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炭鉱奴隷の俺が古代兵器「鉄騎」の力で成り上がる  作者: お湯0uy2
サクスへの帰還

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重い背中

校庭。


陽光の周囲では、未だヒノクニ整備班が忙しなく動いていた。


巨大コンテナの整理。

固定具の確認。

装甲点検。


一方。


教師陣は完全に疲弊していた。

クニヒトという男。

話すたびに問題を増やす。

しかも本人に悪気がない。


これが厄介だった。


教師の一人が咳払いする。


「……鉄騎勲章については、王家へ正式確認を行います」


「うむ」


「ですので即答は――」


クニヒトが首を傾げる。


「何故だ?」


「何故と言われましても……」


教師が頭を抱える。


「制度上の問題がありますので」


クニヒトは腕を組んだ。

少し考える。


そして。


「ああ」


妙に納得した顔をした。


「なら簡単であるな」


教師陣が嫌な予感を覚える。

クニヒトは平然と言った。


「渡さぬのであれば、貴国の貴族を決闘で打ち負かして奪えばよい」


沈黙。


風が吹く。

誰も一瞬理解できなかった。


「…………は?」


教師の顔が引き攣る。

周囲の生徒たちも固まった。

ハイドが真っ先に頭を抱える。


アルノーが乾いた笑みを浮かべる。


「ヒノクニ基準だ……」


マリーは青ざめている。


「えっ、それ普通なんですか……?」


イーリスが淡々と言う。


「ヒノクニでは比較的一般的かと」


「一般的なんですか!?」


クニヒトは当然のように続けた。


「鉄騎乗りの資格など、強さで示せば十分」


教師が慌てて否定する。


「いやいやいや! サクスではそういう制度ではありません!」


「そうなのか?」


「そうです!!」


クニヒトは少し不思議そうだった。


「面倒な国であるな」


教師の胃が死にそうな顔になる。

クニヒトはさらに言う。


「そもそも」


彼は学園生徒たちを見る。


「実力ある者へ地位を与えるのは自然であろう?」


ルートヴィヒが少し眉を動かした。

周囲の保守派系生徒たちも複雑な顔をする。

クニヒトは続ける。


「実際、ハイドは既に並の貴族より強い」


「おい」


突然名前を出されたハイドが嫌そうな顔をする。


「余計な事言うな」


「事実であろう」


「だから面倒になるんだよ!」


教師陣も内心同意だった。

クニヒトの発言は危険だ。


特に今の学園では。


ハイドの存在は、既に一部貴族の神経を逆撫でしている。

そこへ他国の王が、


「強いなら貴族でいい」


などと言い始める。


最悪である。

だが。


クニヒト本人は全く気にしていない。


「むしろ分かりやすい」


「分かりやすくて困るんです!」


教師が叫ぶ。

その時。


ルートヴィヒが静かに口を開いた。


「……ヒノクニでは、実際にそうなのですか」


クニヒトが視線を向ける。


「うむ」


即答。


「鉄騎を持ち、決闘で勝ち、生き残る」


クニヒトは笑った。


「それだけで十分強者よ」


ルートヴィヒは黙る。

クニヒトはさらに続けた。


「血筋も必要だがな。

弱ければ意味がない」


その言葉に。

保守派生徒たちの空気が少し張る。

サクスは血統社会だ。

鉄騎起動権も血筋依存。


だからこそ貴族制度が成立している。

だが。


ヒノクニは違う。

少なくとも、この男は。


「強いならよい」


と本気で考えている。

クニヒトはハイドを見る。


「其方も気を付けよ」


「何を」


「放っておくと、また誰か決闘を挑んでくる」


「嫌すぎる」


ハイドが真顔で言う。

マリーが苦笑した。

アルノーも笑う。


だが。


教師陣だけは笑えない。

なぜなら。


実際あり得るからだ。

そして。


少し離れた場所。


ルートヴィヒは静かにクニヒトを見ていた。

以前なら反発した。


だが今は違う。

この男の価値観は危険だ。

だが。


ある意味、理解もできる。


強さ。

鉄騎。

決闘。


それらが全てを決める。

