表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炭鉱奴隷の俺が古代兵器「鉄騎」の力で成り上がる  作者: お湯0uy2
サクスへの帰還

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
81/82

もう一つの密偵

夜。


学園の消灯時間を過ぎていた。

寮の窓から漏れていた明かりも、一つ、また一つと消えていく。

静まり返った校舎。


風だけが木々を揺らしていた。


その頃。


学園格納庫の一角。

整備を終えた陽光の足元に、クニヒトは一人立っていた。

整備班にも席を外させている。


誰もいない。


彼は懐から小型の無線機を取り出した。

軍用の暗号通信機。

アンテナを伸ばし、小さく呟く。


「我クニヒト傘応答せよ」


短い雑音。


数秒後。


「こちら先行観測係」


落ち着いた男の声だった。


クニヒトは壁にもたれかかる。


「報告せよ」


「本日二十一時頃、王都方面にて試験演習を確認」


「内容は」


「黄色に塗装された鉄騎一機」


「王家工房試験場にて機動試験を実施」


クニヒトの表情が少しだけ変わる。


「黄色……」


「詳細は」


「望遠観測のため不鮮明ですが、量産機とは外見が異なります」


「頭部形状変更」


「腕部追加装甲」


「肘部に突起物を確認」


「武装は未確認」


少し間が空く。


「推定」


「新兵器、あるいは試作機」


クニヒトは腕を組む。

昼間にハイドたちが呼び出されていた理由。

その答えが、ほぼ確定した。


「……そうか」


通信は続く。


「なお」


「別件です」


「言え」


「学園周辺に監視対象を確認」


クニヒトの目が細くなる。


「人数」


「鉄騎一機」


「一機か」


「はい」


「所属は」


「不明」


「理由」


「偽装されています」


「迷彩網および植物によるカモフラージュ」


「山岳地帯に伏せた状態」


「熱源も極めて少なく抑えられています」


クニヒトは無言になる。

相当慣れている。


軍隊の隠蔽行動だ。


「形状は」


「判別不能」


「黒色であること以外、明瞭ではありません」


「所属国は」


「判定不能」


「旧型か」


「新型か」


「それも不明です」


観測班の男が続ける。


「距離が遠く」


「偽装精度も高いため」


「自機を除き、鉄騎の識別に必要な特徴を確認できませんでした」


「確認できたのは」


「鉄騎である」


「それだけです」


クニヒトは静かに息を吐く。


「監視対象は学園か」


「その可能性が高いと判断しています」


「王都ではなく」


「学園周辺を長時間監視しています」


クニヒトは考える。


学園。

ハイド。

イーリス。

デューク。

王家工房。


そして黄色い試作機。


どれを見に来たのか。


あるいは。


全部か。


「接触は」


「ありません」


「発見された様子もありません」


「引き続き観測を継続します」


「よい」


クニヒトは短く答えた。


「こちらからは動くな」


「正体が判明するまで監視のみ」


「了解」


通信が切れる。

格納庫に静寂が戻った。


クニヒトは陽光を見上げる。


決闘。

同盟。

学園。


それらは表の出来事。

だが。


裏では別の者たちも動いている。


「……監視されている、か」


小さく呟く。


その声は誰にも聞こえない。

陽光は無言で立ち続ける。


機械は何も語らない。

しかし。


皇帝の勘が告げていた。


黄色い試作機が完成した時期。

監視している正体不明の鉄騎。

偶然にしては出来過ぎている。


「面白くなってきた」


クニヒトは笑う。

恐れてはいない。

むしろ未知の相手が現れたことを歓迎しているようだった。


だが、その笑みとは裏腹に、彼の頭の中では一つの結論が形になりつつあった。


「……少なくとも」


「サクスだけを見ている者ではないな」


夜風が格納庫を吹き抜ける。


遠く離れた山中では、迷彩網を被った黒い鉄騎が今も微動だにせず学園の方向を見つめ続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