本編没回2
同じく2月のもの
ノア内部
食堂に行くと、
イブがいた。
何かを口いっぱいに頬張っている。
「い、イブ。」
声をかける。
イブはこちらに気づいて、勢いよく飲み込む。
「アダム。おはよう。」
イブが言った。
「お前…あんな映像見た次の日でよくそんな…」
「食べないと。死ぬし。」
イブが言った。
「それは、そうなんだけどさ…」
こう言うしかなかった。
「アダムの分、取ってある。」
イブがお盆を出した。
ハンバーガーが積まれていた。
「……。ありがとう…。」
周囲の視線がよそよそしい。
ーーさっさと食べて、戻るか。ーー
ハンバーガーを齧ろうとした時ー
「二人とも、おはよう。」
声をかけられた。
「スターム中尉。」
ヴァレンが言う。
「……。朝からよく食うな。」
スタームが言った。
「いや…こいつが勝手に。」
イブに視線を向ける。
気にせず口を拭っていた。
「まぁ、いいことだ。作戦もあるしな!」
スタームがヴァレンの背中を叩いて言う。
「俺も一緒にいいか。」
スタームが聞く。
「いいですけど、俺たちの近くによらないほうが……」
ヴァレンが気まずそうに言う。
「何言ってんの。可愛い部下二人だよ。」
スタームが言った。
その言葉を聞いて。アダムとイブは微かに微笑んだ。
マンチェスターに、タイタニスが合流した。
「メノクス大佐。お久しぶりです。サラス・シュタインでございます。」
タイタニスから降りたサラスとバジーリオが立つ。
「中将、ご苦労様でございます。」
メノクスが握手を促す。
「……!」
バジーリオが何かに気づく。
シャキリ達が立っていた。
「大尉。アシュク、トーガン。…それと。」
一際小さい兵士に目が向けられる。
「ガルーラ・マイコン少尉です。少佐。会えて光栄です。」
ガルーラが言う。
「少尉。アダム・バジーリオだ。よろしく。」
握手を交わす。
「うわー!少佐と握手しちゃいましたよ。」
ガルーラがはしゃぐ。
「ははは。あんまはしゃぐなよ。」
アシュクが言う。
トーガンも微笑みながらそれを見る。
「大尉。お疲れ様でした。マンチェスターから人質にされていた人民を解放したんですね。」
バジーリオが言った。
その場の全員の顔が強張る。
「…少佐。それは誰の情報だ。」
シャキリが口を開く。
「……?中将からですが。」
バジーリオが不思議そうにする。
「………。あぁ、帝国の誇りを守ったまでだな。」
シャキリが言う。
「流石です。大尉。」
バジーリオが言った。
「…。少佐。話がある。」
シャキリが言う。
「大尉…?」
バジーリオと共に歩き出した。
「大尉。話とは…」
「うちのガルーラだが…お前の面倒になるかもしれん。」
シャキリが言う。
「………なぜです。」
バジーリオが聞く。
「……あいつは、優しすぎる。」
「軍人に向いていないと。」
「そうじゃない、只、私の趣味じゃない。」
「趣味?大尉、ご冗談を……。」
シャキリが真っ直ぐバジーリオを見据える。
「少佐。あいつを頼む。」
シャキリが頭を下げた。
「大尉………。」
「大尉……まさか…マンチェスターは……」
バジーリオが言いかける。
「…。それだけだ。少佐。作戦ではよろしく頼むぞ。」
シャキリは去っていった。
「何の話をしてたんですか?大尉。」
ガルーラが声をかける。
「……。作戦の確認をしただけだ。」
「持ち場に行け。今回はお前も出るぞ。」
シャキリがガルーラに言った。
ーー総帥艦艦隊ーー
「総帥。あと少しで、降下であります。」
「うむ。」
窓に映る。海の星。
「……。美しいな。あの星は。」
窓を見ながら言う。
「しかし、寄生虫に付かれては、観賞用にもできん。」
「総帥…。」
「後ろの艦隊は?」
「問題なく、ついてきております。また、マンチェスター降下中も、タイタニスとインペネスが援護いたします。」
「…。抜かりなく行え。」
