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炭鉱奴隷の俺が古代兵器「鉄騎」の力で成り上がる  作者: お湯0uy2
学園編

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鉱山採掘

鉱山は、相変わらず黒かった。


地表に近い部分はすでに掘り尽くされ、崩れかけた坑道が無秩序に口を開けている。

木製の支柱は朽ち、補修された形跡はない。

それでも人は入れられ、掘らされ、壊れたら捨てられる。


女王シャルロットは、その光景を黙って見下ろしていた。


ここは、ハイドがかつて強制労働をさせられていた鉱山。

そして、鉄騎デュークが出土した場所。


「……変わっていませんわね」


声に感情は乗っていない。

だが、それがかえって周囲を緊張させた。


今回の査察理由は、表向きには二つある。

一つは、先の巡察で発覚した不正の延長。

もう一つは、鉱山運営が法と規定に従っているかの確認。


だが、女王自身にとって最も重要なのは、別の一点だった。


デューク。


ありえないほど完璧な状態で出土した鉄騎。

胴体、駆動系、制御中枢。

欠損も腐食もなく、まるで昨日まで整備されていたかのような保存状態。


それは偶然では済まされない。


女王の鉄騎が、鉱山前で停止する。

随伴する量産機が左右に展開し、行政官たちが降りる。


領主は、遅れて現れた。


「こ、これは女王陛下……このような辺境まで……」


その声には、取り繕った丁寧さと、隠しきれない苛立ちが混じっている。


「説明は後で結構」


シャルロットは言った。


「まず確認します。

現在も、人力による発掘を行っていますね?」


領主は一瞬、言葉に詰まった。


「ええ、まあ……鉄騎による掘削は危険でして。

遺物を損壊する恐れが――」


「では、成果は?」


「……」


沈黙が答えだった。


「理解しました」


女王は、静かに命じる。


「掘削を引き継ぎます。

本日より、この鉱山は王家直轄です」


「なっ……!」


抗議の声が上がる前に、量産機が動いた。


歩く。

ただ歩くだけで、地面が震える。


「あなたの管理下では、何年掘っても何も出ない。

それが事実です」


シャルロットは、領主を見下ろした。


「人力強制労働。

進まない発掘。

そして、あれほどの遺物を眠らせていた」


彼女は、わずかに目を細める。


「無能ですわ」


それ以上の言葉はなかった。


女王の鉄騎が前に出る。

量産機も続く。


掘削は、強行された。


鉄騎の腕が岩盤に触れ、力を込める。

慎重だが、容赦はない。


人の手では何年もかかる作業が、数時間で進んでいく。


岩を砕き、土砂を除け、深部へ。


やがて、異物反応が出た。


金属。

高密度。

既知の合金構成。


「……やはりありましたわね」


最初に露出したのは、脚部だった。


デュークと同一の物。


しかし、損傷が激しい。


次に掘り出されたのは、腕部。

その次は、頭部ユニット。


どれも、別々の場所に埋まっていた。


「別個体……いえ」


シャルロットは、通信越しに技術官の報告を聞きながら、考える。


「同型機、ですが胴体がない」


さらに掘削を進めると、決定的な痕跡が見つかった。


各パーツの接続部。

本来ならフレーム同士が結合する箇所。


そこが、溶けている。


「爆発痕……?」


技術官が呟く。


高熱。

瞬間的なエネルギー放出。

意図的な破壊。


「胴体が爆散し、周囲のパーツが吹き飛ばされた……」


それも一度ではない。


損傷具合が、まちまちだ。

新しいものもあれば、古いものもある。


「……複数機分ですわ」


シャルロットは、そう結論づけた。


デュークは一機ではなかった。

少なくとも、同型機が複数存在し、

そして何らかの理由で、胴体だけが破壊された。


残骸は、丁寧に回収された。


王家の工房へ。

分解、解析、構造把握、そして――コピー。


「許可します」


女王は、迷いなく言った。


「この系列の技術は、王家が管理します」


それは、力の集中を意味する。

だが、放置できる代物ではない。


完璧な状態で出土したデューク。

爆散した同型機の残骸。

意図的な破壊の痕跡。


この鉱山は、ただの採掘場ではなかった。


シャルロットは、再び空を見上げた。


低い空。

逃げ場のない色。


「……ハイド」


その名を、誰にも聞こえない声で呼ぶ。


彼がこの場所で生き延びたこと。

そして、あの機体と共に現れたこと。


それは偶然ではない。


この国の底に埋まったものを、

一つずつ掘り起こすために。


王都へ運ばれた回収物は王家工房――遺物解析区画に運び込まれた。


巨大な格納室の中央に、回収された鉄騎のパーツが並べられていた。


脚部。

腕部。

頭部。

外装装甲。

内部フレーム。


どれも保存状態はまちまちだった。


表面が腐食したもの。

装甲が裂けたもの。

内部構造が露出したもの。


しかし共通点がある。


すべてが、デュークと同じ規格で作られている。


技術官たちは沈黙したまま作業を進めていた。

誰もが理解している。


これはただの遺物ではない。


現役の戦力になり得る技術だ。


工房の中央に、シャルロット女王が立っていた。


彼女の背後には、王家直属の技術官たち。

そして記録官。


「解析を開始しなさい」


