78.俺達の戦いは俺達のものだから、君達の戦いも俺達のものだろ
「ふんふーん!」
エルマーくんちゃんは、手元のバックを揺らして、スキップして歩いていた。
パンツは風呂場の湯気のように、スカートの影から、姿を消したり、現したりしていた。
「さっきの涙がうそみてぇだな」
思ってもいうな
「ねぇ、お昼一緒に食べよう!友達だからねー!」
エルマーくんちゃんは、遠方の太陽を背にして、身体に眩い輪郭を作って、アダムに微笑みかけていた。
アダカスは思った。
先程エルマーを抱き上げて、地味に体のいろんな部分を堪能した時、微かに胸が膨らんでいたような気がしたことを。
『母乳作れるのかな……』
胸があるのかな。ぐらいならまだかろうじてギリギリセーフであったが、母乳は赤である。
「もう赤ちゃん作れそうな体だね。」
「何言ってんの、男だって言ってんだろ」
もう赤である。
「乳首に絆創膏貼ってて、ちょっと乳房も張ってたりしてくんないかな………」
アダカスは覚醒していた。
もう相手が男だから、セクハラもノリでいけるだろと慢心していた。
「は、はってるわけないじゃーん」
貼っているし、張っているらしかった。
本当に貼っているのなら、
生徒会にも○はあるのパクリである。
「○が穴だから、伏せ字の意味がないぜ!」
説明するな
「ミルク飲ませてママ」
「きもすぎて怒るよ」
二人は暫く歩いた。
「ふんふーん!いつもはな、バジーリオくんにお弁当一緒に食べてもらってたんだ!」
エルマーくんちゃんは再びアダカスへ振り返った。
「バジーリオさん女子に人気でしょ?」
「うん!でも同じ生徒会としてな」
「バジーリオさんには自分が替え玉男の娘ってことは言ってるんですか?」
「え、言うわけないけど」
「え……?」
「そもそも、エルマーくんちゃんは17くらいでしょ?クストさん22でしょ?大学部に替え玉で入ってるってこと?」
「うん」
「え………?」
二人は横断歩道の前で止まった。
「本物のヤンキーの時代を生きた男様を見せてやる!赤信号は渡ってなんぼよぉ!!」
突如横に並んでいたアダカスとエルマーの隙間を突き破り、パンツ一丁、胸毛をジャングルのように生やしたおっさんが赤信号に突入した。
裸足の足裏に砂利が食い込み、おじさんははぅぅっ!と叫んでいる。左右の尻が上下互い違いに揺れて、尻からはみ出た尻毛の一本が黒曜石のように日差しに輝いて空中に舞った。
ボォン!!
おっさんは轢かれた
「え……?」
「やっべー、轢いちゃった……いきなりしゃしゃり出てくんじゃねぇぞジジイ!!」
車の運転手は、地面に倒れたおっさんに怒鳴り散らした。
アダカスの体が、突如雷を走らせたように大袈裟に揺れた。
その間ずっと欠伸をしていたエルマーは、横目でそれを不思議そうに見た。
「車凹んでるじゃねぇかよ!このくそ!」
その運転手は座席から降りて、力強く車の扉を閉めて、そのおっさんの生尻をハイヒールで踏んだ。
「はぅぅぅぅ!!」
「え………?」
聞き慣れた怒声。
朝の五時ごろに毎日のように聞いた声。
尻を踏んだ主はヴィーナさんだった。
「あ、アダく………ぱぁぱ………」
「え………?」
ヴィーナさんは短編に書いた通り赤ちゃん帰り癖があった。
手をグーにして口に当て、アダカスに気付き、頬を赤らめている。
このえ……?はアダカスの声でもあったし、後部座席から降りたメサちゃんの声でもあったし、エルマーの声でもあった。
「ぱぱって………パパ活してんの?」
「いいえ、していませんよ。」
アダカスは突如和かに笑い、聖職者の神官のような服装に変わった。手には数珠を握り、額に赤丸があって、世界中の宗教に喧嘩を売る欲張りスタイルに変化していた。
宗教はまずい、冗談ではない
「アダムくん、おはよう。」
メサちゃんはスクールバッグを背負って、ヴィーナと共に
車を道路に放置したまま、二人の元に近寄った。
とっくに青信号である。
左折しようとしている車が苛立ったようにクラクションを鳴らしている。
「ジッ」
「ムッ」
メサちゃんはヤンデレオーラをエルマーへ向けて放った。
エルマーも負けじと、ドズ○顔負けのやらせはせんぞぉ!オーラを放っていた。
