挿話二「二丁拳銃使いへの道」
話はカイがケインに二丁拳銃使いについて相談した後に戻る。
「ケインはああ言ってたけど、取り敢えずまずは闘技場に行こう。そこで手慣らしだ」
カイは闘技場に入り射的訓練場に向かった。幸い誰も使っておらず、すぐに取りかかれた。
「うーん、左手で撃つってどんな感じかな、こうか?」
カイは左手で一発撃った。的には当たったが的の端だった。
「ありゃ、やっぱ右手みたいにはいかないか。でも、当たっただけマシか。この調子で続けてみよう」
それからしばらくカイは射的訓練場で左手でも銃が撃てる特訓を日が暮れるまで続けた。この特訓である程度の手応えを感じたらしい。
「思ってたよりは撃てたなあ。明日の朝も特訓して実戦でも試してみよう」
次の日の朝、レイより早く起き、闘技場へと向かった。昨日と同様に特訓し、そして昼、四人集まって何の依頼を受けるかを相談していた。
「私たちがパーティに入ってから一週間経ちますし、そろそろ難し目の依頼を受けてみませんか」
「それもいいが、残ってるものでもあまりめぼしいものは無さそうだな」
「あ、これはどうでしょうか。今の私たちに丁度よさそうですし」
「えーと、ポイズンスパイダーの群れの討伐かあ。確かに僕たちのレベルなら倒せそうな相手だね」
「そうだな、これにするか。じゃあ受付してくる」
「ありがとうございます!」
(ポイズンスパイダーなら、二丁拳銃使いの練習相手としても丁度良さそうだな)
カイはそんな風に考えていた。
四人の準備が終わり、ポイズンスパイダーの群れがいる森に向かった。
「では、陣形はいつも通りで良いですね」
「ああ、よし、行くぞ!」
レイが飛び出し、ポイズンスパイダーのヘイトを集め、その隙にカウナとコモナが切りかかり、カイが遠くのポイズンスパイダーを撃ち殺す。このパーティの最近の戦い方だ。
(まずは、少し離れてるあいつを……えっ!?外した!?)
カイは試しに撃ってみたが、まさかの外したのである。
(嘘!?いや、落ち着け。もう一回……よし、今度こそ当たった)
これを何度か繰り返していた。まだ左手で撃つことに慣れきれておらず、3回に1回は外していた。
(クソ!思っていたより上手くいってねえ。左手で撃つのってこんなムズいのかよ)
ここでカイはひとつの失態を犯す。左手で撃つことに集中していたあまり、カウナの背後から近づいてくるポイズンスパイダーに気づかなかった。これを殺すのがいつもならカイの役目なのだが、今回は見逃してしまった。
しかし、レイは気づいてすかさずカウナの後ろに周った。
「カウナ!危ない!」
「……!?あ、ありがとう!」
「おい!カイ!どうした!お前らしくないな!さっきから弾が当たって無いようだが!」
「悪い!」
「……チッ、しっかりしてくれよ!」
(クソ!やらかした!左手で撃つのに精一杯になって視野が狭まってる!これじゃあ、本末転倒じゃねぇかよ!)