古く、単純で。


だからこそ厄介だった。


学園校庭。


陽光の周囲には、既に大型搬送車両が集まっていた。


学園整備班。

ヒノクニ整備班。

双方が入り混じりながら作業している。


「固定索こっち!」


「脚部ロック確認!」


「尾部装甲触るな、それ重要区画だ!」


ヒノクニ整備員が怒鳴る。

学園側整備員が慌てて手を引っ込めた。


「す、すまん!」


陽光は通常の量産型と構造がかなり違う。


特に後部。


尾のように伸びた装甲区画へ、機材が集中している。

そのせいか、機体全体の重心もかなり低い。

どっしりしていた。


一方。


学園側量産型は逆だ。

背部。

二本の補助腕。


遠距離戦用大型弓を二つ扱うための追加腕部。

本来は射撃補助装備。


しかし、普段の移動では完全に重りだった。

重心が高い。

だから歩くだけでも慣れが必要になる。

その違いを。


今、クニヒトが全力で味わっていた。


「ぬおっ」


ガコン。

訓練機が横へ傾く。


周囲の生徒たちがざわついた。


「えっ」


「クニヒトでも難しいのか」


「なんか普通にフラついてるぞ」


現在。

陽光を格納庫へ搬送するため、クニヒト本人は学園の訓練機へ乗っていた。


理由は単純。


陽光は現在固定作業中だからだ。

そして。


クニヒトは今、かなり苦戦していた。


「なんじゃこの感覚……!」


訓練機がぎこちなく歩く。

一歩。

遅れて補助腕が揺れる。


重心がブレる。

クニヒトが眉を寄せた。


「後ろが重い!」


ハイドが吹き出しかける。


「だろ?」


「うむ、酷い!」


遠慮がない。


教師陣が若干青ざめる。

一応自国主力量産機である。


クニヒトはさらに歩く。


ギシ。

ギシ。


妙に硬い動き。


いつもの陽光の滑らかさがまるでない。


「腕を上げるだけで機体全体が引っ張られる……!」


イーリスが静かに分析していた。


「後部補助腕ユニットの慣性重量が大きいです」


「其方よくこんな物を普段使っておるな」


「最適化です」


クニヒトが唸る。


「最適化などと済ませてよい構造ではない」


アルノーが苦笑する。


「実際、初心者は後ろに転びますし」


「転ぶのか」


「結構」


クニヒトはしばらく歩行を続けた。

すると今度は。


背部補助腕が建物横の柱へ引っかかりそうになる。


「ぬっ」


慌てて回避。

補助腕が大きく揺れる。

機体全体もブレる。


「邪魔!!」


ついに言った。

周囲の生徒たちが吹き出す。


「言った!」


「まぁ分かる」


「俺も最初そうだった」


クニヒトは真面目な顔で言った。


「何故わざわざ重心を上げる」


教師の一人が説明する。


「遠距離戦用です」


「弓用か」


「はい。補助腕で保持と連射補助を」


クニヒトは少し納得した。


「なるほど」


だが。

次の瞬間またフラつく。


「ぬおっ」


「説得力がないな……」


ハイドが呟く。


一方。

搬送中の陽光は静かだった。

低い姿勢。

安定した重心。


脚部固定だけでも妙な威圧感がある。

学園整備科の生徒たちが周囲を取り囲み、興味津々で観察していた。


「脚細いな……」


「なのに安定してる」


「尾部装甲の中どうなってるんだ?」


ヒノクニ整備員が即答する。


「機密だ」


「ですよね」


そして。


クニヒト機。


いや、現在はサクス訓練機。

ようやく格納庫前へ到着する。

歩くだけでかなり時間がかかっていた。


コクピットが開く。


クニヒトが立ち上がる。


「……疲れた」


ハイドが笑う。


「歩いただけだろ」


「歩くだけで疲れる」


珍しく本気で言っていた。

クニヒトは訓練機を見下ろす。


「サクスの鉄騎は、操縦者へ頑張らせ過ぎではないか?」


教師たちが微妙な顔をする。

否定できない。

一方。


イーリスだけは少し考え込んでいた。


陽光。


あの操作系統。

完全一致ではない。

だが近い。


デュークに。


少なくとも。

普通のサクス機とは、根本から違っていた。

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