挿話一「二人の女性冒険者」
私、カウナ=ラサロが冒険者をやりたい理由は単純に冒険者に憧れていたから。
小さい頃から冒険者が出てくる物語をよく読んでて、私も大きくなったら物語みたいな冒険者になるんだってよく思ってた。
難しい依頼を難なくこなして、街の人からチヤホヤされたり、同じパーティメンバーの男の人と甘い恋の関係になれたり……なんて妄想をほぼ毎日してたような。
それで、冒険者になりたいって親に相談したら、あっさり認めてくれた。なんなら
「カウナにもやりたいことができたんだな」
って喜んでた。このことを妹にも言ったら、
「じゃあ私も冒険者になる」
って言ってた。なんでか理由を聞いたら
「だって、お姉ちゃんのやりたいことは私のやりたいことでもあるんだ」
だって。それだと、お姉ちゃんあと1年待たなきゃいけなくなるじゃん!冒険者は15歳からなんだよ。せっかく15歳になって冒険者になれると思ってたのに。
仕方ない。ここは、コモナが15歳になるまで待ってあげよう。その間私は冒険者の心得的なのを学んでよ。
と思って、早1年。私とコモナは正式に冒険者になれました!パーティ名はテキトーにシスターズにしといた。……さすがにいいのが思いつかなかった。
ジョブは私が片手剣使いでコモナが両手剣使い。妹よ、とこでそんな物騒な武器の持ち方を覚えたのかな……。
でもこれで、念願の冒険者生活が幕を切った!これで、街の人からチヤホヤされたり、甘い恋もそう遠くないはず!よーし、これから冒険者として頑張るぞー!
……と意気込んで冒険者生活を始めてすでに2ヶ月が過ぎた。なのに、なのに!私たちのランクは最低ランクのEのまま(泣)。普通なら大体1ヶ月でDランクになれるはずなのに私たちだけだよ、こんなに時間かかってるの……。もう少し頑張ってDランク目指そう……。
やっと、やっとDランクになれた!本当に頑張ったー!冒険者になってから3ヶ月かかってる……。はは、笑えないね。唯一の救いは妹が私に従順で癒し枠であること。何回コモナに救われたことか。ありがとう、妹よ。でも、CランクになるにはDランクで半年間実績を積まないといけないのよね。長い……。でも、夢のために頑張るよ!
なんだかんだで半年以上が過ぎて私も17歳になった。そして結局私たちはまだDランクのまま。やっぱり私たちには冒険者の才能ないのかな。今思えば私の夢なんてほんとちっぽけ。なんなの、みんなにチヤホヤされたいなんて、それに今まで一度もいい出会いなんて無かった。……次の依頼を受けて上手くいかなかったら冒険者、辞めようかな。うん、そうしよう。コモナには悪いけど、ちゃんと説明しよう。
「うん、わかった。お姉ちゃんが決めたのなら、私はそれでいいよ。私はお姉ちゃんと一緒にいたいし、お姉ちゃんの幸せが私の幸せだよ」
「あなたは相変わらずだね。ありがとう、こんなお姉ちゃんについてきてくれて」
「ううん、いいの。それで、次の依頼は何を受けるの」
「次はこれ。近くの草原でコボルト5体の討伐。これが最後になるかもね」
「わかった。コバルトなら前にも倒したことがあるし、私がしっかりサポートするから大丈夫だよ」
「やっぱり、コモナは頼りになるね、ありがとう。じゃ、早速行こうか」
草原に来てみたものの、コボルトの姿が見当たらない。もしかして、情報が間違ってたのかな?もう少し探してみよう。
うーん、いない。もう日も沈んできちゃったよ。流石にこれ以上暗くなると危ないし、てか、何もない草原なのになんで見つからないんだろう。あるのはこの大きな岩だけ。目印になるからコモナとの集合場所をここにしてるけど、コモナ遅いなあ。……ん?誰か走ってくる。コモナかな?なんか言ってるけどなんだろう。
「……えちゃん!上、上!」
え?上?「……!!」
カウナが岩の上の方を見上げたと同時にコボルトが棍棒を振りかざしながら落ちてきていた。カウナはタイミング悪く見上げてしまい、棍棒がカウナの額に力強く当たってしまった。そして、カウナは気絶し、その場に倒れ込んでしまった。
追い討ちをかけようとしていたコボルトをコモナが間一髪追い払ったが、その場しのぎでしかなかった。後ろにはまだ、コボルトがいる。
「お姉ちゃん!お姉ちゃん!起きてよ!お姉ちゃん!」
コモナは何度も呼びかけたが、カウナが目を覚ます様子はない。
「嫌だ!嫌だ嫌だ嫌だ!私がお姉ちゃんをサポートするって言ったのに!」
しかし、コモナにできることはほとんどない。回復アイテムも節約のためあまり持っていない。もしこのまま一生目を覚まさなかったらどうしよう。そんな気持ちが頭をよぎると同時にコモナは涙が溢れ出した。
(誰か、助けて、お願い!)
