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炭鉱奴隷の俺が古代兵器「鉄騎」の力で成り上がる  作者: お湯0uy2
サクスへの帰還

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黄色いコピー



王家工房。


普段は技術者や整備士しか立ち入らない巨大施設へ、ハイドたちは呼び出されていた。


「また何かやらかしたか俺」


工房へ向かう途中でハイドが言う。


「心当たりがあるのですか」


イーリスが聞く。


「ない」


「なら問題ありません」


「本当に?」


マリーが苦笑した。


アルノーも肩を竦める。


「女王陛下直々の呼び出しだからな」


「怖い事言うなよ」


一行は工房最奥部へ案内された。


巨大な格納庫。

数十機の鉄騎でも余裕で収容できる広さだった。

その中央。


シャルロット女王が立っている。


周囲には技術官。

記録官。

工房技師たち。


そして。


巨大な布が掛けられた何か。

ハイドは嫌な予感がした。


「……なんだあれ」


女王がこちらを見る。


「来ましたわね」


「呼ばれたので」


「当然ですわ」


シャルロットは少し機嫌が良さそうだった。

珍しい。


工房関係になると女王は妙に楽しそうになる事がある。


「今日は見せたい物があります」


女王は技術官へ合図した。

巨大な布が外される。


一瞬。


誰も声を出せなかった。


挿絵(By みてみん)