「はっ。」
艦隊が地球の熱にあたり始めた。
インペネス、タイタニス、それぞれに通信が入る。
ーー各員に継ぐ、総帥を乗せた艦が降下を開始した。…繰り返すーー
作戦開始だ。
それぞれの機体に搭乗する。
「我々、シャキリ隊は地上から地球の一万フィートまでを守る。」
シャキリが言う。
「「了解」」
「バジーリオ隊は、大気圏突破直後から、護衛いたします。」
バジーリオが言う。
「よし…では…各自作戦配置についてもらう。」
サラス中将が言う。
全機体に通信が入る。総帥だ。
ーー地球での出迎え…感謝する。諸君らの働きによって…私はこうして…安全にこの星へ降りたてるのだ。ーー
通信は続く。
ーーシャキリ大尉。新型はどうかね。ーー
総帥がシャキリのモニターに目を向ける。
「はっ。良好でございます。素晴らしい機会を頂き、光栄であります。」
ーーうむ…バジーリオ少佐…護衛を頼む。ーー
次はバジーリオのモニターだ。
「はっ。総帥艦には傷一つつけはしません。」
ーー……うむ。…頼むぞ。ーー
通信が途切れる。
マンチェスターに近づく、一つの戦艦。
ノアだ。
ーー各自、機体に搭乗したな…ーー
ーー今回の作戦は、敵のトップを暗殺することではない。…地球の抵抗の意思を見せることだ…ーー
ヴァレン、イブ、スタームが機体に乗り込む。
この艦隊の主力だ。
そして、リヴァプールで合流した、ダッケル・ンジャも自身のタイタスに搭乗した。
ーー今回の作戦は四機で行うが……改めて言う…殺すな。今回はあくまで…地球の反撃の意思を見せる…牽制だ。そうすれば、地球の人類は団結する。ーー
四機がカタパルトに乗り込む。
ーー作戦……開始。ーー
高速の影が、4つ射出された。
ーー総帥艦ーー
「反重力エンジン。起動しました。」
途端、鳴り響く警報。
「……。なにか。」
総帥が口を開く。
「敵機です!」
「殺しに来たか…私を。しかし、それで不利になるのは貴様らだ。」
呟く。
「警報音…!下か!」
バジーリオが呟く。
シャキリ機に通信が入る。
「大尉!…敵が来ている…!」
バジーリオの声。
「ふん。…わかっている。アシュク!ガルーラ!」
アコニットが速度を上げた。
「……。二人とも、今回は我々に武がある。鬱憤を晴らせよ。」
シャキリが呟く。
「……。やってやる。」
ガルーラが言った。
先頭のスターム機が止まった。
「二人とも!敵機だ。ダッケル大尉も止まって…!」
四機が止まる。
ーー警告音ーー
「……真下か!」
ヴァレンが言った。
瞬間。目の前を影が過ぎる。
「……!…早い。」
黒と紫の装甲。槍を持つ機体が上にいた。
「あれは……マンチェスターの。」
ダッケルが呟く。
「……。敵の新型。」
イブが言った。
「……ふん。マンチェスターのやつがいるな。」
シャキリが言う。
「しかし、あのパワー、この高度では、弱点だ。」
口角が上がる。
「憂さ晴らしに最適だな。サンドバッグはー」
シャキリ機が速度を上げ、突進してきた。
狙いは…
「私か!…槍持ち!」
ダッケル機が剣を抜く。
金属がぶつかる音。
「ここで会えるとはな。槍持ち。」
ダッケルが言う。
「ふん。前のように行くとは…思わないことだ!」
シャキリが叫ぶ。
アコニットが片手から剣を引き抜く。
「……!?」
ダッケル機がのけ反る。
盾の隙間ー
――突き刺す。
ーー!?
横から刃物が飛んでくる。
「……!」
鎌だ。
ダッケル機から距離を取る。
「助かったけど……次はよしてくれよ。」
ダッケルが言う。
「……。…?」
イブは不思議そうだった。
スターム機がマシンガンを撃つ。
弾がアコニットを追う。
「……チッ。」
シャキリは舌打ちをする。
「…!」
ー下から剣がくる
鉄が重なる音。
「お前は……。撤退戦のやつか!」
シャキリが言う。
「マンチェスターをやったんだな!お前が!」
ヴァレンが言う。
