第七十二話 Your money or your life
地震気をつけてください!
*ククル君→ファル君
ククルを三歳ぐらいのクソガキにしようとしていた計画が、地震にビビり散らしながら文章書いてる深夜のカスの誤字のせいで、バレちまったぜ!
「くちゅん!」
シャキリくんは誰かに噂をされた気がして、部屋でくしゃみをぶちかました。
本日は平日である。しかし、シャキリ君は大学生の特権を利用して全休を作り、家で一人寝転んでいた。
大学四年生の冬。
モラトリアムもたけなわである。
来年からは年金の援助も効かず、音楽サブスクの学割も使えず、大学時代と同じ暮らし方をすれば世間から白い目で見られる年齢である。
ちなみに、就職先は一切決まっていないシャキリ君であった。
「いや、やばいよ。やばいとは思うけど。まぁ、やばいで済むだろ。」
どういうことなんだよ。
シャキリくんはベッドから起き上がり、机のpf1555を起動し、コントローラを握りしめた。
そう、かのスケベゲーム。
「爆乱カグヤ」の発売日であり、とっくにゲームのディスクでの販売などは撤廃されてしまったから、ダウンロード版で遊ぶほかないのだ。
朝の九時三十分。
世間は働き始めて、さっそくストレスの朝日に晒れ始める時間。
この男はスケベゲームのストアを、ドキをムネムネさせながら閲覧した。
そう、家族全員が出掛けて、エ○動画を家族共用のパソコンやタブレットで漁り始める、地雷小学生男子のように。
毎回思うけどそのきったない例えはいるのだろうか。
『ゲームというのはな、ディスクでゲームショップで購入するから良いんだろ!?ダウンロードなんて、趣もクソもねぇんだ!!』
シャキリくんは内心で毒吐きながらも、家には自分一人なので、ずっと黙ってモニターと睨めっこをしていた。
貧乏揺すりが、モニターとpf1555を支える年季の入ったデスクを揺らす。使い潰され、シートが双方のケツの形に捲れ上がったゲーミングチェア。
けつと腰の形の形状記憶を行った、くっさそうなゲーミングチェア。
シャキリくんは、その椅子の錆びた、なんだっけあの椅子支える部分。調べるのがめんどくさいので、そこをキィキィ鳴らして、体を左右に揺すっていた。
「あぁ………っ!?」
突如シャキリくんは、モニターを両手で掴み、椅子から勢いよく立ち上がって叫び散らした。
なんと、爆乱カグヤはcer○z。r18指定であった。
「ふざけっ!ふざけっ!ふざけんな!!」
おせち、おせち、おせちん○みたいな語感やめろ。
「cer○zってことはあれだろ!?買えないんだろ!?ギフトカードじゃ!?ふざけんなよ、チャージしちゃったよ1万円!!くっそ!くっそ!クソゲーム会社が!!」
シャキリくんは、部屋で地団駄を踏み始め、痩せ細った脛が地面との衝撃に負けて、ひび割れるように痛み、ついでに足裏を攣った。
何を隠そう、このpf1555は何かの圧力なのか、自社の方針なのかcer○zのゲームは、クレカやその他の決済方法以外ではダウンロード出来ないのだ。ディスクがあるのなら回避できるが、ディスクは先も言った通り撤廃されている。
シャキリくんは、爆乱をプレイする手段を失った。
彼は、クレカなど持っていないからだ。
そもそも、バイト経験すらあまりないのがシャキリくんである。
かろうじてあるのが、草むしりバイト。
時給二百円。週一日。三十分。
もう一度言うと、時給である。
だから、無給であった。
人間の体をもって、ちいか○程度の労働しかしないカスであった。
その、カスの労働さえも、社会の巧みですらないトラップにより、しゃぶられきっていた。
「そうだよ!きなくせぇんだよ!プレイフテーフンは、この学園都市発の会社の癖に、こいつらは本社を地球に移しやがったんだよな!しかも、決定ボタンを○から×に変えて!そもそも、この会社はゲーム業界への参入の仕方が、ビッグタイトル二つの略奪からなんだから、とんだクソ会社だぜ!
この、売国奴海外かぶれ会社が!」
おいやめろ。
やはりこいつは本編にも、このギャグにも出てきてはいけない。言ってはいけないことを平然と言うからである。
働けニート。
「あー!言っちゃいけないこと言ったなー!」
かす。
「ピンテンドー、ばんざーい!ピンテンドーばんざーい!」
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!!
