「なぜ、ここに?」緒方は、オーラに逢えると言っていた。そもそも、ボスへ会う予定になっていた筈だから出向いたのに。一体何がどうなっているのだ・・・、

頭の中で混乱が続く、こんな時あの柱に触れるといいのだが、デルタ型を見た時と同様に何も出来なくなっていた。

「そう、筒井だよ」

「さて、どこから、話そうか・・・」

まぁ座ってと言われ、筒井の顔から眼を離さずに座った。


 筒井は俺がマミーレコードへ入った時の最初のプロデューサーだった。早く親父を亡くした俺の父親のような存在だった。

「実は、都築さん、あなたの中の覚醒するためのスイッチが、誤動作をしないよう見守るために、あなたのプロデューサー役を任されたのです」

「我々の、仮死状態で生まれて来た人への対応はご存知ですよね」

そうだ、そのことは、佐伯からも、緒方からも聞かされていた、

「はい、知っています」と応える。

「覚醒したことを私利私欲へ向ける場合や、またそのことで心のバランスを壊してしまう場合もあるので、そのように対応しました」

「その能力は特別なものですが、それを使い、己は選ばれし神の使いと言って、人々を騙し信じ込ませ貢がせ、権力を手に入れてしまう地球人もいます」

「あまりの情報の大きさに対応ができず、自らを傷つけ命を落としてしまう事もあります」

「誤解のないようにお伝えしますが、我々は、脳を作り直すような行為は一切やっておりません。脳を百パーセント使用できるように脳の回路を繋げて差し上げているだけです」

「通常は必要最小限の回路を使っていますが、覚醒すると脳に繋がる全ての回路が動きだす仕組みです」

そうか、見守ってくれていたのか、

俺は筒井のあの優しい言葉を思い出した。

「君は、そのまっすぐな心でこれからも行きなさい」こう言い残して、筒井はデビューを果たした俺の前から消えたのだった。

「なぜ、あの時、急にいなくなったのですか」ずっと聞けなかった事を今聞いてみた。

「いや、あの時はすまなかったね」といって頭を下げた。

「ひふみ、いや都築さんの・・・」

「ひふみでいいです」

「ひふみくんは、覚醒をしても悪用や壊れることはないと確信したのでね。離れたところから見守ることにしたんだよ」

「そうだったんですね。とても、さみしくて辛かったけれど、筒井さんのあの言葉を俺の支えにして生きてきました」

「ありがとう、ひふみ君」あの優しい声が部屋に響いた。

「ところで、筒井さん、あの時と全然変わっていませんね? ツールアスク人は年を取らないんですか」

「ははは、そうか変わってなかったか、もっと老け込んだ姿にするべきだったかな」と笑いながら言った

「今、ひふみ君が見ている我々の姿は、このように見えるように操作をしているからだよ」

またもや混乱する事を言い出した。

「普段の我々の姿は、可視できないエネルギーのような姿なんだよ、だからこの体はケースのようなものだ」

「つまり、存在は意識を持つか否かで決まるのだよ」

「あれ?その言葉、確か・・・」

すると筒井は

「そうじゃとも、それが、一番大切な事じゃ」と、え?その言い回し、これも?

「そうじゃ わしじゃ・・・」と笑いながら言っている。

オーラも筒井さん?筒井は声をもどして、

「一度に説明すればいいんだろうが、やはり順を追って説明した方がいいと思ってね」

「ひふみ君は、いろいろな、経験を積み、良いこと、辛いこと、悪しきこと、地球人のすべてを経験して来た、佐伯くんと、出会ったあのライブハウスの祥太郎、あれもこの星から送り込んだエージェントだったんだよ」

もう、頭がパンクしてしまいそうだ。

俺がやっていたライブハウスは【ライブハウス六〇一】というのが正式な呼び方だ。このライブハウスで雇ってもらおうと思ったのも【六〇一】の数字に目が留まったからだ。

それは、筒井さんと一緒に、俺のデビュー曲をレコーディングしたスタジオナンバーが【六〇一】だったからだ、

そうか、そういうことだったのか・・・。

「お、合点がいったようだね、もう一杯、お代わりするかい?」筒井は笑って、部屋の隅に置いてあるレセプターへ

「カフェオレ、ふたつ」とオーダーした。

カップを俺の前へ置いて、

「祥太郎、芝居上手かっただろう?」

そうだ、祥太郎さんは筒井さんの甥っ子だと言っていた。

「見事な甥っ子ぶりでしたよ」

「ははははは・・・」二人で笑った。

「ひふみ君の歌はもちろん大丈夫だし、店の事も覚えて来たので、店を祥太郎からひふみ君へバトンタッチしてもらったんだよ」

「引き継いだのが三十一の時でしたから、あれから三十年経ちました」

「そうだったね、そこで、佐伯へ登場してもらった、もう、アイツときたら、こちらからは、常にひふみ君をみているからわかるけど、ひふみ君側は、何も知らないわけなのに、いきなり行きましょうって」