「堅物、鎌持ち、それとこいつ。…ははは!揃い踏みだな!」
シャキリが叫ぶ。
「全員……私が!……」
そう言って槍を振り上げる。
刹那、頭に痛みがくる。
ーーお姉ちゃん!…お母さん痛いよ!…お前達が来なければ!ーー
「…………なんだこれは。」
マシンガンに撃ち抜かれる。人の大群。
逃げる人間を一方的に撃ち続ける。黒い機体。
「……これは…私か。」
警告音が意識を引き戻す。
鎌が迫る。
「……あぁ!」
剣で弾き飛ばす。
「お前だな!鎌持ち!!」
「……。悲しい人。」
「赦しはしない!!」
シャキリが叫んだ。
イブ機とシャキリ機が交戦する。
「なにをしたか知らないが…!」
「私を……見るな!」
シャキリが叫ぶ。
腕からガトリングを組み立てる。
斉射ー
イブ機が体を捻る。
イブには当たらない。
「それで…殺したの?」
「黙れ!」
「あの槍持ち。…様子がおかしいぞ。」
ダッケルが言う。
「……!」
弾丸が飛んでくる。
「大尉……一人で何してるんですか!」
アシュクが言う。
「聞こえてませんよ!……!」
スターム機の弾丸を散会して避ける。
「ガルーラ、今回は庇えない。やれるな!」
アシュクが言う。
「やらないと、死ぬでしょう。」
ガルーラの瞳に覚悟が宿った。
「イブ!孤立するな!ダッケル大尉、ヴァレン!どっちかカバーを頼む。もう一人はあっちに!」
スタームが言う。
「ガルーラ、大尉は一旦意識するな。あの人なら平気だ。
こっちに集中するぞ!」
アシュクが言った。
敵機が向かってくる。
近接武器だ。
「……こいつ!」
ガルーラのスレイブ1が剣を引き抜く。
重なる金属音。
「なんで……お前達はそうやって、人を殺せるんだ!」
ヴァレンが言った。
「……こいつ。何か言ってるぞ。」
ガルーラが呟く。
距離を取る。
ーーこの距離なら…ー
懐から、マシンガンを取り出す。
「ハァ…ハッ…」
汗が滴る。
ーー怖い。でも……ーー
ガルーラが照準を定める。
弾丸が飛んでくる。
「こいつ……怖がってないか。」
ヴァレンが言う。
「戦いを…避けたいのか……?」
「……。接触する!」
ヴァレン機が突進をかける。
「…!きた!」
ガルーラ機もそれに応える。
再び金属がぶつかる音。
「……。そこのお前……怖いのか。」
ヴァレンが言う。
外部通信だ。
「……!話しかけて……」
「……お前達も…同じなのか。」
「……。余裕なのか…。僕なんか。」
「…。そんなんじゃない。」
ヴァレン機が足を振り上げる。
警告音。
ーー右だ!ーー
操縦桿を下に引っ張る。
機体を僅かに上昇させる。
「……!避けたのか!」
ヴァレンが言う。
「舐めるな!」
ガルーラが両手で剣を振り上げる。
ーー「姉さん!シスメ姉さん!今日もお稽古行くの?」
「そうですわ。ガルーラ。あなたも来る?」ーー
ーー「ガルーラ、そうじゃないの。剣はね、横ではなく……」ーー
「縦が基本だ!」
体が、覚えている。
風が縦に走る。
ヴァレン機の片腕が引き裂かれた。
「……!」
鈍痛が走る。
「アダム…!」
イブが言う。
「よそ見か!槍持ち!」
シャキリ機が槍で突進をかける。
イブの前にミサイルが走る。
「……!?」
シャキリ機が止まる。
「…巡洋艦か?」
視線の先にはダッケル機。
「…ははは!……驚かせるな!堅物…!」
アコニットがダッケル機に突進をかける。
「剣以外も…あるということだ。槍持ち。」
ダッケルが言う。
二機が衝突する。
「…どう足掻いても、エンジンさえ打ち落とせば!」
「それを狙う敵は…今まで全員落としてきた。」
「……。一緒にするな!出来損ない共と!」
シャキリが回り込む。
ーー!?ーー
コックピットに衝撃が走る。
弾丸だ。
「ありがとう。スターム。」
ダッケルが言う。
シャキリに青筋が立つ。
「……。ははは!」
「……。そうじゃ…そうじゃないんだろ!あなたは!
