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俺のクラウディアに対する気持ちは完全に変わった。何かにつけてクラウディアを少しずつ頼るようになった。だからと言ってリーゼの事を忘れたわけではない。少しずつ、リーゼの死に向き合う事が出来るようになってきたのだろう。もちろん悲しみは消える訳ではない。それでも、リーゼの事を想いだして悲しむことも少なくなり、辛い事よりも、楽しかったことをよく思い出すようになった。もちろんリーゼの事は忘れられるはずはない。しかし確実に俺の心はリーゼを思い出に変えようとしていた。そして、それに伴って、クラウディアへの気持ちは積もって行くようになった。
そして、リーゼが死んでから一年が経った。
「クラウディア」
「はい。なんでしょう?」
「その……」
言いよどむ俺を優しく微笑みながら見るクラウディア。
「今日で一年が経つんだ」
俺の言葉に微笑みながらも少し首をかしげるクラウディア。
「その、俺はこんなんだし、未だにリーゼの事もちゃんと整理はついてはいない。それにシャーリーンもまだ見つかってない……でも、前にクラウディアも言っていた通り、前を向いて歩いて行かないといけないと思うんだ」
クラウディアの顔を見ながら話し続ける俺。
「その……それにはやっぱり俺一人の力ではだめだと思う」
そこまで言うと俺は言葉を詰まらせてしまう。後一言、その一言を言ってしまえばいいのだ。なのにその言葉が出てこない。クラウディアとはもうすでに婚約しているような物なのに、それでも最後の言葉がなかなか出てこない。
クラウディアは神妙な顔をして俺の言葉を待っているようだ。ここで俺がはっきり言わなければ、クラウディアは俺に愛想をつかしてしまうのではないだろうか? それは嫌だ。やはりここは男らしく決めよう!
「その、なんだ……クラウディア……けっ、結婚して下さい!」
俺はクラウディアの顔をまともに見ることが出来なかった。そして、クラウディアの沈黙……
まさか……やっぱり駄目なんだろうか? そうだよな、あれだけ最初の頃は邪険にしてたしな……ああ、やっぱり言うんじゃなかったな……
クラウディアは微笑みながら口を開く。
「私は、お料理もできません、もちろん武芸もできる訳ではありません。でも、少しなら治療魔術を使う事も出来ます。ですから、戦場でも少しはブルース様のお役にたてると思います。連れて行って下さいますか?」
俺はクラウディアの言葉の意味がよく解らなかった。つまり、どういうことなのだろう? 確かに治療魔術が使える者がいれば傭兵団では有難い。でも、クラウディアには戦場には出て欲しくない。いや、それよりも俺のプロポーズの返事は?
「え? いや、戦場は危ない。そんな所にクラウディアを連れて行きたくないな……。いや、それよりその……返事をまだもらってないんだが?」
俺の言葉にクラウディアは少し笑って答える。
「もちろん、お受けいたします。よろしくお願いいたしますブルース様」
その言葉で俺は茫然となった。いや、大丈夫だとは思っていた。しかし、やはり不安ではあった。本当に良かった! 「よっしゃぁぁぁ!」俺は思わず叫んでしまった。とにかくよかった! まあ、何はともあれ親父に報告しておかなければいけないな。取りあえず行こう! 俺はクラウディアの手を取り、部屋を出ようとする。するとそこにはなぜか親父の姿。うん? なんでこんな所にいるんだ? まあいい。どうせ今から会いに行こうとしてたところだ。
「親父、こんな所で何してるんだ? まあいい、親父聞いてくれ! 俺とクラウディアは結婚します!」
俺は親父にそう報告すると、親父は何かわざとらしい感じで「そうか、うむ。解った」と、一言言って俺達から離れて行った。しかし、その背中は何処か嬉しそうだった。
それから一か月後、俺達の結婚式は盛大に執り行われた。




