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選び方の変化

挿絵(By みてみん)

第26話から、三週間ほどが過ぎた。


その間も、カイは普通に学校へ通い、父の店を手伝っていた。


賭約院にも何度か寄った。


正式賭約にも参加した。


大きな勝負ではない。


三色の札。

数字の比較。

公開情報と非公開情報を組み合わせる小さな卓。


勝った日もあった。

負けた日もあった。

引き分けもあった。


以前なら、一戦終わるたびに記録を開いていた。


何を見たか。

何を読み違えたか。

相手が何を考えたか。


今は少し違う。


カイが先に確認するのは、自分の選択条件だった。


見えているもの。


見えていないもの。


確定しているもの。


推測でしかないもの。


それを分けてから札を選ぶ。


相手を見るのは、そのあと。


その変化を、カイ自身は特に意識していなかった。


三週間後。


放課後の賭約院。


カイは一枚の説明票を読んでいた。


『連鎖の選択』


二人用。


全六ラウンド。


使用札は赤、青、白。


勝敗関係はいつもと同じ。


赤は青に勝つ。

青は白に勝つ。

白は赤に勝つ。


違うのは一つ。


前のラウンドで自分が選んだ色は、次のラウンドでは使えない。


第一ラウンドは三択。


赤を出せば、第二ラウンドは青か白。


そこで青を出せば、第三ラウンドは赤か白。


選んだものが、次の自分の選択肢を減らす。


「これ、好きそう」


声がした。


顔を上げる。


セナ・ヴェイルだった。


第26話で対戦した相手。


「何で?」


「前の選択が次に残るから」


「残るっていうか、使えなくなるだけでしょ」


「同じじゃない?」


カイは説明票を見る。


「違うと思う」


「じゃあ、やる?」


セナはもう参加札を持っていた。


カイは少し考える。


以前なら。


相手が何を狙っているか。

なぜ自分へ声をかけたか。

前回の勝負を覚えているか。


そんなところから考え始めていたかもしれない。


今は違った。


まずルール。


全六ラウンド。


前回使用色は次回使用不可。


同色は引き分け。


勝利一回につき一点。


六ラウンド終了時の合計点で勝敗。


問題なし。


「やる」


二人は卓についた。


第一ラウンド。


カイ。


赤、青、白。


全部使える。


セナも同じ。


カイは赤を選んだ。


セナ。


白。


白が赤に勝つ。


セナ一点。


第二ラウンド。


カイは赤を使えない。


青か白。


セナは白を使えない。


赤か青。


ここで初めて、

二人の選択肢が違う。


カイは卓上表示を見る。


自分。


青、白。


セナ。


赤、青。


「もう読む?」


セナが聞く。


「何を?」


「私がどっち出すか」


「まだ」


「まだ?」


「先に自分の方見てる」


カイは青と白を見る。


青を出した場合。


次のラウンドは赤か白。


白なら。


次は赤か青。


今だけではない。


次の選択肢も変わる。


カイは白を出した。


セナ。


赤。


白の勝ち。


一対一。


第三ラウンド。


カイは白を使えない。


赤か青。


セナは赤を使えない。


青か白。


セナが少し笑った。


「今度は?」


「何が?」


「私を見る?」


カイは顔を上げた。


見る。


表情。


視線。


指。


札へ触れるタイミング。


見える。


でも。


それを意味へ変えるのは別。


カイはすぐ卓へ視線を戻した。


「見たよ」


「それだけ?」


「うん」


カイは赤。


セナは青。


赤の勝ち。


カイ二点。


第四ラウンド。


カイは赤を使えない。


青か白。


セナは青を使えない。


赤か白。


ここでカイは少し止まった。


これまでなら。


セナが前に出した色。


その頻度。


迷った時間。


自分への反応。


いくつも並べたはずだった。


でも今。


最初に見えているのは、もっと単純だった。


自分は青か白。


相手は赤か白。


確定しているのはそこまで。


白を出せば。


セナが赤なら勝ち。


白なら引き分け。


青なら。


セナが赤なら負け。

白なら勝ち。


青の方が結果の振れ幅がある。


白の方が負けない。


カイは白。


セナも白。


引き分け。


二対一のまま。


セナが少し首を傾げた。


「前と違うね」


「何が?」


「もっとこっち見てた」


カイは少し考える。


「そうだった?」


「かなり」


「覚えてない」


「私は覚えてる」


第五ラウンド。


二人とも白が使えない。


カイは赤か青。


セナも赤か青。


条件が揃った。


カイはそこで初めて、

セナを長く見た。


「今度は見るんだ」


「条件が同じだから」


「それで何か分かる?」


「まだ」


セナが笑う。


「相変わらずだね」


カイも少し笑った。


二人が選ぶ。


カイ。


青。


セナ。


赤。


セナの勝ち。


二対二。


最終ラウンド。


カイは青を使えない。


赤か白。


セナは赤を使えない。


青か白。


カイは卓上表示を見る。


自分。


赤か白。


セナ。


青か白。


最後。


次のラウンドはない。


だから。


次の選択肢を残す必要もない。


今この一手だけ。


赤なら。


セナが青なら勝ち。


白なら引き分け。


白なら。


セナが青なら負け。


白なら引き分け。


カイは赤を見る。


セナを見る。


一度だけ。


それから赤を伏せた。


セナも選ぶ。


公開。


カイ。


赤。


セナ。


青。


赤の勝ち。


最終得点。


カイ三。


セナ二。


引き分け一。


カイの勝利。


セナは公開された札を見てから、

カイを見る。


「最後は読んだ?」


カイは少し考えた。


「読んだっていうより」


「うん」


「自分の選択肢を先に減らした」


「減らした?」


「赤か白だった」


カイは二枚を指す。


「白なら勝てる相手がない」


「赤なら青に勝てる」


「うん」


「それだけ?」


「それを決めてから、セナを見た」


セナは少し黙った。


「前は逆だった?」


カイもそこで気づいた。


第26話。


もっと前。


リグとの勝負。


最初に相手を見て。


そこから自分の選択を決めようとしていた。


今は。


自分が持っている条件を整理する。


そのあとで。


必要なら相手を見る。


「たぶん」


カイが言う。


「変わった?」


「少し」


記録が確定する。


六ラウンド。


赤。

白。

赤。

白。

青。

赤。


並んだ自分の選択。


結果だけ見れば。


また色が並んでいるだけ。


でも。


今回はカイ自身が分かっていた。


変わったのは。


どの札を選んだかではない。


選ぶ順番だった。


相手を見る。


考える。


自分を決める。


ではなく。


自分に何があるかを見る。


分からないところを残す。


それから。


必要な分だけ相手を見る。


賭約院を出る時。


カイは、その違いを記録には書かなかった。


記録しなくても。


自分の中には残っていた。

【今回の賭博ルール|連鎖の選択】


今回は二人で行う六ラウンド制の賭約です。


使用する札は、


赤

青

白


の三色。


基本の勝敗関係は、


赤は青に勝つ。

青は白に勝つ。

白は赤に勝つ。


同色の場合は引き分けです。


特徴は、


「直前のラウンドで自分が使った色を、次のラウンドでは使用できない」


という点です。


第一ラウンドは三色すべてから選べます。


たとえば赤を選んだ場合、

次のラウンドでは青か白だけ。


そこで青を選べば、

その次は赤か白になります。


そのため現在の一手だけでなく、

その選択によって次に何が使えるかも変化します。


勝利したラウンドは1点。


引き分けは0点。


六ラウンド終了時に得点が多い参加者が勝者となり、

同点なら賭約全体も引き分けです。

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