77.俺達の戦い←ご自由にお取りください
色々種蒔いたのに何も回収せず、次の日――
「仕事も行きたくなかったけど、学校だって行きたくねぇよ!!」
「なら家いるの!?あんたずっと家にいて意味あるの?私だっていつ結婚するかわからないんだからね!そもそもあんたはね………ガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミ」
アダカスは、ジーネンのガミガミを避けて、家の扉をそっ閉じした。
いつもの仕事の癖のせいで、アダカスは朝五時に目が覚めてしまい、そのまま眠ることができなかったので、墨を肌に擦ったような隈がある。
アダカスが欠伸をして、家の前でチャックを降ろし、立ちションを始めていると………
遠方から、ゴミ袋を両手に抱えた小さな影があった。
『む、イブか。』
アダカスは、ポストの側で小便に弧を描かせながら、彼女の方を見た。
通りがかりの車の運転手が、ケツ丸出し!と叫んでいる。
カスはチャックをあげて、久々に会話でもしてやるかと思った。
彼はユナちゃんルートが粉砕され、ヴィーナルートは霧がかかったように、なぁなぁにされたことを知っていた。
『そしてメサちゃんに関しては、記憶を失ったからもう一度好きにさせろだと!?!?』
アダカスは昨日の晩一日悩んで、めちゃくちゃ億劫になっていた。
例えるなら、ペルソ○シリーズの二週目に行く感じである。ウィッ○ャー3の二週目に行く感じである。
二週目なりの楽しみはあるが、ストーリーの導入ムービーや会話を見るだけで、うわっここもう知ってるんだよと、もどかしさでち○ち○がムズムズするあの感じである。
『こうなれば、イブちゃんにいくしかないっしょ!好感度も結構維持されてるはずだし!』
ノーベルカス賞
「イブちゃん、久しぶり!おはよう!」
「あ………アダム。おはよ、じゃあね。ごみ、置いてくからね。」
湿ったポストの元にゴミ袋二つが置かれ、イブは軽く会釈して彼の傍を去って行った。
「しのっかな」
そうしろ
***
「あっ!カラスっ!カラスツンツンやめろっ!ゴミ袋ツンツンやめろ!このゴミ袋がイブちゃんのだからって、ツンツンやめろっ!イブちゃんのパンツが入ってるかもしれないが、ツンツンやめろっ!うわっ!乗っかってきた!乳首ツンツンやめろ!乳首ツンツンやめろ!乳首ツンツン………せんのかいっ!乳首ツンツン………せんのかいっ!乳首ツンツンするんかい!」
早く学校いけよ
「ねぇ、あの人」
「えぇ…………ヒソヒソヒソヒソ」
アダカスは、サザ○さんお馴染みのダッシュのseを鳴らして、その場から去って行った。
アダカスは、第三話に現れた歩道を走っていた。
「懐かしいな、ぼかぁ、ここでクストさんにぶつかり、ジェナちゃんグッズをぶちまけ、そしてグッズに犬の小便を全てにかけられたんだよな。懐かしいな、懐かしいのに、何も進展ない気がするんだけど………」
「ねぇ、あの人……」
「えぇ、独り言よ……ヒソヒソヒソヒソ」
「生き辛ぇ世の中だってばよ!!!」
アダカスは一心不乱に走った。
しかし、ガードレールに膝をぶつけて、患部を庇って地面にぶっ倒れた。
サラーシャちゃんグッズが、バッグから飛び出し、地面のコンクリートにぶちまけられた。
その時、再び遠方から忍び寄る影。
「げ、気をつけろよ………え、鞍替えしてやんの……」
紛れもないあの人であったから、アダカスは皺を幾層にも皺を重ねた修羅の表情で、その人物を仰ぎ見た。
桃色の頭髪、ゴミを見るような目。紛れもないクストさんが、アダカスを見下ろしていた。
太腿の半分あたりまで伸びる、白い靴下。
そして、白く柔らかい肌の絶対領域。
靴下に絞られ、太ももは少し溢れようとしている。
そこが重要である。
そして、冬の乾いた風に揺られる、若干短めのスカート。
その傘の内側に秘められる、伝説の秘宝ワンピー○。