「……は?」


ハイドが最初だった。


目の前に立っているのは。

デュークだった。

いや。


違う。


似ている。

だが違う。

まず色。


鮮やかな黄色。


目立つ塗装。

次に頭部。

デューク特有の長いアンテナが無い。


頭部形状も少し違う。


胸部。

腕部。

脚部。


シルエットは非常によく似ている。


だが細部は別物。


そして。


肘。

袖部。

そこには鋭いスパイクが増設されている。


アルノーが目を見開く。


「これ……」


マリーも驚いていた。


「デューク?」


「ではありません」


女王が即答する。


「正確にはサクス三型をベースに再構成した試験機です」


技術官長が前へ出る。


「仮名称、サクス試作四型」


ハイドは機体を見上げる。

近くで見ると違いが分かる。


構造が違う。

細部が違う。

しかし。


遠目なら間違える。

かなり似ている。


女王が説明する。


「炭鉱から回収された同型残骸」


「デューク系列の部品です」


「それらを解析し、複製可能な部品を再現しました」


技術官が続ける。


「腕部関節」


「脚部フレーム」


「外装形状」


「駆動補助構造」


「可能な範囲で再現しています」


ハイドは思わず言う。


「作れたのか……」


「完全には無理ですわ」


シャルロットは首を振る。


「だから量産型を利用しています」


「内部の根幹部分は量産型」


「サクス三型そのもの」


「ただし外装と一部構造を置き換えています」


イーリスが静かに機体を見ていた。


「重量増加率十二パーセント」


技術官たちが驚いた顔をする。


ハイドが慣れた顔で言う。


「また見ただけで計算したのか」


「はい」


イーリスは当然のように答えた。

シャルロットは少し満足そうだった。


「さすがですわね」


そして。


頭部を見上げる。


「なお」


「頭部機銃は撤去しました」


ハイドも気付いていた。

本来あるはずの頭部バルカンが存在しない。

技術官長が説明する。


「理由は単純です」


「弾薬を作れません」


沈黙。


全員納得した。


「意味ないから外したのか」


「はい」


「再現は可能です」


「しかし弾がない」


「なら装備する意味がない」


実に合理的だった。


アルノーが機体を見ながら呟く。


「でも結構印象変わるな」


「頭部機銃がないだけで」


マリーも頷く。


「確かに」


さらに。


肘と袖のスパイク。

これも新設計らしい。

技術官が説明する。


「近接格闘補助装備です」


「関節打撃」


「体当たり」


「組み付き」


「そういった用途を想定しています」


ハイドは少し嫌な顔をした。


「痛そうだな」


「痛いでしょうね」


技術官は平然と言った。


女王は満足そうに機体を見上げる。


「まだ試験段階です」


「量産計画もありません」


「しかし」


そこで少しだけ笑う。


「成果としては上々ですわ」


ハイドは改めて機体を見た。

黄色い巨人。

量産型。


だが。


デュークの面影がある。

完全再現ではない。

しかし。


確実に近付いている。

そして。


ハイドは気付いた。

この場へ呼ばれた理由を。

シャルロットがこちらを見る。


嫌な予感しかしない。


「ハイド」


「はい」


「試験運用をお願いしますわ」


即答だった。

予想通りだった。


イーリスは当然のような顔をしていた。


技術官たちは既に書類を準備している。

どうやら。


断るという選択肢は最初から存在しないらしかった。

工房併設試験場。


巨大な隔壁が開かれ、サクス試作四型が搬出される。

黄色い機体は昼の日差しを受けてよく目立った。


格納庫内。


ハイドはコクピットへ乗り込む。

そして。

座った瞬間。


違和感を覚えた。


「……あ」


技術官が聞く。


「どうしました?」


「普通だ」


技術官たちは顔を見合わせた。

普通。

鉄騎を評する言葉としては珍しい。


だがハイドにとっては重要だった。

デュークではない。

まずそこが違う。


目の前には一般的なマスタースレイブ。


補助表示器。


学園訓練機とほぼ同じ構成。


特別な物は何もない。

デュークのような着座式でもなければ、機体側からの積極的な補助もない。

本当に普通の鉄騎。


「起動確認」


技術官の声。


ハイドが操縦桿を握る。

機体が反応する。

ゆっくり立ち上がる。


その瞬間。


少しだけ揺れた。


「おっと」


すぐ立て直す。

だが。


デュークなら起きなかった揺れだった。

ハイド自身も気付いている。


「動かしにくいな」


通信越しに呟く。

女王たちは観測席から見ていた。

技術官が説明する。


「補助制御がありませんので」


「だよなぁ」


ハイドは納得する。

デュークは違う。

あれは機体側が補助する。


姿勢制御。

出力配分。

重心調整。


様々な部分を勝手にやってくれる。

だから。


多少無茶な操作でも成立する。

だが。


試作四型は違う。


全部自分でやる必要がある。

ハイドは歩かせてみる。


一歩。


二歩。


三歩。


「……」


少し考える。

学園機とも感覚が違う。

理由はすぐ分かった。


「軽い」


技術官が頷く。


「背面補助腕がありません」


それだった。


サクス学園の訓練機。

あれはサクス三型そのもの。

背中に大型補助腕が二本ある。


本来は弓運用のための装備。

しかし。

使わない時はただの重りだ。


結果として後ろが重い。

重心も高い。

それに対し。


試作四型は違う。

補助腕がない。

背中が軽い。


重心位置も前寄り。

だから。


学園機の感覚で動かすと微妙にズレる。


「なるほど」


ハイドは理解する。

歩行速度を上げる。


走る。

停止。

旋回。


どれも反応は悪くない。

むしろ良い。


「遅延少ないな」


技術官が嬉しそうに答える。


「関節部再設計の成果です」


「へぇ」


確かに。

反応は素直だった。


入力した通りに動く。

学園機より少し良い。

しかし。


デュークには遠い。

そして。


次にハイドは試した。

腕を上げる。

試験用重量ブロックを持つ。


そこで分かる。


「弱いな」


率直だった。

技術官たちが苦笑する。


「比較対象が悪いです」


「そうか?」


「デュークですから」


確かに。

比較対象がおかしい。


それでも。


ハイドには分かる。

パワー不足。

明らかだった。


重量物を持ち上げる。

できる。


だが余裕がない。

関節出力が足りない。

動力に余裕がない。


デュークならもっと簡単だった。


「原因は?」


女王が聞く。

技術官長が答えた。


「電力です」


皆予想していた答えだった。


「ベース機が量産型です」


「動力炉出力が違います」


「構造再現は可能」


「しかし出力は再現できません」


つまり。

身体は似せられる。

だが。


心臓が違う。

デュークの異常な馬力は再現できない。

技術官は続ける。


「現在の電力供給能力では限界です」


「同形状にしても性能は及びません」


ハイドは試験用の鉄塊を持ち上げながら言う。


「なるほどな」


納得した。

見た目は似ている。

構造も似ている。


しかし。


中身は別物。

だから。


同じにはならない。

試験場の外。

女王は腕を組んだ。


「どう思いますの?」


ハイドは少し考える。


そして答えた。


「強いとは思う」


技術官たちの表情が明るくなる。

だが。


ハイドは続けた。


「でもデュークじゃない」


その一言で全員が静かになる。

技術官たちも否定しなかった。


その通りだからだ。


試作四型は優秀だ。

量産型より強い。

だが。


デュークではない。

あの異常な機体には届かない。

観測席でシャルロットは静かに頷いた。


期待した答えだった。


届かない。


だからこそ価値がある。


もし完全再現できていたなら、それは逆に恐ろしいことだったのだから。

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