第二話「ただ、強くならなくちゃって」
カイが目覚めたときには日が昇り、窓から日光が差していた。
革鎧を着ていることから、ギルドから戻った後すぐに寝てしまったのだろうと容易に想像できていた。
そして、二日酔いのせいだろうか、頭が痛そうだ。さっきから頭をおさえている。
「うぅ、頭いてぇ、飲みすぎたか。それになんか大事なことを忘れているような……」
まあいっかと開き直り、頭の痛さを我慢しつつ、レイのもとへ移動した。二日酔い程度の頭痛ならレイの回復魔法で治せると思っていたからだ。
扉を開けると、トイレから戻ってきたのであろうレイと遭遇した。出てくると思っていなかったのか、驚いた顔をしている。
「おっと、カイか。おはよう、昨日はよく眠れたか?」
「おはよう、レイ。おかげでぐっすり。だけど、今頭が痛くて、悪いんだけどさ、治してくれない?」
「二日酔いか?」
「多分」
「全く、お前は酒に弱いんだからほどほどにしとけといつも言っているだろう」
レイは呆れ声で言った。
「はい、以後気をつけます」
カイは肩を落とし、しょんぼりしていた。
「待ってろ、今治す」
そう言ってレイはカイの頭に手を乗せ、
「彼の者の痛みを癒し賜え、ヒール」
と詠唱した。その後すぐに緑の光がカイの体を包み、ゆっくりと消えていった。
「ありがとう、おかげで痛みが引いたよ」
カイは伸びをしながら言った。
「よし、いつも通りギルドの闘技場で昼まで時間潰して依頼行こうぜ」
「ああ、そうだな」
ギルドの朝は新依頼や難しいが、報酬のいい依頼が多く出回る。また、依頼受注は高ランク冒険者が優先されるため、それらを狙った高ランク冒険者が集まってくる。だから、朝に行っても邪魔がられるだけなのだ。
それを知っているカイたちは冒険者の特訓用施設になっているギルドの闘技場で時間を潰そうとしているのだ。二人は各々の部屋に戻り身支度を済ませ、すぐに部屋から出て、宿屋を後にした。
闘技場に向かう道中、カイのおなかが鳴り、朝ご飯がまだのことに気づいた二人は屋台が並ぶ街道に寄ってから行くことにした。
そこにはギルドの開店前だというのにもう店開きをしているところが多かった。二人はその街道を歩き続け一つの串焼き屋を見つけた。
「あの串焼き屋でいいんじゃないか」
「そうだな、いい匂いもしているしな」
「よし、決まりだな。僕が買ってくるよ、何本食いたい?」
「二本で」
「了解」
カイは足速に串焼き屋に向かい、無事購入し、レイの元へ駆けていった。そして、カイはレイに串焼きを渡し、近くにあったベンチへと移動した。
二人はベンチに座り朝食をとった。
「結構いけるな、これ」
カイは串焼きを口に頬張りながら言った。
「ああ、うまい」
レイがそう答えると、カイが何か思い出したように話始めた。
「あっそうだ。今日こそは射的訓練場のほうに行くからね。昨日できなかったから」
「別に、構わないぞ。逆に巻き込ませてしまって悪かったな」
「別にいいよ。楽しかったし」
その後すぐに二人は食べ終わってしまった。
「飯も食ったことだし、そろそろ向かうか」
「そうだな……実は、カイ、一つ聞きたいことがあるんだが、いいか」
レイが少し神妙な面持ちで言い出した。
「おお、いいけど、どうした?」
「最近俺、誰かにつけられてる気がするんだ。昨日だってお前を連れて帰っている時だったり、朝ギルドの闘技場に向かってる時にもそんな気がしてたんだ。今も誰かに見られているそんな気がしてならないんだ」
「うーん、僕はそんな気はしないけど、レイの気のせいか、気にし過ぎなんじゃない?」
「それならいいんだが、お前の直感は何か告げてるわけではないよな」