「え!!いちごじゃない………!!」
「何見てんだこいつ!!!」
アダカスの顔は踏みつけられた団子のように柔軟に潰れた。
「ちょっと手を貸してくださいね!!!」
アダカスは起きあがろうとして手を伸ばし、クストさんが差し出す手を無視した。クストさんがムッとして再び出した手を、勢いよく跳ね除けて、太ももをがっしり掴んだ。
そしてモミモミしていた。
そろそろ、監獄編がやってきそうである。
「ふむ」
「ころすぞ」
アダカスは再び踏みつけられた。
彼が立ち上がると、クストさんは上目遣いでアダカスを見つめ、ちょっと頬を赤くしてそっぽを向いた。
腕組みをして、再びアダカスを見上げて、視線がバッチリ混じり合うと、また照れたように下を向いていた。
「脈あんの!?!?」
声に出てるのである。
「あるわけないだろ、カス」
しかしクストさんはその場をさろうとせず、地面に散らばったサラーシャのグッズの元へ向かった。
それを拾おうとして、スカートの後ろを押さえ、前屈みになっていた。
しきりにアダカスにパンツを覗かれないか確認しながら。
「えっ○」
アダカスである。
「もうアイドルなんか卒業しろよー」
「ほっといてくれ!それより、今日なんか太ももをが少し太かったような。」
アダカスは、自分の右手を見つめて空中でモミモミしていた。
クストサンはそれを受けて、肩を大きく揺らし、サラーシャのグッズを両腕に抱えていた。
「気のせいだろ!女の子に太ったとか言うのかお前!!」
クストサンの両手のグッズを受け取り、アダカスはバッグにしまったのち、もう一度真っ直ぐとクストサンを見つめた。
「なんだよ」
クストサンは、再び頬を赤らめてモジモジしていた。
「スタームさんとは上手くいってるんですか?いってるんでしょうね。どこまでやったんですか?ぼかぁ、何も進展はありませんよ。誰ともね。」
「まぁ、ボチボチだよ………」
クストサンは、口を尖らせて、アダカスから逃げようとはしない。
「クストサンルート開拓、行ってみるか………」
口に出てるのである。
アダカスは、真正面のモジモジクストサンの両肩を掴んでみた。
心なしか、華奢な両肩が少し締まっているようにも感じられる。
「クストサン、何か運動してますか?」
「書道しかしてないよ」
「ヘヤァァァッッッッ!」
それやめろ
アダカスのふざけた書道ジェスチャーを欠伸をして見つめるクストサン。
「一緒に学校行きますか?」
「そうだなー。会っちゃったしなー」
「おかしい、断らない………」
口に出てるのである。
☆☆☆
二人は暫く歩道を歩いた。
車のテカテカした車体に白い日差しが反射して眩しい。
青空は、冬の乾いた空気を貼り付けたような、雲一つない快晴である。
「天気いいですね」
「ん」
アダカスは歩道の内側を歩き、クストサンが車道を歩いていた。
「クストサンいつも歩きなんですか?」
「自転車乗れないしな。免許も持ってないし。」
二人は細切れのその場凌ぎの会話をいくつか投げ合い、投げられた相手が一言でぶった斬って、黙り込むことを繰り返していた。
「学校いやですね」
「ん」
「生徒会長って大変ですか?」
「まねー」
「反省文手伝ってくれてありがとうございました。あれ以来全く手をつけられてないです」
「………ん?んー。」
二人は結構歩いた。
冬の寒気を帯びた風に当てられ、ベージュのコートを身に纏ったクストサンは、寒いなーと言ってアダムに少し身を寄せていた。
彼女の端正な顔立ちと、赤く染まった鼻が、アダカスの制服の肩の辺りに少し触れていた。
「この感じよ……このドライな感じだよ!!今まで碌でもない、ヤンデレばっかだったから忘れてたけど、ずっと一緒にいたいと思えるのは、やっぱりこういうちょっとドライな人なんだよ!!メサちゃんとユナちゃんは、ちょっと高温多湿すぎる!!」