それからカイは銃を右手に持ち替え、応戦した。
四人はポイズンスパイダーの群れを討伐し終わり、帰路についていた。
「カイ、お前今日どうした。初めはの方は弾を外しまくってたようだが」
「確かに、カイさんにしては珍しいように感じますね」
「えーと……実は少し好奇心で左手でも銃を撃てるのか試してたんだけど、あまり上手くいかなくって。ほんとごめん」
「はあ、そんなことかよ。真面目にやってくれ。下手すれば死人が出る仕事をしていることを忘れるなよ」
「あ、ああ。肝に銘じておくよ」
(なんか、レイ、怖いな……)
その後、四人はギルドでご飯を食べ、それぞれの宿に帰り、部屋に入った。
「あー、今日は上手くいかなかったなー。レイに怒られちゃったし、やっぱり二丁拳銃使いになるの辞めようかな。でも、僕もパーティに貢献できるようになりたいし、サプライズでできるようになったって言ったらみんなどんな反応するのか気になるから頑張って続けよう」
それからカイは来る日も来る日も二丁拳銃使いになるため、特訓に励んでいた。時々、レイに怒られることはあったが、挫けずに続けていた。
しかし、カイはある事実に気づいていなかった。いや、気づかないフリをしていたのかもしれない。レイとカウナの仲が日に日に良くなっていることに。そして、カイのパーティの扱いが少し雑になっていること、またそれが二人によるものだということも。
カイは最近パーティでの居心地が悪いと感じていたが、二丁拳銃使いになればその状況が変わることに賭けて、日々特訓していた。その様子をコモナは遠くで見守っていた。
それが功を奏したのはカイが二丁拳銃使いになることを決意してから二週間後、ギルドのジョブチェンジ試験に合格できたことだった。気づいたら六月の上旬になってた。
「おめでとうございます。あなたは二丁拳銃使いの適正があることが認められました。正式なジョブチェンジ手続きは明日の朝にお願いします。お疲れ様でした」
「ありがとうございます!やっと終わったー!疲れたー!」
カイは、せっかくの休みなのに半日を使って試験に臨んでいた。さすがに疲れた様で水浴び場で身体を洗ってから帰ることに決めた。
「あっ、誰も居ない。ラッキー、貸切じゃん」
遅い時間帯だからか流石に水浴び場には誰も居なかった。
「いやー、本当に良かった。試験受かって。これから大変になるかもだけど、がんばろー」
身体を洗い終わり、水浴び場を出ると、そこにはコモナがいた。
「あれ、コモナさんどうしたんですか。こんな夜遅くにこんな場所で」
「ええと、カイさんを探していて、あの良かったら少しお話しませんか」
「ええ、いいですけど」
「良かった。じゃあ、私についてきてください」
コモナはそう言い近くの広場へと向かい、カイはコモナについて行った。
「それで話って」
「ええと、大したことではないんですけど、最近のカイさん少し調子悪いなーって感じてたんです。どこか具合が悪い様でしたら、しばらく休んでみてはどうですか」
「あー、その事でしたか。いえ、僕は特にどこが具合が悪いって訳では無いので安心してください。心配かけてすみません」
「そうでしたか。じゃあなんで」
「その理由は明日分かりますよ。かなり頑張ったので期待しててください!」
「ええと……いえ、わかりました。楽しみにしておきます!」
コモナは笑顔で返事をした。やっぱり可愛いなこの人とカイは思った。
「話は終わりましたし、私は宿に戻ります」
「送りましょうか」
「お気遣いありがとうございます。私の宿はすぐ近くなので大丈夫です」
「そうですか、では気をつけて、また明日」
「はい、また明日」
そう言って、二人は別れた。カイはなんだかスッキリしない気持ちがしていたが、気にせず帰路についていた。
この後、不幸が降りかかることも知らずに。
次の日の朝、カイはギルドへと向かっていた。
(朝、ピルロおじさんいなかったけど、どこに行ったんだ?おかげで朝ごはん食べ損ねてるんだけど。まあ、いつものでいいか)
そう思い、串焼き屋で腹ごしらえをし、闘技場で時間を潰してからギルドに向かった。ギルド嬢に昨夜ギルドのジョブチェンジ試験を突破したことを報告し、新しいギルドカードを作ってもらった。
「これで晴れて二丁拳銃使いになれた!ケインの言う通り、思ったよりも早く習得できたな。まあ銃が二つに増えたから魔力消費量も二倍に増えて余計疲れやすくなったけど……その辺はなんとかするしかないな。てかあいつら遅いな。いつもならもういるはずなんだけど」
カイは他のメンバーがまだギルドに来ていないことを疑問に思っていた。仕方なく、カイは入り口近くの机で銃の手入れをしながら三人の様子が少しおかしいことについて考えていた。
(そういや、あいつら朝の特訓に来てたっけ。最近、あまり見てないような。それにレイのやつ、朝、宿にいなかったし、どこ行ったんだろ。来たら聞いてみよ)
そんなことを考えていると、入り口の扉が開き、三人が入ってきた。
「あ、やっと来た。随分と遅かっ……」
「カイ、おまえに大事な話がある」
「……え?どうした、そんなに改まって」
カイはそう言ったと同時に直感が働いた。今から自分にとって最悪なことが起きると。それを認識した途端、カイの背中に氷のような冷たいものでなぞられたような寒気を感じた。
(こいつ、今から何を言い出すんだ!)
その時、強い風が吹いたのか窓の格子がガタガタ鳴っている。今日は曇天だ。しかも暗い。
レイは小さくため息をつき神妙な面持ちでこう言った。
「俺たち三人で、この街から出ていくことにしたから」