「ぱぁぱだっこして!」
二人が睨み合っている隙に、ヴィーナさんちゃんがアダカスの腰を屈んで抱いていた。
「アーメン」
アダカスは俗世の解脱を試みた。
この自分が危機に陥りそうな面倒ごとをなんとか誤魔化して回避しようという、下心による解脱が目的だった。
「ぱぁぱ(泣)」
ヴィーナちゃんさんはスーツ姿のまま、地面に寝転んで手足をジタバタし始めた。
「ヴィーナ恥ずかしいからやめて!」
「パパ活してんのって」
「アーメン」
「パパッーーーーーーー!(爆泣き)」
☆☆☆
――エルマーとアダカスはメサちゃんの車に乗せてもらった。
「この女たらし……」
エルマーはむすっとした表情で鞄を胸に抱えていた。
シートベルトは肩から下げるのが、なんだかムズムズして気持ち悪いらしく、脇の下に通してお腹にベルトが走っている。
「ほんと……記憶を失った私が可哀想だわ!」
メサちゃんも助手席からキレた
「パパ、なんで抱っこしてくれないの……?」
ヴィーナは車のハンドルを握りながら、再び涙を流し始めた。
「みんな落ち着けぃッ!ちょっとまていッ!てやんでいッ!」
アダカスは突如シートベルトを収納し、バッグを自分の手で叩きながら、座席に土足で立ち上がった。
「うわっ!お前何してんの!?狭いからやめろよー!」
エルマーは窓に押し付けられた。
立ち上がったカスの足やら尻やらが圧迫してくるからである。
「ねぇ!常識なさすぎでしょ!?」
メサちゃんはブチ切れた
「パパ、車汚れるからやめて。掃除だってお金かかるんだよ。」
ヴィーナさんの声もワントーン低くなっていた。
「てんやんでいッ!ちくしょうめいッ!」
車が急停車し、ヴィーナの座る前方の座席に頭を打ちつけてアダカスはしんだ。
「早弁しちゃおー」
自由すぎるだろ
エルマーは自分の鶏そぼろ卵焼き弁当を開き、割り箸を割るのを失敗して泣き始めていた。
「ふふん。あなたがどこぞの馬の骨を咥えた野良犬なのかは知りませんが、セレブというものを庶民に見せてあげますよ」
メサちゃんは得意げに鼻で笑った。
記憶失ったので、ちょっと嫌な子になっていた。
リュックからケンタッ○ーのバスケットを取り出していた。大テロである。
「お嬢様、お昼お腹空いちゃいますよ」
「ならコンビニに寄りなさい、ヴィーナ。追加のお昼を買いに行きましょ」
「遅刻しちゃいますよ。」
「なら私がお昼抜きでひもじい思いしてもいいのっ!?」
チキンのバスケットをしまえば良いだけであった。
「パワハラわがままメサチャーン!」
ヴィーナは叫んで、運転片手にメサちゃんのほっぺをツンツンした。
彼女の柔らかいほっぺは、ヴィーナの装飾を施された爪に二、三回ツンツンされ、弾力をもって軽く凹んで跳ねていた。
トリッカ○みたいな感じで
「やめて!」
反応もトリッカ○である。
「一本なら良いでしょ。これアイスだし……」
メサちゃんが手に取っていたのは、外見は完全なチキンであったが、中身は骨もアイスとなっている、海外人気でショート動画でたまに見るアレだった。
「えー!それめちゃくちゃ高いやつじゃん!いいなー!一本頂戴よ!」
「え……え、あ……い、良いけど……」
後ろの座席からエルマーが瞳をピカピカさせて、その擬態型アイスを見つめていた。
メサちゃんは押しに弱いので、一本上げた。
「ありがとー!あ、あ……歯周病が……」
エルマーはそれに勢いよくかぶりついて、歯が染みていた。
「ふん、おばかね。あ……やっべ、お、おなかいたいかも」
メサちゃんはそれを再び嘲って、勢いよく擬態型にかぶりついた。そして直ぐにお腹が台風のイメージ画像を描くように、ギュルギュル唸り始めていた。
「わはは!人馬鹿にしたからだ!あ……歯が染みる……」
人馬鹿にしたからである。
「ふんっ!くっ!ヴィーナ!コンビニに寄りなさいっ!は、はやくっ!」
「渋滞に捕まりましたよ。なんだこいつは……何見てんじゃボケコラ!!」
ヴィーナは渋滞に捕まり、隣の車の運転手が、ニヤニヤした顔でこちらを見ているからといちゃもんをつけて、喧嘩をふっかけ始めていた。
アダカスは生から解脱していた




