表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炭鉱奴隷の俺が古代兵器「鉄騎」の力で成り上がる  作者: お湯0uy2
学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/64

腰抜け城主



デュークがキョウ城下町に入った時、最初に感じたのは「空気の重さ」だった。


町自体は広い。

道も整備され、城下としては立派な造りだ。

だが、活気がない。


露店は半分閉じている。

人々は道の端に寄り、遠巻きにこちらを見るだけ。


鉄騎が来たからではない。

それ以前から、町が沈んでいる。


「……変ですね」


ハイドが呟く。


「はい」


イーリスは即答した。


「人の動きが少なすぎます」


デュークの足音が、やけに響く。

本来なら城下町では雑踏に紛れるはずの音が、やたら大きく聞こえる。


「……あの城主のせいか」


ハイドが言う。


イーリスは少しだけ沈黙してから答えた。


「因果関係は高いと推定されます」


城門の前で、デュークは止まった。


門は閉じている。

城壁の上には兵がいるが、やる気はない。


鉄騎を見ても、慌てる様子がない。


ただ、様子見。


「……来る気がないな」


ハイドが言う。


「はい」


イーリスも同意する。


「代理を出す準備をしている可能性があります」


ハイドはため息をついた。


「またそれか……」


「はい。

 過去三回、同様の手法が確認されています」


つまり。


代理が出てくる。

代理が負ける。

城主は「自分は負けていない」と言う。

降伏しない。


無限ループ。


ハイドはコクピットの外を見ながら呟く。


「……どうする?」


イーリスは答えなかった。


数秒の沈黙。


その後。


「解決案を提示します」


声の調子が、わずかに変わった。


「……なんか嫌な予感がする」


「合理的手段です」


「本当に?」


「はい」


イーリスは続ける。


「まず、城主の心理分析結果です」


コクピット内の簡易モニターにデータが表示される。


・極度の自己保身

・名誉への執着

・臆病

・外聞を過剰に気にする


「……最低だな」


ハイドが言う。


「その通りです」


イーリスは淡々と肯定した。


「従って、物理的圧力よりも

 社会的圧力が有効です」


「社会的?」


「はい」


その言葉と同時に、イーリスは小型端末を操作する。


数分後。


「原稿が完成しました」


「……何の原稿?」


イーリスは、珍しくほんの少しだけ満足そうだった。


「城主を侮辱する文書です」


ハイドは固まった。


「……は?」


「読み上げてください」


「いや待って」


「外部スピーカーで町中に流します」


「ちょっと待って」


「城主は面子を気にします。

 公衆の面前で臆病者扱いされれば、出てくる確率が高いです」


ハイドは額を押さえた。


「……それ、大丈夫なのか」


「問題ありません」


「本当に?」


「合理的です」


モニターに原稿が表示される。


ハイドはそれを読んで――


「……おい」


沈黙。


「……これ、言っていいやつ?」


「はい」


「絶対怒るぞ」


「それが目的です」


イーリスは完全に平然としていた。


ハイドはしばらく葛藤した。


だが。


ここまで来て、引く理由もない。


「……分かった」


深呼吸。


「録音します」


イーリスが言う。


「外部拡声器、接続完了」


ハイドは覚悟を決めた。


そして、読み始めた。


「――聞け、キョウ城主ミツノ・タイギ」


スピーカーが、町中に響く。


人々が顔を上げる。


「お前は何度、代理を盾に逃げ続けるつもりだ」


窓が開く。

人が出てくる。


「戦えば負けるのが怖いか」


ざわめきが広がる。


「それとも、自分の腕が代理以下だと認めているのか」


城壁の兵たちが、動揺し始める。


「城主を名乗りながら、決闘から逃げ、

 代理が敗れても“自分は負けていない”と喚く」


ハイドは読む。

ひたすら読む。


「その姿は城主ではない。

 ただの臆病者だ」


町の中心に声が響く。


「戦う勇気もない者が、

 城を守れると思うのか」


城門の上で、兵が慌て始める。


「もし誇りがあるなら出てこい。

 もし出てこないなら――」


ハイドは最後を読む。


「お前は一生、

 “腰抜け城主”と呼ばれるだろう」


沈黙。


町全体が、静まり返った。


そして――


城門の奥から。


「ま、待てぇぇぇぇぇ!!」


情けない絶叫が響いた。


城門が慌ただしく開く。


挿絵(By みてみん)


そこから現れたのは、一機の鉄騎だった。


装飾過多。

派手な塗装。

だが、動きはぎこちない。


コクピットから怒鳴り声が響く。


「誰だ!!

 今の無礼者は!!」


ハイドは、思わず呟いた。


「……出てきた」


イーリスが言う。


「想定通りです」


城主の鉄騎は、怒りで震えている。


「貴様ぁ!!

 名を名乗れ!!」


ハイドは、マイクを入れる。


「サクス王国大使、ハイド」


城主が一瞬固まる。


「……大使?」


その瞬間、怒りの矛先が変わった。


「な、なんだと!!

 外交使節が無礼を働くとは!!」


「決闘を申し込む」


ハイドは即座に言った。


「勝てば降伏文書を出せ」


城主は言葉に詰まる。


周囲の視線。


町の人々。


城兵。


全員が見ている。


今さら引けない。


「……いいだろう!!」


怒鳴る。


「決闘だ!!」


戦闘が始まる。


だが。


結果は、あっけなかった。


デュークが一歩踏み込む。


城主の鉄騎が剣を振るう。


その動きは、遅い。


ハイドは軽く避ける。


次の瞬間。


デュークの足が、相手の腹部を踏みつけた。


鈍い音。


鉄騎が地面に押し倒される。


動けない。


完全に封じた。


町が静まり返る。


「……勝負あり」


ハイドが言う。


だが。


城主の声が響いた。


「ま、まだだ!!」


「……?」


「わ、私は負けていない!!」


ハイドは呆れた。


「……いや負けてるだろ」


「私は操縦者だ!!

 鉄騎が負けただけだ!!」


ハイドは深くため息をついた。


その時。


「ハイド」


「……なんだ」


「盾を使用してください」


「盾?」


「コクピット横を軽く小突いてください」


ハイドは一瞬理解できなかった。


「……え?」


「威圧です」


数秒の沈黙。


「……分かった」


デュークが盾を持ち上げる。


そして。


コン。


軽く。


鉄騎のコクピット横を小突いた。


金属音が響く。


城主の声が、急に震えた。


「ひっ」


もう一度。


コン。


「ま、待て!!」


三度目。


コン。


「やめろ!!」


盾が、少しだけコクピットに近づく。


城主は完全に怯えていた。


「ま、待て待て待て!!」


「降伏するか」


ハイドが言う。


「する!!する!!」


情けない声だった。


「降伏するから壊すな!!」


町の人々が、ぽかんとしている。


イーリスが静かに言った。


「降伏確認」


ハイドは、ゆっくりとデュークの足をどけた。


こうして。


キョウ城城主ミツノ・タイギは、ようやく降伏した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