「もう、いろいろな事には、慣れてきましたが、ツールアスク星とか研究所の話はさすがに心の準備が必要でした」

「そして、せっかちさんは何処にでもいるものだなと思いました」また二人で笑った。

廊下で待機している佐伯がくしゃみをした。


「地球へ出向き、見守っている時は、地球人と同じような、行動を心掛けている。気に入ってそのまま居ついてしまったツールアスク人もたくさん存在しているんだ」

「我々はエネルギーだけど、感情は持っているのだよ、そして感情の中には、競争や差別という事自体が無意味なことなのだ、唯一の感情は愛のエネルギーなのだ、だからこれさえあれば何もいらないのだよ」

佐伯からも聞いてはいたが、エネルギー生命体だったからなのだと、やっと納得できた。しかも、愛のエネルギーだけ・・・

なんと素晴らしいことなのだろう。

続けて筒井は

「時に地球人はこの世に神はいないのかと嘆き悲しむけど、そんな時には、神は外にあるのではなく、自分の中に存在する事を、早く気が付いて欲しいと思っているのだ」

「そして、それに気が付いた人は祈りの時も、お願いする事をやめ、ただ感謝する言葉に変わっていくのだよ」

例えば、と言って筒井は続けた。

「《神様どうか私を幸せにしてください》

次の日も、その次の日も、いろいろなお願いばかり、挙句に《こんなに願っているのに全然叶わないじゃない、神なんていないじゃない》と、こんな風に思っている人がいたとしよう」「そんな時、我々は耳元で、《たまには感謝してみたらどうだい》と呟くんだよ。それが聞こえた人は、そこで初めてお願いをする強欲さに、気がつくのだよ」

「《今日も命をありがとう》《守ってくれてありがとう》と感謝の言葉は、お願いする言葉より、はるかに少なくて済むことにも気がつくのだよ」

「こうなると、自分と他人を比べることもなくなって、心が安寧に穏やかになってくるんだ」

そうだ。願い事ばかりじゃダメなんだ、分かってはいるが、言葉にしなければ。自分の中に存在する、神へ感謝の言葉を伝える。

これだ。これだ、これなんだ!

都築は地球からはるか三十七光年離れたこのツールアスク星で、とうとうこれからの生き方の道を見つけた。

筒井さん、もう一つ聞いてもいいですか?

「なぜ、オーラの時はあのような言い回しだったんですか」

「あぁ・・なんだか思わせぶりの言い方だったけど。普段通りだと声で僕だとわかってしまうでしょ、ひふみ君は必ずここまでやってくると思ったから、正体を隠していたのさ」

「オーラとはいい名前を思いつきましたね」「そうだね、地球では光とかエネルギーと通じる言葉だからね」そして、

「もう一つ、気になることが」と聞いた、

「あぁ、ボスと呼ばれてる事だね」

「ちょっと待って、飲むよね」と言って

コーヒーをブラックで二つとレセプターへオーダーする。

今度は俺がコーヒーカップを筒井の前へ置いた。

「簡単に言うと、ここの研究所の中で、僕のキャンドルへ灯した火が一番古いから、ボスと呼ばれているのだろうね。この星でも年齢という概念は存在するのだよ。ただ、キャンドルはいつか消えるけど、我々はそんなことは起きないけれどね」といつもの笑顔だ。

「へぇー、永遠の命という事ですか?」と聞き返す。

「さぁ、それはまだ、わからないけれど、そこがエネルギー生命体の一番気がかりなところだろうか?」

「ビックバンを起こしてから、ずっとエネルギーは保っているけれど、いつか消え去るのかもしれないね」

筒井の話に何とかついてゆくけど、まだまだたくさんの事を聞きたいけれど、もう頭では理解ができない状態になってきた、あの頭の中の柱もいつもより輝く感覚が短くなっていて、もう限界だと言っているようだ。

「筒井さん」俺は真っ直ぐに彼の目を見る。

「俺を導いてくれて感謝しています。ここで筒井さんが伝えてくれた事は、また明日からの俺の糧となり新たな一歩となりました、ありがとうございました」と」言いながら涙があふれてくるのがわかった。悲しいのでもなく、感激の涙でもなく、あえて言うならば心が浄化され、あふれて出たと言うのが、ぴったりあてはまる。俺は立ち上がり

筒井の両手を取り、俺の両手で包んだ。

「ありがとうございます、そしてこれからもよろしくお願いします」

筒井の身体が消え始めそれと入れ替わるように、とても眩しく輝くオーラへ形を変えて行く、俺の身体もオーラに包まれる。

とても気持ちが良く、幸せな気持ちになり、良い香りまでして来た。

「ひふみ君、こちらこそ 

ここまで本当に良く来てくれたね

どうもありがとう。これからもずっと君と一緒だよ」頭の中へ聞こえて来た。

そしてと続けて

「わしはいつでもお前の中にいる、いつでも一緒じゃ」とあの言い回しで語りかけてくれた。オーラはその後もずっと俺のことを包んでくれていた。その間中、良い香りと、不思議なメロディがずっと聞こえていた。

やがて、すっとオーラが消えいつもの部屋の明るさになった。


《続く》


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