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来やがれ!ダンジョン学園!!  作者: 志摩鯵
第3話「出て行け!西岡十太郎!!」
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デート




翌朝。


「うう…。

 うう……。」


十太郎は、義姉のお尻が顔に来ている状態で目が覚めた。

両脚が首に絡みついている。


「殺されるー。」


十太郎は、義姉の脚を振り解いてベッドから逃げるように起きる。

静かに着替え、下に降りていった。


「継母さん。」


珍しく継母が台所にいる。

普段は、義姉と義妹が料理担当だ。

継父は、寿司屋だが家で料理しているところを見たことはない。


「貴方も大変ね。

 いつも二人の玩具にされて…。」


「ははは…いや…ははは。」


十太郎は、苦笑いするしかない。

テーブルにある義妹の作ったパンを食べる。


「今日、外出するから。」


「彼女?

 ようやくあんたにも普通の女の子ができたのね。」


継母は、そういって苦笑いした。


どこに行ってもメイと葵がべったり十太郎には、くっ付いていた。

二人が血の繋がらない姉妹だということは、小中と噂になっている。

そのせいか女子は、十太郎を敬遠している節があった。


義理とはいえ姉と妹と関係のある男子。

修羅場も泥沼も外野だから楽しいのだ。

これでは、芳醇に匂い立つ美味な果実が熟れていても誰も手を伸ばさない。


「上手く行くと良いね。」


「う~ん。

 倉橋葉月って子で幼馴染だったんだけど。」


「ああ…。

 小学校の頃に仲が良かった子ね。」


継母は、つい昔のことを思い出した。


いつも義姉と義妹がくっ付いていて友達ができない十太郎。

そんな彼に随分と親しくしていた元気そうな女の子を。


「確か小1で引っ越ししていった…。

 こっちに戻って来たのね。」


「うん。」




朝御飯を食べ終えた十太郎は、約束の場所に向かう。

既に葉月が待っていた。


「おーい!」


葉月が手を振って十太郎を呼ぶ。


葉月は、半ズボンにTシャツとボーイッシュな選択。

胸には、大きなAvenirフォントで”FAILED”。

特に半ズボンは、形が物凄くダサい。


大きなむねしりは、着られる物を制限する。

自然と男物ばかりになってしまうのだろう。


「やあ。」


やっぱりご機嫌取りみたいで気が引けるな。

十太郎は、騙してるみたいで気が晴れなかった。


「服が欲しいんだよね。

 ちょっと見て貰って良い?」


「うん。」


十太郎は、上の空で葉月に返事する。


やっぱり止めようかな。

葉月を《スケロスの窖》に誘うのは…。


怖い思いをするだろうし、危険な奴がいっぱいいる。

命は、安全でも嫌な思いはするだろうし。

何より信じて貰えないかも知れない。


「どう?

 まだ早いけど水着も見てくれる?」


「うん。」


上の空の十太郎と楽しそうに買い物する葉月。


十太郎は、金には困っていない。

向こうから持ち帰った金貨は、岩戸が独自のルートとやらで換金していた。

使っても使い切れない大金だ。


「じゃじゃーん!」


葉月は、男の欲望を掻き立てる刺激的な水着を選んだ。

思わず誰もが振り返ってしまうような画面だ。


しかし十太郎は、浮かない。


「ちょっと凄すぎじゃない?」


「何着ても私は、凄すぎるんだよ。

 ほら。」


といって胸を揺すった。

乳房が撓み、淫靡な景を作る。

津波の破壊力だ。


それでも十太郎は、憂鬱だ。


「何食べようか?」


「ラーメンで良いかな。」


二人は、近場のラーメン屋を選んだ。

別にSNSの人気店でも何でもない。


席に着くと十太郎は、少しずつ情報を小出しにすることにした。


「ねえ。

 ………葉月って。」


「うん?」


「ゲームとか好き?」


とりあえずこの辺りかな。

でもゲームが好きだからって異世界冒険は、飛躍してるよな。


「別に普通だと思うけど…。」


「じゃあ、旅行とか…。」


「分かんない。

 ウチは、あんまりそういうの行かないから。」


葉月は、話しながら店員を呼ぶ。

注文を受けにアルバイトがやってくる。


「すいません。

 味玉鳥塩まぜそばください。」


「………ば→い゛。」


不愛想なアルバイトの女の子がメモを取る。

その上、なんだか声が酷くかすれていた。


(おい、夜桜…。

 お前は、どうする?)


返事はない。

まだムクれてるのか。


「鯛ラーメンと地鶏白湯。

 からあげとチャーハンセットで。」


「え゛→↓!?」


目を丸くしたアルバイトは、ペンを握って驚いていた。

口をぽかんと開け、カエルみたいになっている。


よく食べる人はいてもラーメンを二つ頼む人は、見たことがない。

それに十太郎は、そんなに食べるように見えない。


「ずぎまぜん↓…。

 ぼ客様ば→、三名様でじょ↑ぶが→…?」


おずおずとデス声でアルバイトが訊く。


「ちょっとこいつ食べる量、おかしいから。

 聞き間違いじゃないよ。」


と葉月がいった。

アルバイトは、言われた通りメモに書いてテーブルを離れた。


「……で。

 旅行とか好き?」


十太郎は、話を戻した。

葉月は、天井を見上げ、考えてから答える。


「う~ん。

 自転車は好きかな。

 自転車でどっか行こうか?」


「ああ、うん…。」


そういう話じゃない。

二人でどこか行こうっていう話題じゃないんだ。

でも、ストレートに説明できない。


十太郎は、コップを両手で握りしめて俯いた。


何も言わずに俺を信じてくれ!