匂いが……感じが違うんだ!」
ヴァレンが言う。
「……。何言ってんだ…この機体。」
ガルーラがヴァレン機に迫る。
「あの…早い奴みたいに戦いを好んでない…。この人は…戦いの外でも生きれるんだ!」
ヴァレンが叫ぶ。
「……。顔も知らないで!…知ったこと言うなよ!」
ガルーラが叫んだ。
「……。その優しさを…戦争以外に使ってくれ!」
ヴァレンが訴える。
「…………。なら…お前が戦争のない場所に行け!」
ガルーラが叫んだ。
「ガルーラ!一人になるな!」
アシュクが叫ぶ。
前から弾丸。
「……。クッソ!」
避けながら、応戦する。
「……。うん、君も同じだ。僕と。サポートするタイプなんだろ。…だから!」
スタームが言う。
「邪魔はさせない!」
スターム機が突進をかける。
「……。近接を…!」
アシュクが剣を取り出す。
イブがヴァレン機に向かう。
後ろから高速のものがくる。
「……。しつこい。」
拳銃型の武器で牽制をする。
「…。意味ない。」
鎌を持ち直す。
「ハァッ…はは。逃すか!鎌持ち!お前は…!」
「私のことを……勝手に知ったな!」
アコニットが上昇する。
そのまま、操縦桿を押し倒す。
急降下だ。
「……。隠し事が、多い人。」
イブが呟いた。
「なんで…中身を知らないで…上っ面だけでさ!」
ガルーラが言う。
「互いに…深く知れれば!」
ヴァレンが応える。
「……。無理だよ!……敵同士だろ!」
「…君のそれに!人が乗ってるかも分からないんだ!」
ガルーラが言う。頬に何かがつたる。
「……。なら!出れば話してくれるか!」
ヴァレンが言う。
「………。」
ガルーラは言葉が出ない。バイザーを上げて目元を拭う。
「……!」
ヴァレン機がガルーラ機を押し出す。
コックピットに衝撃が走る。
目の前をイブのタイタスとアコニットが通り過ぎた。
「……。本当に…。」
ガルーラが呟く。
「……。やっぱり月側にも…あなたみたいな人はいるんだよ。」
ヴァレンが言った。
途端。ヴァレン機に衝撃が走る。
警告音。
「………!エンジンが…!」
アコニットのスナイパーライフルが煙を上げていた。
「…ガルーラ。敵と…おしゃべりをしにきたのか。」
シャキリから通信が入る。
「大尉!…あの人は!」
ガルーラが言う。
「……。人だと思うな!……壊れる。」
シャキリが叫んだ。
「アダム!」
イブがヴァレン機を追いかける。
「……!落とされたのか!」
スタームが言う。
「……。なんで、もう少しで……」
ガルーラが言う。
シャキリのアコニットが近づく。
「……。お前達二人が和解して…それで…戦争が終わるか。」
シャキリが吐き捨てる。
「……。大尉…だからって!」
ガルーラが言う。
「個人の力で…世の中を動かせると思うのは…勘違いだ。」
シャキリが言った。
「あの堅物。まだ残っているな。それと、あの蝿も。」
アコニットが上昇する。
「……。」
ガルーラは俯いた。
「まだやるのか……槍持ち。」
ダッケルが言う。
「……。見逃してくれたのは感謝するよ。あの時…。」
アコニットに通信が入った。
「ふん。お前が勝手に行ったんだろ。…ここで死ねばいい!」
シャキリが叫んだ。
「……!」
反応がある。
「敵機か…?…いや。」
イブだ。
イブがヴァレン機に取り付く。
「アダム。平気?」
「あぁ。助かったよ。…助かったけど…」
ヴァレンが俯く。
「……。機体の起爆の可能性がある。こっちに移って。」
イブが言う。
「移るって…言ってもさ…」
ヴァレンの背中には座席シートと繋がる管。
「それ。左モニターの下のボタンを押して。」
イブの言う通りにすると、背中が解放された。
イブの機体が体を見せるように平行になる。
「……。ハッチを開ける。」
イブが言う。
「……。飛び移れってのか!」
ヴァレンが言う。
「……。多分受け止められる。」
「あの早い奴が来たら死ぬ。」
ヴァレンが言う。
「その時は…。その時。」
「……くそッ!」
操縦桿を蹴り上げて、
ヴァレンがコックピットから飛んだ。
上に打ち上げられる。
敵の気配はない。
すぐ真上で金属音がしている。
背筋が凍る感覚。
イブのタイタスが受け入れる形をとる。
「……。落下位置演算。…。今の所は問題なし。」
「あれは……。生身の人間!」
アシュクが言う。
「たい……。」
何かを言おうとして口を閉じる。
「ここでやったら…戦争じゃないな。」
アシュクが呟いた。
「何やってんだ!あの二人は…落とされるぞ!」
スタームが言う。
目の前にいた敵は動いていなかった。
「……撃たない?」
スタームが呟いた。
「……うっ…」
アシュクが呻く。
「……くそッ!…もっと引っ張ってくれよ!」
地球の作用に怒りを感じる。
「……そのまま。」
イブのタイタスが両手を開く。
コックピットが真上を向いた。
「……入ってくる。」
ガン!
アダムがタイタスの指を掴む。
「……。受け入れる。アダム…。」
「……母さん…。」
子供を抱き抱えるように、タイタスは手を胸に閉じた。
「……。無茶だけど…助かったよ。…ありがとう。」
ヴァレンが言う。
「……。早く臨時シートを開いて。」
イブが言った。
………。ママッーー!
……。やーっ!
……。なんだこの、てんてんてんは!これいるのか!?
………。おまけみたいに!!
………。鼻息の間なんじゃないの!?