「ひぃぃぃぃぃぃ!!!」
突然のインターホンハラスメントに晒され、シャキリくんは大絶叫した。
急いで部屋を飛び出し、インターホンの先をモニター越しに確認する。
なんと、近所ののファルゲン一家のお母さんと五歳児のファル君であった。
「はーい……」
シャキリくんは、おそるおそるモニターの先へ細々とした声を吹きかけた。
――「あっ、シャキリ君?今ギランミさんいるかな?」ー―
ファル君のお母さんは、抱き上げたファルをあやしながら、インターホンへ身を屈めていた。
「いないです。仕事で。」
シャキリくんは、久々にあまり関わりのない人と話すので、声が震えて、手足もガクブルである。
――「あのね、実はね。1日ぐらいこの子を預かって欲しいの。」――
「事件ですか。」
――「違うわ。事情を話すから、シャキリ君出てきてくれる?」ーー
『ガキの面倒なんて見ていられるか!断れ、私!』
シャキリくんが、もう一人の自分へ叱咤を始めようとした頃には、にちゃにちゃした作り笑顔で、ひっそりと扉を開いていた。
「シャキリくん。久しぶりねー。かくかくしかじかでね。かくしかくしかで。」
なんだかよくわからなかったが、地の文特有のご都合主義により、仕事で家を空けるとのことであった。
だからと言って、シャキリくんは自分達に預けるか普通。と内心で怪しく感じながら、こちらを興味深そうに見つめるファル君へ視線を移した。
ファルくんは五歳とのことだが、母親の胸にすっぽりと収まるおちびさである。
自分が五歳の頃は、周囲の五歳児も色々考えていたり、デカく見えたものだが、こう見ると五歳児はあかちゃんである。なんなら、小学三年生までは赤ちゃんである。
「姉ちゃんに電話して確認取ります。多分大丈夫ですよ。」
「ごめんねぇ。」
シャキリくんはスマホを取り出し、ファル君を見つめながら端末を耳に当てた。
ファルくんも、遠慮なしにシャキリをじっと見つめている。おチビ特有の、病院とかでお父さんかお母さんの肩越しに遠慮なく自分を見つめてくるアレである。
あのような時、おちびは何を考えているのだろうか。
「なんか、でけぇのいるぞ!」
「はなげでてる」
「なんか見てくるんだけど………」
「でっけ!」
とかだろうか。おちびは可愛い。
ギランミは最初は驚いていたが、シャキリが学校でいない時に何回か預かっているとのことで、快く承諾した。
ファル君ママさんも、ギランミにお礼が言いたがったので、スマホを渡し、シャキリがファル君を抱っこすることになった。
「もう、五歳なんだから自分で立ちなさいよー。」
「はぁ、ぷい。」
ママさんのお小言をぷいして、ファル君はシャキリへ両手を伸ばした。ハリウッド映画の終盤の、崖から崖へ手を伸ばすサバイバルものの主人公のような形相で。
「落とさないかな!?心配だ!」
ママさん曰く全然大丈夫とのこと。
すぐにおチビのホカホカ体温と、まだ残る赤ちゃんの甘いミルクの匂いをさせて、ほっぺが少し赤みがかったもちもちがシャキリの胸にしがみついた。
それを補助するようにお尻と背中にそれぞれの手を回すと、ファル君がモゾモゾと自分で動き、ベストポジションを確立した。シャキリという椅子で。
「ふぅ。」
ファル君は一仕事終えたようにため息をつき、シャキリの痩せ細った体でモゾモゾしている。
「なんか抱き心地悪いよぉ!」
ファル君は突然騒ぎ出し、シャキリの体でウネウネし始めた。
「あ、暴れないで……」
「ファル!!良い子にしないと鬼くるよ!」
「スン………」
ファルは鬼の「お」という文字を聞いた途端、大変おとなしくシャキリの体へ収まった。
そして、それ以降一切文句を言わず、シャキリの体をガッチリホールドしていた。
妥協ホールドであった。
ファル君ママさんも、電話を終えたらしく、ファルをもう一度橋渡ししようと手を伸ばすが、鬼が怖いファルは頑なにシャキリへ抱きついていた。
「ごめんねぇ。ご飯はパックに入れたもの持ってくるから。アレルギーはないんだけど。」
「姉ちゃんが作るらしいんで、大丈夫っすよ!」
シャキリくんは、胸に当たるもちもちほっぺを感じながら、スマホをポケットに入れてもらい、笑った。
急に快活になった理由は、冬の寒空の下に薄い長袖と半ズボンであるからだろう。
「じゃあよろしくねぇ。本当にありがとうございます。ご迷惑をおかけします。」
「今からなの!?」
シャキリが言う頃には、ファルママの姿はなかった。
一瞬の冷気を送る冬の風のように去っていた。
いや、いそいそとパックのご飯やら色々隣の家から運び出していた。
「ユアマニー、オア、ユアライフ!」
!!?!?!?!?!?
突如シャクティ家の敷地内、シャキリの左の目線の丁度限界点の視覚から、人型の猫が駆け寄り、外国語で声をかけてきた。
何を言ってるのかわからないかもしれないが、本当に人型の猫がシャキリへ声をかけたのだ。
ファルはシャキリの胸に抱きついて寝て、ママさんはぺこぺこして、必要な道具を置いて去っていた。
ただ、その長身の猫とシャキリだけの空間であった。
その猫、描写をするのなら、○をすませばと○の恩返しに出てきた、バロ○を百回ドブで洗い、さらに沼に50時間漬けて、小学生が掃除の時間に使うきったない雑巾バケツにぶち込んだような毛色と毛並みであった。
声は引退後の悪役レスラーのように潰れ、ただそれより高音であった。
「あっ………えっ……?」
「ユア、マニー、オア。ユア、ライフ!」
その猫は聞こえなかったのかというように、シャキリの肩を触り出した。肩を揺すると、ファル君は小さく唸り、シャキリへさらに抱きついた。
こんな場合でも、シャキリは胸がキュンキュンした。
「そ、ソーリー。あいどんとすぴーく、いんぶりっしゅ!」
シャキリはシャクティイングリッシュを始めた。
お前イギリス人だろ。
『これは、おそらく英語!英語はいけない、ブリティッシュイングリッシュは訛りを馬鹿にされるのが常だ!そう、ハリーケインのように!』
シャキリくんは、汗をダラダラ流しながら、その場をさろうとする。しかし、汚いバロ○は執拗にユアマニーを繰り返していた。
「おぅ!マイ、プープス!」
シャキリは屁をかまし、ママさんの用意したご飯と共に、家の扉を閉めた。
なんだったのだろう。
そして、シャキリくんはもう一度スヤスヤファル君へ目線を落とした。自分の胸に押し付けられたぷにぷに左ほっぺ。
温かい吐息。湯たんぽのような体温。
「子供が生まれるって、こんな感じかー!」
シャキリくんは、ちょっとウキウキしながら、リビングへ入って行った。
――次回、ギランミと共に子守編。




