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炭鉱奴隷の俺が古代兵器「鉄騎」の力で成り上がる  作者: お湯0uy2
サクスへの帰還

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普通の実力

夕方。


演習後の学園は妙な熱気に包まれていた。


食堂。

廊下。

訓練棟前。


どこへ行っても、今日の模擬市街地戦の話ばかりだった。


「見たかあれ」


「壁蹴ってたぞ」


「量産型であんな動き出来るのか?」


「イーリスだから出来るんじゃないか……?」


そんな声を聞きながら。

ハイドは食堂の隅でぐったりしていた。


「痛ぇ……」


目の前のトレイには夕食。

だが食欲が薄い。

マリーが苦笑する。


「模擬戦なのに本当にボロボロでしたね……」


「お前もな」


「私は途中でやられましたし……」


アルノーが席へ座る。


「でも連携自体は悪くなかったと思うよ」


ハイドが顔を上げる。


「そうか?」


「うん。イーリス相手じゃなければ多分普通に勝ってた」


イーリスが静かにスープを飲んでいる。

マリーが恐る恐る聞く。


「イーリスさんって、なんであんな動けるんですか?」


「最適化です」


即答。


「だから参考にならないんですよぉ……」


マリーが項垂れる。

アルノーが笑う。


「でも実際、動き方が全然違うよね」


「違う?」


ハイドが聞く。

アルノーは少し考えた。


「普通の人って、鉄騎を“動かそう”とするんだ」


「まあそうだろ」


「でもイーリスは違う」


アルノーは演習を思い出していた。


壁を蹴った動き。

跳躍。

姿勢制御。


「あれ、自分の身体動かしてる感じなんだよな」


イーリスが小さく頷く。


「正確に近い表現です」


マリーが不思議そうな顔をした。


「どういうことですか?」


イーリスは少し考えてから説明する。


「私の内部処理と機体制御を直接同期しています」


全員少し黙る。

ハイドが言う。

「つまり?」


「自分の身体感覚です」


「やっぱズルくないか?」


「仕様です」


アルノーが笑った。


「でも納得はしたよ」


普通の人間には無理だ。

鉄騎は巨大すぎる。

反応も遅い。

だから皆、“操縦”する。


だがイーリスだけは違う。

あれは。

身体として扱っている。

だから無駄がない。


そこへ。


別テーブルの生徒たちの声が聞こえてきた。


「でもハイドってデューク乗ると強いよな」


「今日普通だったしな」


「やっぱ機体性能か?」


「でもデュークってそんな強いのか?」


ハイドが嫌そうな顔をする。


「聞こえてんだよなぁ……」


マリーが慌てる。


「き、気にしなくていいと思いますよ!?」


「いや気になるだろ普通に」


アルノーは少しだけ視線を逸らした。

正直。

彼も思っている。


今日の演習でハイドの操縦技術自体は見えた。

平均的。

決して下手ではない。


だが、圧倒的でもない。

では。


デュークは何なのか。


そこまで考えて、アルノーは思考を止めた。

深く考えるべき話ではない。

少なくとも学生の立場では。


その時。


イーリスが静かに言った。


「ハイドは適正があります」


「え?」


全員がイーリスを見る。


イーリスは続けた。


「一般操縦者より耐久性が高いです」


ハイドが首を傾げる。


「そうなのか?」


「はい」


アルノーが少し興味を持つ。


「それって才能?」


「はい」


「へぇ……」


ハイドは微妙そうな顔をした。


「実感ねぇな」


イーリスは即答した。


「デューク基準だからです」


「なんかムカつく言い方だな」


マリーが笑う。

食堂の空気は穏やかだった。


決闘も。

国家間問題も。

政治も。


今だけは遠い。

ただ。


そんな平和な空気の中で。


少し離れた席。

ルートヴィヒ・フォン・ヴァルデックは、無言でその様子を見ていた。

彼の前の食事は、ほとんど手が付けられていない。


視線は自然とイーリスへ向く。


あれは危険だ。

直感ではない。

理解した。


だからこそ怖い。


ルートヴィヒは静かに席を立つ。

そのまま食堂を出て行った。

誰も気づかない。


ただ一人。


イーリスだけが、一瞬だけ彼を見ていた。


「?」


ハイドが聞く。


「どうした」


「いえ」


イーリスはスプーンを置いた。


「特に問題ありません」

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