第九話 主人公の座を取り戻せ!!!!!
アダム・ヴァレン君は、エルガー学園高等部一年である。
あれ、アダム・ヴァレンって19歳じゃなかった?
と思った皆さん。
勘がいいですねぇ。あちらの世紀末極まれりの本編は、α世界線として、こちらのすぴんおふはβ世界線と
今勝手にしたので、β世界線に限り、
アダム・ヴァレン君は高校一年生になってしまったのだ!
ま○しぃ!飛べよぉぉぉぉぉぉ!!
ーーアダム・ヴァレンは、早朝の空気が舞い込む教室で、一人息を吐いた。
窓際の座席に座るアダムは、冬の新鮮な空気を吸いながらも、このような自分の物思いに、一人でありながら笑ってしまいそうになる。
そう、教室に着々と集まり始めた周囲の人間は、
誰も話しかけてくれないのだ。
アダム・ヴァレン、1-Aクラス。
成績不良、運動神経普通。趣味アイドルグッズ集め。
そして、ぼっち。
いそいそと、スマートフォンを取り出し、「バナナトーク」を開く。友達は5人。
ジーネンと、両親、イブとメサイアのものだ。
どれも、会話が特にない。
ジーネンは、帰りにネギを買ってくるようお願いする旨のもの。
両親は大した会話もない。
イブは、ひたすらに道の猫や可愛いわんこを送ってくる。
アダム君の返事は、「可愛いね」「わぁ!」
「この猫もパートナーがいるのかな」の三種類であった。
イブはそれらに一切返事をせず、ひたすらに写真を送りつけて、アダムはそれをbotのように返事をする。
メサイアに関しては、幼児のようなマシンガントークが繰り広げられていた。文章があまりにも長すぎて、
スマートフォンが重たくなり、画面のスクロールができない。
悲しくなってくるので、バナナトークは閉じた。
しかし、スマートフォンが再び点灯し、1-Cクラスのイブからバナナトークが来ている!
この、ぼっちとしては一番しんどい休憩時間、このような連絡をくれる彼女は本当にありがたい存在だ!
メサイアは、自分を仲良くしてくれてるのか、全くわからん!同じクラスなのに!
バナナトークを開く!イブのアイコンをタップして
新規メッセージにドキドキ!!
「友達から、スケベェというラバーキーホルダーを貰ったけどアダムいる?」
画面には、机にペタリと張り付く、頭がおっさんで
体がハムスター、背中に間に合わせの翼を持った、
おっさん。
おっさんと集約してしまうのは、顔のインパクトが強すぎからであろう。
鼻毛が、ちょっと生えてるんだよなぁ。
「鼻毛が生えてる理由として、常にマスクをしているから、その湿気で伸びが早いらしい。アダム、これいる?」
追加のメッセージがやってきた……
いらないだろ、こんな設定。
鼻毛をきのこのように扱うキャラ設定。
アダム君は、クラスのイケイケ女子と男子に囲まれる
メサイアをチラ見する。
こちらを一瞥もせず、談笑するメサイア。
それに比べて、自分はこうやって風に吹かれながら、
スケベェを押し付けられようとしている。
ため息を吐こうとした時、自分の側に人影があるのがわかった。机に反射される影。どうやら男の子だ。
なんだか影が凸凹な気がする。
「君、ジェナちゃん好きなの?」
なんだか声が、ちょっと濁っているような気がする。
目線をそちらへ向けると、座席に座る自分を見下ろす
少年がいた。顔にたんこぶがいくつもできている。
自分も、今朝のたんこぶを思い出し、頭をさする。
この少年、修正は五回、といったところか。
かなりの回数である。肌の装甲ダメージを見るに、
相手はかなりの怪力だ。
「あええあういあういえう(うん、そうなんだ!君も、ジェナちゃんは好きなの?)」
アダム君は陰キャなので、まず声を発していなかったから、喉がガラガラと渇き、詰まって言葉が出なかった。
焦りが相乗し、突如宇宙人の通信は火蓋を切って落とされた。
その少年は、緊張か痛みが原因なのかわからない、
震える手でこちらに封筒を差し出した。
ビリビリに引き裂かれたそれは、なんとか原型を止めている。しかし、中にあるのはなんと、
一人で猫のポーズをして、デコレーションまでされているユナちゃんの写真であった!!
