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同じ順番

挿絵(By みてみん)

翌日の放課後。


カイは賭約院へ入ると、

中央閲覧区画へ向かった。


昨日までとは違う。


今日は記録を眺めるだけではない。


自分で同じ順番をたどってみる。


中央区画で一般閲覧。


しばらくして別の記録を参照。


そのあと北側区画へ移動して、

もう一度一般閲覧。


これまで履歴の中で何度か見つけた並び。


それを自分で行ったら、

どんな記録として残るのか。


カイは中央区画の端末を開いた。


対象は、

自分が参加した四札の記録。


一般閲覧。


時刻を確認する。


十五時十二分十四秒。


紙へ書く。


「始めた?」


少し離れたところにいたリグが聞く。


「うん」


「何するんだっけ」


「同じ順番」


「誰か分からない奴の真似?」


「人の真似じゃないよ」


カイは画面を見たまま答える。


「履歴の並びを再現する」


「同じじゃない?」


「誰がやったか分からないから」


リグが肩をすくめた。


カイはそのまま端末を操作する。


別の対戦記録を開く。


そこから関連情報として、

自分の四札の記録を参照する。


直接開かない。


参照経由。


画面上では一瞬だけ、

四札の記録が表示された。


カイは閉じる。


それから時刻を見る。


十五時三十六分二十九秒。


最初の一般閲覧から、

二十四分十五秒。


「ちょうどそれくらいだな」


リグが言う。


「うん」


でも、

まだ終わりではない。


カイは端末を閉じた。


中央区画から北側区画へ歩く。


昨日測った時は数分だった。


今日も同じ。


人を避けながら歩いても、

五分もかからない。


北側区画。


空いている端末を使う。


同じ四札の記録を直接開く。


一般閲覧。


時刻。


十五時四十二分十一秒。


カイは三つ並べた。


中央区画。

一般閲覧。


約二十四分後。

参照閲覧。


約六分後。

北側区画。

一般閲覧。


「似てる?」


リグが紙を見る。


「順番は」


カイは答える。


「でも時間が違う」


これまで見つけた履歴では、

参照閲覧を挟んだあと、

次の一般閲覧まで長く空いているものがあった。


十数分。


三十分以上。


もっと長いものもある。


自分で普通に移動しただけなら、

数分で終わる。


「途中で何かしてる?」


リグが言う。


「同じ人なら」


「またそこか」


「そこが分からないと意味変わるから」


カイは自分の履歴を確認する。


中央。


参照。


北側。


ちゃんと残っている。


少なくとも。


同じ順番そのものは、

普通の操作だけで作れる。


特別な権限はいらない。


特殊な端末もいらない。


「じゃあ昨日のやつも普通じゃん」


リグが言う。


「順番だけなら」


「違うところは?」


「間」


カイは紙を指す。


自分の場合。


参照閲覧から北側の一般閲覧まで六分弱。


過去の履歴。


十八分。


三十八分。


二十七分。


揃わない。


「移動だけじゃない」


「休憩したら?」


「できる」


「別の卓見てたら?」


「できる」


「誰かと話してたら?」


「できる」


リグが笑った。


「何でも作れるじゃん」


「うん」


カイも笑う。


それが今回分かったことだった。


履歴だけを見れば、

一つの流れに見える。


でも。


実際に自分でやってみると。


その間には、

記録に残らない行動をいくらでも挟める。


歩く。


止まる。


話す。


別のものを見る。


何もしない。


全部、

閲覧履歴には出ない。


カイは紙へ書く。


『同じ履歴でも、途中の行動は分からない』


少し考える。


その下。


『順番だけでは行動を再現できない』


リグが覗く。


「でも順番は再現できたんだろ?」


「できた」


「じゃあ半分当たり?」


「何が?」


「誰かが中央から北側に移動してるってやつ」


カイは首を振る。


「それもまだ」


「なんで?」


「俺が同じ順番を作れたことと、あの履歴を一人が作ったことは別だから」


リグは少し黙った。


「面倒だな」


「うん」


カイは端末を閉じる。


でも。


今日は一つ進んだ。


今まで履歴は、

ただ残されたものだった。


今日は自分で同じ操作をして、

どこまで同じ形になるか確かめた。


結果。


順番は作れる。


時間の空白までは説明できない。


そして。


もう一つ。


カイは自分の閲覧履歴を開く。


今作った三つの履歴。


中央一般閲覧。


参照閲覧。


北側一般閲覧。


それを見ていると、

昨日まで追っていたものとよく似ている。


リグが横から言う。


「知らない奴がこれ見たら、お前も怪しく見えるな」


カイの手が止まった。


「……そうだね」


自分は理由を知っている。


検証しただけ。


でも。


記録だけを見る人には、

その理由は残らない。


中央から北側。


途中に参照閲覧。


同じ並び。


それだけ。


カイは少しだけ笑った。


「やっぱり記録だけじゃ分からない」


「最初からそれ言ってなかった?」


「言ってた」


「じゃあ何でこんなに調べてるんだよ」


カイは少し考える。


「どこまで分からないか知りたいから」


リグが黙る。


それから笑った。


「それ、一番終わらないやつじゃない?」


「たぶん」


カイも笑う。


でも。


帰る前にもう一度、

自分が作った履歴を見た。


昨日まで。


誰かの行動に見えていた並び。


今日。


自分でも同じ形を作れた。


だから。


似ている履歴がある。


その事実だけで、

同じ理由まで重ねてはいけない。


カイは紙の最後に書く。


『同じ順番でも、同じ意味とは限らない』


今度は、

その一行に線を引かなかった。

【今回の補足】


今回は、

これまで見つけた閲覧履歴の並びを、

カイ自身が実際に再現しています。


中央区画で一般閲覧。


別の記録から参照閲覧。


そのあと北側区画で一般閲覧。


この順番自体は、

普通の利用者でも作ることができました。


ただし、

履歴に残るのは閲覧した操作だけです。


その間に、


歩いた。

誰かと話した。

休んだ。

別の場所へ寄った。


といった行動があっても、

閲覧履歴からは分かりません。


つまり、


「同じ順番の履歴が残っている」


ことと、


「同じ行動をしていた」


ことは別です。


今回はカイ自身が同じ形の履歴を作ることで、

記録から分かる範囲と、

記録だけでは分からない範囲を確かめています。

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