「何いってんだばか」
カスは叫んだ。
クストサンは照れた。
アダカスは、やはりおかしいと思った。
「振られたんですか?スタームさんに」
再びクストサンの肩が大きく揺れた。
彼女の明るい翠玉色の瞳は、泳ぎまくっていた。
寒いといっていたくせに、めちゃくちゃ汗をかき始めている。
「いやそもそも、告白してないって言うか……」
「なら、なんで僕にこんなベタべタするんですか?前までは連絡先すら交換してくれなかったのに!!」
「バナナトークやってないのは、本当っていうか………」
クストサン……?の瞳はグルグルし始めていた。
「今なら交換してくれるんですか?やってないなら、今始めましょうよ!!スタームさんとも連絡できた方がいいでしょう!ほら!!!」
惨めな男である
「いやー、あんま興味ないかなー、あっ、スマホ取るな!」
アダカスは、クストサンからスマホを取り上げて、クストサンが届かないのを良いことに、片手を天に掲げてフリフリしていた。
「返せ返せ!!」
「可愛いぜ、やはり。ぐへへ……はうっ!」
脇が空いていたので、ぶん殴られたアダカスであった。
アダカスは横腹を抑えて、再び地面に横たわった。
心なしか、皆無なはずの力が、少し強かった。
「ゴホッ……ち、ちぬ………」
「手は貸さないぞ、反省しろばか」
「なら、太もももを掴ませて頂く!!」
アダカスは再び、祈りを捧げる人のように天に両手を掲げて、ワキワキしていた。
「ねぇ、あの人……」
「女の子に向かって、太ももって……」
「ちょっと、ねぇ?」
「生き辛い世の中だってばよ!!」
太ももを掴むことが肯定される世の中があってたまるか。
クストサン……?ナノ……?は、腕組みをしてアダカスを見下ろしている。
突如北風が吹き付け、暗黒に覆われていた筈だったパンツの全貌が、突如開示された。
男用のボクサーパンツだった。
「え………?」
アダカスの声も、冬の乾燥にやられて枯れて、掠れ切っていた。アダカスは、カスれきっていた。
アダカスは、カスだった。
「あっ!あっ!!み、見るな!!」
「パンツ、カレシノ?」
「違う!間違えたんだ!」
「スタームサンノ、パンツハイテルノ?」
「違うって!!」
アダカスはガードレールに身を乗り出し始め、クストサンに腰をガッチリホールドされて、止められた。
「死なせてくれッッ!死なせてくれって!!寝取られビームレーザーに耐えられんから、死なせてくれって!!」
「落ち着け落ち着け!!」
「落ち着いていられるかッ!ファンネ○がもたないからッ!」
「ちょっと待て、いのちの電話に電話するから!ちょっと待てッ!」
アダカスの動きはぴたりと止まり、クストサンは、自分の携帯からいのちの電話に電話をかけた。
――「はい、いのちの電話です。」――
「ほら、出たぞ!ほらっ!(コソコソ)」
アダカスはクストサンの指に執拗に無必要に触れて、撫でて、携帯を受け取った。
「すいません、未来の嫁さんが寝取られてしまって、死にてぇです。」
まず被害妄想が激しいから、精神科に電話するべきだろう。
――「あーはいはい。はいはい……今朝ご飯の納豆ご飯食べてて、口がネバネバしてるから、失礼しますね!あ……失恋しますね!!!」――
納豆のネバネバを引きずったおばさんは、快活に大声で笑って電話を切った。
「馬鹿馬鹿しくて、悩み吹っ飛んじゃった……」
いのちの電話の効能である。
「落ち着いたか?」
クストサンの声は、猫を撫でるような甘ったるい声である。
「陰茎がイキリ立つ!!」
声に出てるのである。
「いや、あの。もう言うね。私エルマーだよ……」
アダカスは絶句していた。
クストサ……エルマーくんは、先程と同様モジモジとした姿で、アダカスを見上げていた。
「お、おとこ……?」
「うん」
「なんで……?」
「うち両親いないだろ?お姉ちゃんと入れ替わって、たまに私が登校して、共働きしてんの。」