って言って《スケロスの窖》まで着いて来てもらおうか?

でも、葉月の気持ちが…。


「こーんにーちはー。」


声がする方を十太郎が見ると鳩巣きゅうそうが顔を出していた。

パーテーションから半身を出し、こっちを見ている。


「うあっ。

 流川るかわさん…っ!?」


十太郎が驚いている間に鳩巣は、彼の隣に着座した。

そのままブザーを押して店員を呼ぶ。


「すいません。

 店員さん、濃厚トンコツ醤油ラーメンください。」


「ばい゛→。」


声のかすれたアルバイトは再度、注文を聞いて奥に下がっていった。


「誰?

 誰なの?」


葉月は、驚きと戸惑いの目で鳩巣と十太郎を交互に見る。

いきなり現れた女の子は、かなりの美人で着ている物もカッコイイ。


十太郎は、少し鳩巣を睨んだ。


「あのさ。

 デート中なんだけど。」


「見れば分かる。」


鳩巣は、スマホの画面を開いた。


「西岡君。

 例のアレ、一部の界隈じゃニュースになってるよ。」


岩戸クラン、西岡十太郎を追放!

こんなものを記事にしている馬鹿が居た。


「うわあ!?

 なに考えてんだこいつら!?」


十太郎は、鳩巣のスマホを覗き込んで絶叫した。

葉月は、面白くなさそうに隣で見ている。


「ご安心あれ。

 幽撃倶楽部ゆうげきくらぶの力は、強大だ。

 このページは、削除させるから…。」


鳩巣は、そう言ってにっこり微笑んだ。


「この手の馬鹿が出始めてるんだよね。

 ……西岡君も気を付けて。」


「はあ…。」


十太郎は、頬杖着いて溜め息を吐いた。

まさか自分が晒される世の中になるとはね。


「まあ、UFOとかUMAとか。

 世界の神秘を秘匿し、偽情報を流すのが幽撃倶楽部の目的もであるから。」


そういって鳩巣は、スマホをしまう。

十太郎が眉宇まゆを上げる。


「え?

 あの動画って全部、嘘なの?」


「当たり前じゃん、はははっ。

 私らは、神秘の学徒であって秘密を暴く狂人集団じゃないよ。」


といって鳩巣は、悪戯っぽく笑う。


そうか?

どっちかっていうと狂人集団に見えたが。


十太郎は、そう思った。

しかしこうして自分の情報を晒した記事を削除してくれた訳だし。

ここは、イメージを改めても良いな。


「ねえ?

 この子、誰?」


ずっと成り行きを見守っていた葉月が遂に口を挟む。


「ああ。

 鳥剣高校の流川鳩巣さん。

 ちょっとした知り合い…。」


十太郎は、そう言って鳩巣を葉月に紹介した。


何もいかがわしいことはない。

………とは、言えない。


「どーもでーす。

 彼女さんですか?」


鳩巣が葉月に挨拶する。

葉月は、腑に落ちない様子で返事した。


「どうも…倉橋葉月です。」


「お買い物?」


鳩巣が荷物を見てそう言った。

葉月は、犬のように歯を剥いて嫌がってる。


「デート中なんですけどォ?」


「あっははは…。

 ごめん、ちょっと用事があってね。」


葉月に睨まれた鳩巣は、笑って話をはぐらかそうとした。


倉皇そうこうする間に注文した料理が運ばれてくる。

取り立てて物珍しくもない平凡な内容だ。


「そういや鳥剣高校って言えば。

 ………頭いい学校だっけ?」


葉月が鳩巣に訊いた。

ちょっと十太郎の手が一瞬、止まる。


「いやぁ、良くないね。

 アホ学校だよ。」


そう答えた鳩巣は、ケラケラと笑う。

葉月は、眉を吊り上げて面食らった。


「ええっ?

 そうだっけ…?」


「たぶん鳥剣西とごっちゃになってるよ。

 鳥剣は、頭良くないね。」


「そんな話止めろよ…。」


十太郎は、青い顔で狼狽えた。

岩戸たちの顔が浮かんで来たからだ。


「学校なんて関係ないだろ。

 仲良くしてやってくれよ。」


「は?」


葉月は、目を丸くした。


「急に女の子が出て来てあんたとベタベタしてて。

 あんた、そいつと仲良くしろっていう?」


「はははは…!」


鳩巣が面白がっていた。

眼鏡を指で持ち上げ、肩を震わせている。


「じゃあ、私、自分のお勘定払って消えるわ。」


食べ終わった鳩巣は、そう言って席を立つ。


「良いよ。

 流川さんの分も持つよ。

 ……さっきのニュースページ削除してくれたし。」


と十太郎が引き止めるが鳩巣は、手を振って断わった。


「それは、また精神的にお返しして貰いますんで。

 じゃあ…。」


それだけ言って鳩巣は、退散した。

葉月がちょっと困った顔をしている。


「ごめん。

 私のせいで追い返したみたいになって…。」


「あ、え…?」


こういう時、なんて言えば良いんだろう。

十太郎は、しどろもどろに口ごもってしまった。

ずっと義姉と義妹に囲まれてて一般的な人付き合いが苦手だ。


「べ、別にそんな親しい人じゃないんだよ。

 ちょっと………。」


ちょっとどこで知り合ったと言えば良いんだろう。

十太郎は、色々考えて


「塾で…ね。

 なんかこう、話すようになってさ。」


「ふ~ん?」




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