そう思ったと同時にどこからともなく銃声が聞こえた。
「え……」
驚く暇もなく、ある一人の男性が近づいてきた。
「どうしましたか!?」
「お、お姉ちゃんが目を、覚まさ、なくて……!」
「分かりました。少しいいですか」
その男性はそう言うと、カウナにポーションと魔法をかけ、手際よく包帯を巻き、カウナをお姫様抱っこしてこのまま病院に行くと言った。
そしてこの男性がカイという人に病院に行くことを伝え、駆け足で病院に向かった。
(もう一人いたんだ)
コモナはその男性のことが妙に引っかかったが今はお姉ちゃんに集中とすぐに切り替えてしまった。
私、死ぬのかな。あーあ、短い人生だったなあ。やっぱり、私は冒険者に向いてなかったんだね。もっと早く気づくべきだったなあ。もう、後悔しても遅いよね。コモナ、あなたは私よりもいっぱい生きて幸せになるんだよ。……ああ、なんだかあったかいなあ。まるでお布団にくるまってるみたい。きっと死期が近づいてるんだろうね。ほら、誰かに担がれて運ばれてる。でも、誰だろう。きっと、その人が私の王子様だったりね。そう、この人が私の王子様……。
う、うーん。知らない天井。私はどうなって、それと、ここはどこなんだろう。それより、私は生きてるの?
「あ、お姉ちゃん!やっと目を覚ました!よかった!」
「ちょ、コモナ。急に抱き付かないでよ。えっと、私はあの後どうなったの?」
「ええとね、あの後……」
「そうだったのね。助けてくれた人には感謝だね。名前は聞いたの?」
「それが、聞きそびれちゃって」
「そっか、またどこかで会ったらちゃんとお礼言わなきゃだね」
それから、私は完治するまで、病院に入院してた。そしたら、そこのお医者さんが私を助けてくれた人に心当たりがあるらしく、サファイアっていうパーティ名で活動してる冒険者のうちの一人らしいの。私も噂でサファイアの大盾使いの人がかなりイケメンだって聞いたことがある。もしかして、その人に助けてもらったの!?私幸運すぎない、やっぱり、もう一回会いたい!探さないと!
しばらくして、サファイアの二人を見つけることはできたし、観察してわかったことはほぼ毎日あの二人で行動していること。もしかしたらワンチャンあるかもってずっと思ってるんだけど、なかなかそんな機会に出会えないのよね。自分から話しかける勇気も無いし。それにあの二人も依頼に向かっちゃった。私たちも依頼に行かないとね。最近めっちゃ頑張ってやっとCランクになれたんだから。
いい依頼残ってるかなあ。あれ、なんだろうこれ。サファイアのメンバー募集、希望は片手剣使いと両手剣使い。
……え?これって私たちにピッタリなんじゃ……。え、え!ちょっと待って!こんなことあり得るの!?これ、もしかして今持ってけば受理してくれるんじゃ……!よし、行ってみよう。
「ええ、勿論構いませんよ」
「やったー!」
あ、声に出ちゃった。でも、念願の人と同じパーティで活動できるなんて。すごく楽しみ!早くコモナに伝えないと。
コンコン、ドアを叩く音が聞こえる。もうすぐだ。
「シスターズ様、サファイア様をお連れしました」
「はい、どうぞお入りください」
私がそう言うと、ドアが開いた。そして見えてきたのはいつも遠くから見ていたあの二人だ。私は最高の笑顔でこう言った。
「お久しぶりです!サファイアのお二方!」