「じゃあ、反省文の時は?」
「あの時はお姉ちゃん」
「お姉ちゃんなのに、バナナトーク拒絶されたの?」
「そうだよ。お前、お姉ちゃんにめちゃくちゃ嫌われてるんだよ。」
「え………?」
「嫌われてんの!!ブラックリストに入ってんの!デ○ノートに名前刻まれてんの!!」
「にょっ!にょっ!にょっ!にょっ!」
アダカスはコサックダンスを始めた。
両手を机に乗せるように組み、腰を低くして、足をそれぞれ交互に出し入れしていた。
「はっ!はっ!にょっ!はっ!フンババ!フンババ!」
そのまま、腕を立ち上げて、コサックダンスしながらハカも始めたバカ。
「フンババ!ヘヤァァァッッッッ!フンババッ!にょっ!ヘヤァァァッッッッッ!」
そのまま、言わずもがな、書道も始めた。
こいつは各国の伝統文化に全方位で喧嘩を売っておいて、タダで済むと思ってるのだろうか。
「囲碁将棋サッカーかよ……」
エルマーはスカートを押さえて突っ込んだ。
そして、突如ハカコサックダンス書道家のカスは、瞳をギラつかせ、背後からエルマーに抱きついた。
「なにして………!」
「君さ、男なんだってな?君のせいでさ、俺おかしくなっちゃったよ。ハカコサックダンス書道始めちゃったよ。君が男の子なのに、女の子の格好するせいでさ。」
そのまま、エルマーの髪に自分の鼻を押し当てて、精一杯クンカクンカしている。
エルマーの手首を両手で掴み、なぜが背中から生えた天津○オートマニュピレーターを使って、エルマーの全身を身動きできぬように捕らえていた。
「こんなこと許されるか!!」
「男の子同士だったらなんだって良い!!それより、なんで君はこんな犯罪級のことを、平然とやってのけた!なぜ、エルマー・レギンとして、男の子でいようとしなかった!!」
「私だって、働いてばっかで、生活費の捻出ばっかで苦しいからだよ!学校にちょっとでも行きたかったんだよ!」
エルマーは、オートマニュピレータにほっぺをムニムニされながら、瞳から一筋の涙を流した。
「ち○ち○はついてるのかぁ!!!!」
「あたりまえだよ!ついてるよ!」
「うわぁぁぁぁぁだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!つ、ついてちゃだめだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
こいつはやはりカスである。男の娘にはち○ち○がついてるからこそお得なのに。こいつやっぱカスである。
「……ひどいよ、そんなにダメなことなの………?」
エルマーは、涙をポロポロと流し、気まづくなったアダムに解放され、両手で顔を覆っていた。
あーあ。アダカスは死んで償えよ!!
「あ、あの、あ……ごめんなさい。そんなつもりはないんです。そうだよね、辛いよね。じゃあ、謝るね。
あ、あの………僕も性癖破壊されたので、誤ってください………」
かす
「私、こんな見た目で、でもち○ち○だけはついてるから、女の子にもなれなくて………どうすれば……」
「俺と結婚するだ!!」
アダカスは叫んだ。
何言ってるのだろうこいつ。
メサちゃんはどうするのだろうこいつ。
ヴィーナの件も片付いていないのにこいつ。
結婚するとか言っちゃって
「結婚は絶対いや」
振られたので良かった。
「死なせてくれぇ!!」
ハカコサックダンス書道が再開された。
全然死ぬ様子は見られなかった。
「でも、友達にはなって……」
「ヘヤァァァッッッッ!!」
ウルトラマ○かよ
アダムカスは、自分の親指を噛み切り、その血液を持って、黒いコンクリートに、イエスと大きく書いた。
そして貧血で普通に倒れた。
「私、男なのにさ……」
地面にうつ伏せに、大文字となって倒れるアダカスの背中を見るエルマーくんちゃんの胸は、異様に強く高鳴っていた。