「え!?なはたくけひつなえきては(これは、すごいな!こんなもの、一体どこで!?)」
「世間にも出回っていない、生写真だ。一枚2000円で売るよ。」
その少年は、自分の背後に周り、窓際へ辿り着くと、
腰を預けた。太陽に照らされ、顔がたんこぶだらけの
彼は、なんか神々しかった。
「ちょっと、高いな。しかも、なんでこんなものを手放そうとする。こんなレアなお写真メ○カリで転売できそうじゃないか。」
アダムは真剣な面構えと変わり、胸ポケットのココアシガレットを口に咥えた。
この季節のココアシガレットは良い。冬の白い空気は、ココアシガレットにリアリティをくれる。
「……僕、ガルーラ・マイコンだよ。同じクラスの。4月からずっとぼっちだから、あまり目立たないけど。」
ガルーラと言ったら少年は、アダムのココアシガレットを一つ摘んだ。まずたんこぶをなんとかした方がいい気がするが、そんなことは目の前のユナちゃん写真に掻き消された。
「……なぜ、ジェナちゃんだけでなく、ユナちゃんも好きだとわかった?」
言葉を慎重にに絞った。
「君は、スケベだろう。顔に張り付いているよ。
さっきから、クラスのメサイアちゃんをチラチラと見つめて、欲情してるんだろ!!」
「中々良い目をしているが、今はたんこぶで見えないな。メサイアちゃんはそういう目では見ていない!
第一、メサイアちゃんは潔白なんだ!わかるかい!」
アダムは叫び、そのたんこぶを見据えた。
たんこぶは鼻で笑い、自分の内心を透かしているようであった。
ニュー○イ○とでも、いうのか。
正直に言うと、この間メサイアちゃんとそういうことを人型の巨大なマシーンの中でする夢を見た。
その夢は、自分の口内に張り付くラーメンの海苔のように、脳裏に張り付いたものだ。
その日の晩といえばねぇ、お楽しみでしたよ。
具体的に言うとですね、メサイアをメサイアして、
メサイアメサイアメサイアメサイア以下略
「なぜ。こんなものを手放す。このユナちゃんの写真、ホカホカじゃないか。ほら、手を差し出すと、ユナちゃんの湿気が……」
クラスの女子の一人がこちらに振り返り、たんこぶと
アダムを一瞥して、ヒソヒソと何かを喋っている。
悪口というのは、モールス信号のように自分の脳に伝わる。
「し……し……ん……て……を……あ……て……て……き……も」
『写真に手を当てて、ホカホカだの、ユナちゃんだの。キモすぎない?そもそもあの人、ぼっちでアイドルグッズをジャラジャラ言わせてる人だよね?この年でアイドルって、彼女いなそー。そもそも、友達と喋ってるとこすら…………』
アダムはココアシガレットを噛み砕き、悔しみの涙を流した。太陽に照らし出される結晶は、頬をつたい、机に弾けた。
友達と喋ってないって、少なくともメサイアとは友達のつもりであったが、確かに教室では一度も話しかけてくれないのだ。これ、友達かよ本当に。なんで外では話しかけて、教室では完全放置なのだ。イブも、そうだ。
家に上がり込んで、今朝家政婦のジーネンと共に、
ユナちゃんスケベマウスパッドを見たというのに、
全く話しかけに来てくれないじゃないか。
なんだよ、スケベェって俺を皮肉ってるんじゃないか、あの子は。
イブにとって、アダムとは、ジェナとユナに欲情し、
体はハムスターで取ってつけたような羽を装備した、
○んぽこハ○タ○ーという認識なのだろう。
アダムは涙が止まらず、目の前の写真にそれが滴る。
そうだよ、俺は変態だよ!!
だから、この変態の意志をこの写真にぶつけさせて貰う!
口の下に皺を作り、ほうれい線は断崖を肌に作り上げた。見開かれた瞳の血液は充填され、溜め込まれた涙はとうとう決壊しようというところであった。鼻息に合わせて、細かい鼻毛が揺れ、鼻水が濁流として押し寄せる。歯を食いしばり、重ねわせた音はギリギリと。
思えば、自分不憫すぎないか、なんか、主役取られてる気がするんだけど。ジェナちゃんアクキーに、犬のしょんべんかかってんだけど、朝、警察に主義者と間違われたんだけど、クラスの女子にキモがられて、メサイアもイブもそう思っているのだろうな!!
そもそも、今日どんな顔して家帰れば良いんだよ!
ユナちゃんスケベマウスパッド、机に広がったままだったよ!しまえよ!