「うん、何かを告げてるわけではないけど、まあ、自分に対すること以外の直感はあまり働かないし働いてもあまり当たらないんだよね。てか、いつからそんな気がしてたの?僕は全く気づかなかったんだけど」
「二週間くらい前からだ」
「えっ、まじ!?思ってたより長かったわ。でもなあ、実害が出てるわけでもないし、もうしばらく様子を見るでいいんじゃないかな」
「そうだよな……。悪い、変なことを聞いてすまなかった」
「いやいや、こちらこそあまり役に立たなくてごめん……ああ、あと、言い方悪くなるしこの間も言ったけど、レイって昔から自分の世界に入ったら周りが見えなくなる悪い癖があるからもしかしたらそれかもよ」
「そうか、善処する。ほら、もう訓練行かないと場所取られてしまうぞ」
「おう!そうだな」
会話を終えた二人は駆け足でギルドの闘技場へと向かった。その数メートル後ろで二人の後を追うように動き出した二人の女性の影があった。
二人が闘技場に着いた頃には、もう数十人の冒険者がいた。いつもは一番乗りか三番目、もしくは四番目なのに今日は遅れてしまった。
「やっぱりもう結構きてたね。これは少し順番待ちする必要がありそう。僕の射的訓練場はすぐに回ってきそうだけど、レイのとこの対魔物訓練場は……時間かかりそうだな」
「じゃあ、おまえが終わったら、先に水浴びして依頼を探しといてくれ」
「そうだね、そのほうが効率いい。うん、分かった。じゃ、また後で」
カイがそう言った後、二人はそれぞれの訓練場へ移動した。カイは自身の射的技術を磨くため射的訓練場で、レイはギルドの専属ベテラン冒険者がルーキーを中心に魔物との実践を想定した訓練を指導している対魔物訓練場でそれぞれ自身の強化を図っていた。
二人はほぼ毎日ここにきているため少し有名になっていた。
カイが射的訓練場の前で順番待ちしている時、いつも一緒に訓練している同じ銃使いのジム=ゴフトンが話しかけてきた。彼はもう訓練は終わったのだろうとカイは思っていた。
「よう、カイ、今日は珍しく来るの遅かったな」
「朝飯食うのに時間かかっちゃて」
「ふーん、なんだ」
「なんだってなんだよ」
カイはすかさずツッコミを入れる。
「まあいいや、俺はもう終わったから先に上がらせてもらうぜ、おいしい依頼は早い者勝ちってな」
ジムはカイに背を向け手を振りながら去っていった。
「ああ、好きにすればいいだろう」
カイは少し投げやりな返事をした。
その後しばらく待った後、やっとカイの順番が来た。
ここの訓練場はスイッチを押すと魔法で的が出てくる。それを正確に打ち抜くと新しい的と入れ替わる。それをひたすらに繰り返すものだ。難易度も調節でき、難しくなるにつれ、的の動く範囲が上下左右ともに広くなる。
カイがいつも特訓している難易度は、設定されている難易度の中でかなり難しいほうだ。それをほぼ正確に打ち抜いているため、カイの銃の腕前はCランク冒険者ながら高ランク冒険者に引けをとらなかった。また、的を打ち抜く速さも異常で高難易度の状態で、一分間で百枚の的を連続で打ち抜いたことがあった。
そんなカイだが、その腕前を落とさぬよう日々特訓しに来ているのだ。
「よし、今日もいつも通り始めましょうかな」
そうつぶやいてカイは特訓を始めた。
カイにとってこの特訓は朝飯前だ。それゆえ、すぐに終わってしまった。待っていた時間と特訓していた時間が釣り合わず、少し不服そうに射的訓練場をあとにした。
「なんか最近、すぐに特訓終わっちゃうからここに来る意味、なくなってる気がするんだけど……」
そんなことを考えながら出口に向かっていった。
「レイはまだかかりそうだし先に水浴びしておこっと。レイもそんなこと言ってたし」
闘技場の隣には付属の水浴び場、つまり、風呂場がついている。そこは、訓練を終えた冒険者が汗を流しによく集まっている場所だ。カイはそこに足を運び、汗を流すことにした。