女王は静かに命じた。


「優先事項は三つです」


技術官たちは手を止め、女王の言葉を待つ。


「第一。構造の完全把握」


「第二。互換性の確認」


「第三。量産化の可能性」


命令は短い。

だが、意味は重い。


技術官長が前に出た。


「まず構造ですが、すでに初期確認が終わっています」


彼は一つの脚部フレームを示した。


「デュークと同一です。

内部フレーム規格が一致しています」


別の技術官が続ける。


「腕部の接続部も同一規格です。

関節駆動構造も一致」


女王は頷いた。


「つまり?」


技術官長が答える。


「互換性があります」


その言葉に、工房の空気がわずかに変わる。


互換性がある。

それはつまり――


組み合わせられる。


「ただし」


技術官長は続ける。


「胴体部が存在しません」


回収されたパーツの中に、動力部はない。


鉄騎において最も重要な部分。


胴体。


そこには動力炉があり、制御装置があり、全身へ出力を分配する。


つまり。


胴体がなければ、ただの部品だ。


女王は歩き、回収された頭部ユニットの前で止まる。


「理由は?」


技術官が答える。


「爆発痕です」


彼は接続部を指差した。


金属が溶け、歪んでいる。


「高熱による融解。

内部爆発が起きた場合の典型的な痕跡です」


別の技術官が補足する。


「複数個体で確認されています。

つまり……」


女王が言う。


「胴体が爆散し、他のパーツだけが残った」


「はい」


沈黙が落ちた。


シャルロットはゆっくりと振り向く。


「問題ありません」


技術官たちは顔を上げる。


「胴体は代替します」


「代替……ですか?」


女王は頷いた。


「量産型を仮使用します」


その言葉に、工房がざわめいた。


量産型鉄騎。


現在サクス国軍が最も多く運用している機体。


ただし、それもまた遺物である。


決して安価な装備ではない。


技術官長が慎重に言う。


「互換は……確認されています」


女王は微笑した。


「腹部形状が一致している」


それはすでに調査済みだった。


デューク。

クラウン。

ヴェール。

量産型。


これらは胴体フレームの基本構造が同じ。


腹部の接続形状は完全一致。


つまり。


腕。

脚。

頭部。


すべて取り付け可能。


「ただし」


技術官が言う。


「量産型にも個体差があります」


女王は頷く。


「知っています」


量産型鉄騎。


それは単一の機体ではない。


実際には、九種類の系列が存在している。


元々は異なる世代の機体。


しかし構造規格は同一。


互換機として設計されている。


ただし違いがある。


出力。


世代が違うため、動力炉の性能が違う。

その結果、同じ量産型でも出力がばらつく。


だが。


九種ごとに分類すれば、性能はほぼ揃う。


つまり――


「選別すればいい」


女王は言った。


「同世代の量産型を使用すれば、出力は揃います」


技術官たちはすぐに理解した。


選別。

組み換え。

再構築。


それは十分可能だった。


女王はさらに命じる。


「そして」


彼女の目が鋭くなる。


「最終的には、専用外装を作ります」


「専用……?」


「デュークに似せた形状で」


技術官たちは互いの顔を見た。


女王は続ける。


「理由は簡単です」


彼女は脚部フレームを見上げる。


「欺瞞」


その言葉だけで意味は通じた。


戦場で。


遠目で。


シルエットで。


デュークに似ていれば――


敵は判断を誤る。


本物か。

偽物か。


判断が遅れれば、それだけで優位になる。


「外装だけで構いません」


女王は言う。


「内部構造は量産型で」


技術官長が頷く。


「可能です」


量産型の設計はすでに理解されている。


なぜなら。


その元となった機体が存在するからだ。


M6ウォルテクス。


古代鉄騎の一つ。


そしてサクス国で最も多く残骸が出土している機体。


そのため解析材料として選ばれた。


量産型鉄騎は、このウォルテクスをリバースエンジニアリングして作られている。


ただし完全再現ではない。


むしろ改良。


そして――性能低下。


理由は単純だった。


再現できない部分があるから。


その代表例が、胸部の主砲。


ウォルテクスには胸部に大型砲が搭載されている。


しかし現在の技術では弾薬を再現できない。


作れない砲に意味はない。


だから撤去された。


その代わりに装甲が追加され、構造が単純化されている。


女王は言った。


「弾薬が作れない装備に価値はありません」


技術官たちは静かに頷く。


それは冷静な判断だった。


王家工房の記録官が、すべてを書き留めていく。


回収されたパーツ。


互換構造。


量産型胴体の仮使用。


将来的な専用胴体の設計。


そして。


デュークに似せた外観。


女王は最後に、工房を見渡した。


巨大な鉄騎の残骸。

作業する技術者たち。

解析装置。


ここから、新しい機体が生まれる。


本物ではない。


だが――


本物に似せた、戦争の道具。


シャルロットは静かに言った。


「急ぎなさい」


その声には、わずかな期待が混じっていた。

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