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炭鉱奴隷の俺が古代兵器「鉄騎」の力で成り上がる  作者: お湯0uy2
学園編

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新装備


女王からの呼び出しは、唐突だった。


それは正式な布告でも、儀礼的な招集でもない。

学園を通じて届いたのは、短い伝言だけだった。


「ハイドを、城へ」


それだけで十分だった。


ハイドは、呼び出しの意味を理解していた。

理解してしまっていたからこそ、足取りは重い。


城へ向かう馬車の中、ハイドは窓の外を見ていた。

城下の人々は、以前よりも騒がしい。

決闘の噂は、もう隠しきれないところまで広がっている。


「……イーリス」


「はい」


「やっぱり、指名されるよな」


「可能性は高いと、以前お伝えしました」


「そうだな」


それ以上、言葉は続かなかった。


城門をくぐり、広い中庭を抜け、

執務棟の奥へ。


通されたのは、円卓の間ではない。

謁見の間でもない。


女王の私室に近い執務室だった。


扉が閉まる。


室内には、女王シャルロットが一人だけいた。

側近も、護衛もいない。


この時点で、ハイドは悟る。


(……もう、決まってる)


女王は、机から立ち上がり、ハイドをまっすぐに見た。


「ハイド」


「は、はい」


「分かっているとは思いますが」


その前置きだけで、胸が締め付けられる。


「ヒノクニ皇帝クニヒトの代表決闘についてです」


一拍。


女王は、静かに、しかしはっきりと言った。


「サクス王国代表として、あなたを指名します」


ハイドは、答えなかった。


声が出なかった。


拒否する理由は、山ほど思いつく。

だが、拒否できる立場ではないことも、分かっている。


女王は、続ける。


「これは命令ではありません」


「……え?」


「最終的に戦うのは、あなたです」


「だから、確認します」


女王は、一歩、距離を詰めた。


「受けますか?」


ハイドは、拳を握った。


イーリスの姿が、脳裏をよぎる。

炭鉱の闇。

初めて空を見た日の眩しさ。

学園で、居場所を得たこと。


そして、桜色の鉄騎の、静かな圧。


「……受けます」


声は、震えていなかった。


女王は、ほんのわずかに、安堵の息を吐いた。


「ありがとうございます」


形式的な感謝ではない。

それは、一人の人間としての言葉だった。


女王は、工房の布をめくる。


そこには、二つの装備があった。


巨大な盾。

そして、長大な槍。


どちらも、量産型鉄騎用としては明らかに過剰なサイズだ。


「これが、あなたの鉄騎――デューク用の新装備です」


ハイドは、思わず目を見開く。


「……でか」


女王は、少しだけ口元を緩めた。


「本来であれば、量産型では扱えません」


「盾か、馬上槍か。

 どちらか一つが限界です」


女王は、盾に手を置く。


「防御特化装備。

 重量級。

 正面からの衝撃を受け止めることを前提としています」


次に、馬上槍へ。


「こちらは突撃用。

 重量と速度を、破壊力に変換する装備です」


ハイドは、喉を鳴らす。


「……両方?」


「ええ」


女王は、あっさり言った。


「両方です」


「でも、それ……」


「無理だ、と思いますか?」


ハイドは、正直に答えた。


「……分かりません」


女王は、頷いた。


「ええ。私もです」


そして、少し困ったように言う。


「ですが」


女王の視線が、まっすぐハイドを射抜く。


「多分、使えるでしょう」


その言い方は、確信でも計算でもなかった。

信頼だった。


「あなたの鉄騎は、他と違う」


「そして」


「あなた自身も」


ハイドは、言葉を失った。


女王は、背を向け、窓の外を見る。


「クニヒトは、私を引きずり出すつもりでした」


「ですが、彼は気づいてしまった」


女王は、静かに言う。


「この国の“核”が、別の場所へ移り始めていることに」


振り返る。


「それが、あなたです」


ハイドは、慌てて首を振った。


「そ、そんな……」


「謙遜は不要です」


女王は、きっぱりと言った。


「必要なのは、結果だけです」


「勝ってください」


その言葉は、重かった。


「……分かりました」


ハイドは、深く頭を下げる。


女王は、少しだけ表情を緩めた。


「準備期間は、十分に取ります」


「装備の調整、訓練、想定戦」


「必要なものは、全て用意します」


一拍置いて。


「イーリスについても、制限は設けません」


ハイドは、顔を上げる。


「……いいんですか?」


「ええ」


女王は、淡々と答えた。


「それも、あなたの力ですから」



城を出た後。


ハイドは、しばらく言葉を失っていた。


イーリスが、隣を歩く。


「……正式に、決まりましたね」


「ああ」


「新装備についての第一印象は?」


「……重そう」


「合理的な評価です」


ハイドは、苦笑した。


「使えると思うか?」


「使用は可能ですが重量過多である事は否めません」


「使えはするのか?」


「使用可能です」


ハイドは、深く息を吸った。


「ならやるしか、ないな」


「はい」


イーリスは、いつも通りの声で言った。


「私は、全力で支援します」


「頼む」


ハイドは、前を見据えた。


もう、逃げ場はない。


だが、不思議と、足取りは重くなかった。


炭鉱の闇から、

城の中心へ。


そして今、

国を賭けた決闘の中心へ。


ハイドとデューク、

そしてイーリス。


三つが揃った時、

この世界は――確実に、動く。

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