カイが汗を流し終え水浴び場から出てきたころにはもう太陽が高い位置にあった。
「やばいな、結構時間かかっちゃったな。ギルドにいい感じの依頼まだ残ってるかな」
カイは急いで真向かいにあるギルドへ入った。ギルド内はカイが想像していたよりも閑散としていた。もっと人がいると思っていた。
少し驚いた表情をしつつも、依頼が張り出されているボードに目を移した。依頼は多いときの半分くらいあった。
カイはほっとしてボードに近づきその日のうちに終わりそうな依頼を探した。そして見つけたのがオークの群れを討伐するといったものだった。これなら昨日と同じくらいに終わるだろう、と思い、受付に依頼受理をお願いしに行った。
依頼の受理が終わったカイは自分の銃を掃除しながらレイを待つことにした。
カイは自分の銃を命の次に大切にしているため、銃の手入れは欠かさないのだ。そして、カイは二丁拳銃使いになるべきかどうかを悩んでいた。
世間的には拳銃使いはそれなりにいるが、二丁拳銃使いになると話は別だ。拳銃自体扱うのが難しく、利き手とは逆の手で扱うのは尚更だ。
しかし、二丁拳銃を習得するとパーティ貢献度はかなり高くなる。機動力や雑魚敵の殲滅力など味方の火力の底上げに繋がるため、かなり重宝されていた。
だから、二人しかいないサファイアには貴重な攻撃源となることには違いなかった。カイはレイが来たらこのことについて相談してみようと決めた。
しばらくして、レイがギルドに入ってきた。それを見つけたカイは「こっち」と言いながら手招きしてレイを呼んだ。
太陽がちょうど南の方角を示しているらしい。窓の外に見える建物の影がかなり短くなっていた。
「どうした、すごく時間かかってたみたいだけど」
「実は、かなり混んでいたから監督から『お前はいつも来てるから最後な』って言われて、それでかなり時間がかかってしまったみたいだ」
「なるほど、事情は分かった。確かにそれは時間かかるな。あ、そうだ。依頼受けておいたよ。オークの群れの討伐のやつ。これでいいでしょ」
そう言いながらカイは依頼内容が書かれた紙をレイに手渡した。レイは渡された紙を一瞥して、
「ああ、これでいいだろう」
と言いカイに返した。その瞬間、レイのおなかがなった。
「レイのおなかが鳴るなんて珍しいな。なんかいいことありそう」
カイが少しからかいながら言った。
「俺だって鳴るときは鳴るし、今はちょうど昼時で、朝飯食ってから運動しかしてないから腹だって減るだろう」
必死で弁明するレイを見て笑うのに耐えながら、
「じゃ、先に飯食うか」
と提案し、ギルドで昼食をとることにした。
二人はギルドのメニューの中で一番安いものを食べていた。カイはまだ二丁拳銃のことについてレイに聞いていなかったことを思い出た。
「あのさ」「あのな」二人同時に口を開いた。「どうした」先にレイがカイに聞いた。
「じゃあ、先に。実は僕、二丁拳銃使いになろうかなって思ってるんだよね。ほら、うちの攻撃ソースは僕のこの銃だけだからさ、もっと増やしたいなって思って。それに、僕自身もっと強くならなくちゃって……。レイはどう思う?」
「そうだな……、俺は必要ないと思う」
「え、どうして」
カイにとってこの答えは少し意外だった。レイなら、「お前ならなれるよ」と肯定してくれると思っていたからだ。
「落ち着け、一旦最後まで聞いてくれ。お前の実力なら多分一つで十分だと俺は思う。それに、俺が言おうとしてたことと繋がると思う」
そう言うと、レイは一息ついて、
「新メンバー募集しないか」
と静かに言った。
それを聞いたカイは確かにその方法もあるなと納得した。人が増えれば攻撃要素も増えるし、はるかに効率がいいし、早