せ、せかいがものすごいにくい!!
「メサイアが、僕をぼっちから救ってくれたらという悔しみ。ジェナアクキーが、犬のしょんべんに寝取られた悔しみ。この、陰キャの悔しみを、誰がわかってくれるッ!!」
ガルーラのたんこぶは引っ込み始め、その顔が見えてきた。同級生とは思えない、まだ子供のあどけなさを感じる顔。アダムを哀れんだ瞳で見つめ、ココアシガレットを齧っていた。
「写真買うの?」
「裏の2枚目を見せてもらっても?」
捲られた2枚目は、くまさんポーズのユナであった。
制服に身を包んだその姿は、語彙力がないので、抜群のスタイルとさせてもらうが、
ユナはそうであるのだ。それが、両手を上げる
猫さんポーズとくまさんポーズ。
4000円か。
口元に手を添え、次を捲るように催促する。
どれも、加工があまりされていないのに、
最低限行われているそれは、フルコースの一品のようであった。
「猫さんとくまさん、いぬさん、ひよこさんを頂く。」
顔を上げ、ガルーラを見つめる。ニヤリと笑い、
その封筒から写真を取り出す。並べられたそれは、
トレーディングカードゲームの最高レアを並べたような壮観さ。
全てが、マ○ック○ギ○ザ○ン○のブ○ッ○ロー○ス
のようであった。
「毎度、8000円だよ。」
「まぁ待て、こちらも良いものがあるよ。」
アダムは財布を取り出し、ついでにジャラジャラと音を鳴らすそれを、机に並べた。
犬のしょんべんを食らったジェナちゃんキーホルダーであった。
「それは、宇宙ツアーアーカイブ、初回限定生産版の
特典か。」
ガルーラは目を見開き、それに触れた。
なんか少し湿ってる……
「そうだ(犬のしょんべんを喰らったが)状態は良いぞ。」
「なぜ、こうも黄ばんでいる。きな臭いな。(なんかしょんべん臭くないか?)」
「馬鹿言わんでくれ、消毒済みだよ。」
消毒済みと言っても、フェスターのファブリックであるのだが。
「これと、このブ○ッ○ロー○スが釣り合うか?」
「メル○リで二万はくだらん。」
犬のしょんべんがついたので、買取不可だろう。
「わかった。またブツが手に入ったら、交渉させて貰う。」
アダムは、ニヒルにニヤついた。
ちょっとお友達みたいなやり取りができたのと、
去っていくガルーラが、犬のしょんべんをポケットに仕舞い込んだからだ。プリクラを手に取り、ホカホカするそれを胸に当てる。ユナちゃんの温もりかぁ。
ガルーラが顔を擦り付けた際の鼻息と温もりなのだが、犬のしょんべんを押し付けたアダムに知る由はなかった。
ちょっと、この写真にチューしちゃおうかな。
アダムは、その写真を胸にしまい、もう一枚は手に隠し、席を立つ、その刹那、なんとあのメサイアがこちらへ振り向き、寄ってくるではないか。
今来ては欲しくない、今来ては、ユナちゃん写真の温もりが、チューする前に消えるだろ!くるんじゃあない!!
メサイアは小走りで駆け寄る。
顔が嬉しそうだが、クラスのカースト一位達と仲良くしてるんだから充足があるのは、間違いない。
「アダム君、良かったら私の友達達と……」
「おい、アダム!!このアクキー犬のしょんべんか、
おっさんの尿検査のような臭いがするぞ!
まさか、そういうことに使ったのか、これは!!」
途端、出口から駆け寄ったガルーラに体をぶつけられた。い、今は押さないでっっ!
地面に叩きつけられ、自分のファーストキスを奪う
写真は地面にばら撒かれた。
「な、なによこれ……」
「バカ!隠せよ、アダム!!」
メサイアは絶句し、ガルーラはアダムに覆い被さった。自分の目の前には、散漫したユナちゃんプリクラ。
そして、息を切らせてガルーラを追いかけたユナちゃん本人が、教室に入り、悲鳴が上がった。
一時間目 こくご。
ガルーラくんとアダムくんは、お顔に大量の凸凹たんこぶを作って、授業を受けました。プリクラ写真は全て回収されてしまい、ジェナちゃんキーホルダーは、天日干しされ、プリントが日焼けして、真っ白になってしまいました。
ーー完ーー
自分でも何を書いてるかわからないけど、
もうちょっとだけ続くんじゃ




